緊急事態宣言下で献血に行くことをお勧めしたい

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新型コロナウィルス感染拡大防止のために緊急事態宣言が発令され、「不要不急の外出を自粛する」ことが求められていますが、何週間も STAY HOME を続けていろいろ溜まっておられる方も多いのではないかと思います。そのような皆さんにはぜひ、献血に行かれることをお勧めしたいと思います。



現在、緊急事態宣言の影響で外出する人が減ったため、献血に来られる方も大幅に減少し、血液が足りないそうです。出かけたついでに献血する人が減少しているのですから、これを補うためには、もう献血を目的として出かけるしかないでしょう。

しかも、下記リンク先のページに明記されているとおり、献血に行くのは「不要不急」ではありません。社会の要請に応えるための行為として、大手を振って堂々と外出できます。

 

日本赤十字社 関東甲信越ブロック血液センター
「緊急事態宣言下での献血協力のお礼と今後の献血のお願いについて」
https://www.bs.jrc.or.jp/ktks/bbc/2020/04/post-69.html

 

献血バスだとつまらないですが、献血ルームの中にはフリードリンクや漫画、雑誌などが充実しているところも多いので、そういうところを選んで行けば快適です。成分献血だと採血に一時間以上かかるので、自分の本を持っていってもいいと思います(自分はこれ)。

以下、この時期に献血に行く際に注意すべき点を私なりにまとめます。

1) できるだけ近くの献血ルームを選ぶ

不要不急でなく、社会の要請に応えるための行為とはいえ、行動や他人との接触は出来るだけ少なくすべきだと思いますので、できるだけ自宅から近い献血ルームを選ぶべきでしょう。

2) 予約してから行く

献血ルームの混雑を緩和し、献血ルームでの感染リスクを減らすために、予約してから行くことをお薦めします(成分献血は所要時間が長いこともあって、非常事態宣言発令前から予約が必要でした)。

3) 感染防止策を講じる

自分自身が献血ルームにウイルスを持ち込まないように注意すべきなのは当然です。日本赤十字社の Web サイトにも次のとおり記載があります。

日本赤十字社 東京都赤十字血液センター
「新型コロナウイルス感染症予防のためのお願い」
https://www.bs.jrc.or.jp/ktks/tokyo/2020/04/430.html

ちなみに私が行った献血ルームでは、入り口で非接触体温計による検温がありました。

私は今日献血してきましたが、公私ともに予定がいろいろキャンセルになったり、行動が制限されたりして、モチベーションが下がりがちな日々の中で、多少なりとも社会のために役立つことができたのを実感できます(効果には個人差があります)。

余談ですが、今回は初めて成分献血を経験しました。全血献血の場合、次回献血まで少なくとも 8 週間の間隔をあける必要がありますが(具体的には次回献血の種類による)、成分献血なら 2 週間後に再度献血できるので、緊急事態宣言が解除されるまでにもう一回行けますね (^_^) 。しばらくあまり忙しくならないと思うので、また行ってきたいと思います。



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読書メモ『結局、ウナギは食べていいのか問題』(海部健三)読了

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リアル本屋でタイトルだけ見て衝動買いした本です。

私は別にウナギに関して特に問題意識を持っていた訳ではありませんが、この本のタイトルを見た瞬間に「そういえばウナギが絶滅危惧種のリストに入ったって話は聞いたことがあるな」「その割にはスーパーとかで普通にウナギ売ってるし、店でも食えるよな」などと考えが巡って、そのまま買ってしまいました。タイトルの付け方って大事ですね。

『結局、ウナギは食べていいのか問題』海部健三 著、岩波書店 岩波科学ライブラリー 286(2019 年)

本書の「はじめに」の最初のページにいきなり書いてありますが、『結局、ウナギは食べていいのか問題』というタイトルの本なのに、結局我々はウナギを食べていいのかどうかという結論については、本書には書いてありません。本書は、ウナギを食べるかどうかは個々人が自分で決める話だという前提で、食べるかどうかを判断するために必要な知識や情報について広範な視点から書かれています。

詳しくは本書をお読みいただきたいと思いますが、本書のポイントはざっくり言うと次のような感じになるかと思います。

  • ウナギが絶滅危惧種のリストに入っているのは事実。現在の状況が続くと絶滅する可能性がある。この点については諸説あるが、絶滅する可能性がある以上、いまから手を打っていかないと手遅れになる。
  • 養殖されたウナギは、野生から捕獲されたシラスウナギを養殖池で育てられたものだが、そのシラスウナギの半分以上が違法に捕獲されている。違法捕獲によって絶滅の可能性が高まるだけでなく、実態の把握が困難になっている。
  • 違法なシラスウナギと合法なシラスウナギは流通や養殖の過程で混ざるため、販売店や飲食店、消費者が違法行為によるウナギを区別することは不可能。高価なウナギの中にも違法ウナギは混ざっている。
  • 全国で、良かれと思って行われているウナギの放流は、野生のウナギや生態系に悪影響を与える可能性が高いので、現状では行うべきではない(ただし、より良い放流のしかたはある)。

したがって、我々のような一般消費者が消費行動によってウナギの持続可能な利用に貢献する、もしくは違法ウナギの廃絶に貢献するような方法は、今のところなさそうです。しかしながら、このような知識や問題意識を持っておくことはそれなりに大事ではないかと思います。

本書でも紹介されていますが、イオン株式会社は 2018 年に「イオン ウナギ取り扱い方針」を定め、2023 年までに 100% トレースできるウナギ(つまり違法行為が関わっていないことが確認されたウナギ)の販売を目指すことを発表しています。

本件に関するイオン(株)のプレスリリースはこちら:https://www.aeon.info/news/2018_1/pdf/180618R_1.pdf

例えば、この取り組みに基づいて 2019 年からイオンで販売されている「静岡県浜名湖産うなぎ蒲焼き」は、浜名湖で合法的に捕獲されたシラスウナギを、他のシラスウナギと混ざらないように養殖したものだそうです。流通大手のイオンがこのような行動に取り組み始めたことで、他の流通各社や養殖業者がこの流れに追随する可能性があります。

このような商品が増えてきたときに、消費者がその意味を正しく理解して、それを選んで買うことが、持続可能なウナギの利用に貢献することになるでしょう。それまでに一般消費者の間でウナギ問題の普及啓発が進むことが大事ということです。

本を読むのは面倒という方でも、著者による「ウナギレポート」という Web サイトにアクセスしていただくと、本書の内容を大まかに知ることができます。

ウナギレポート
http://c-faculty.chuo-u.ac.jp/~kaifu/index.html

ちなみに著者の肩書きは「中央大学法学部准教授・中央大学研究開発機構ウナギ保全研究ユニット長」だそうです。中央大学に「ウナギ保全研究ユニット」という組織があることも驚きですが、持続可能なウナギの消費が法学部の範疇になっていることも意外でした。



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読書メモ『1秒もムダに生きない~時間の上手な使い方~』(岩田健太郎)読了

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仕事の関係で岩田先生の書籍を密林で買った時に、オススメされて衝動買いした本です。

著者の岩田健太郎先生は、新型コロナウイルスの感染者を乗せたクルーズ船に乗り込んでその内情を報告したことで、広く一般に知られるようになった先生です(少なくとも私はこの時まで岩田先生のことは存じ上げませんでした)。

『1秒もムダに生きない~時間の上手な使い方~』
岩田健太郎 著、光文社新書(2011 年)

タイトルにもあるように、本書は時間の使い方に関する本ですが、ビジネス本によくある「時間管理術」のような How to 本ではありません。

「第 1 章 時間を削り取る、時間を作る」では岩田先生が時間を有効に使うためにどのような工夫をしているか、どのような行動を実践しているか、また続く「第 2 章 時間を慈しむ」では、生み出した時間をどのように有意義に使っているのか、などが紹介されています。そして「第 3 章 私の時間は何ものか」では、そもそも時間とは何なのか、時間を有効に使うのは何のためなのか、というような観点で岩田先生の考えが述べられています。

岩田先生が実践されているような方法が他の人に合うかどうかは、かなり個人差があると思います。特に、仕事の内容や予定をあまり自分の裁量で変えられない人にとっては、実行するのが難しいものもあります。そのへんは自分に合いそうなものだけ使えばいいと思います。

第 3 章では、第 1 章に書かれているような工夫をして時間を捻出することに、そもそも意味があるのか?という、本書の大前提にかかわるような問いかけをされています。これは、もしかしたら医師として人の命に向き合う仕事だからこそたどり着いた境地かもしれません。また、執筆中に東日本大震災が発生して多くの方々が突如として命を奪われた、ということも恐らく影響しているでしょう。

私のような者がこの本を読んだだけで、このような考え方が 100% 腑に落ちたとは到底言えませんが、限りある人生における時間の意味や価値を、あらためて考えさせられました。そんな、普段あまり気にしていないことをあらためて考える機会をくれた、貴重な本でした。

 



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読書メモ『MMT〈現代貨幣理論〉とは何か 日本を救う反緊縮理論』(島倉原)読了

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うろ覚えですが、私が初めて MMT(現代貨幣理論)という理論の存在を知った記事(どこで読んだのかも覚えていません)には、多少不正確かもしれませんが次のようなことが書いてありました。

「銀行が顧客に 1 万円を融資する時に、1 万円の現金を用意する必要はなく、ただ顧客の預金通帳の残高を 1 万円増やせばよい。」

私にとってはとても衝撃的でしたが、でも確かに言われてみればその通りだ、とも思いました。この記事を目にして以来、いつかは MMT についてちゃんと勉強しなければと思っていましたが、ようやく経済の苦手な自分にも理解できそうな本を見つけました。

『MMT〈現代貨幣理論〉とは何か 日本を救う反緊縮理論』島倉原 著、角川新書(2019 年)

本書は次のような三部構成になっていて、MMT とは何かを理解するためには、とりあえず第一部だけ読めば十分だと思います。分量にして全体の 4 割くらいです。

  • 第一部 MMT の貨幣論
  • 第二部 MMT の政策論
  • 第三部 MMT から見た日本経済

私の場合は第一部を読み終わった時点で、「ああ MMT ってそういうものだったのか」という実感がありましたし、いろいろ誤解があったことも分かりました。

私にとって最大の誤解は「現代貨幣理論」という言葉の意味にありました。私はてっきり、昔と違ってお金の有り様が変わった(例えばクレジットカードとか電子マネー、QR コード決済、ビットコインなど)ので、そういう新しい取引形態に合った新しい理論が必要だ、という事かと思っていました。ところが MMT の根本は、(私の理解が間違っていなければ)紀元前から使われていた貨幣の目的や機能から考え直したことでした。

子供の頃に、「お金はなぜできたのか」というような本をどこかで読んだと思うのですが、こういう本で説明されていたのは、物々交換が不便だから、それに代わるものとして貨幣が誕生した、というような話だったと思います。全部うろ覚えです。

MMT はそこから否定します。古代メソポタミアでは「割り符」と呼ばれる債務証書が取引に使われており、これが貨幣としての役割を果たしていたことが分かっているそうです。そして、どうも物々交換よりも昔から割り符による商取引が行われていたらしいのです。

このような歴史的事実を踏まえて、MMT では貨幣の起源は「債務証書」だと考えています。これは私にとっては根本的な発想の大転換ですが、本書を読んでいくと納得できます。ここまで読んだ時点で既に目からウロコが落ちまくりです。

こんな調子で論理展開していくと、次のような考え方が導かれます。この記事では途中のプロセスを書かないので、これだけ読んでも理解不能だと思いますが、本書ではこれらを私でも納得できるように書いてあります。

  • 国民がその国の通貨を持ちたがるのは、その通貨で納税しなければならないからだ
  • 自国通貨を発行する政府は債務不履行にならないから、自国通貨建ての国債をいくら発行してもいい(ただしインフレになりすぎないようにするためには限度がある)
  • 全ての経済主体(家計、企業、政府など)が全て同時に黒字になるのは原理的に不可能だから、家計や企業が黒字を維持するためには政府の財政は赤字になるのが正常な状態

第二部以降は政策論であり、正直言って私にはついていけない部分が多いので、かなり読み飛ばしましたが、それでもいくつか納得できた話がいくつかありました。例えば税金について、MMT では税金の機能を次の 4 つだと考えています。

  • 通貨の購買力安定を促進する
  • 所得と富の分配を変える(累進所得税、相続税)
  • 悪い行動を防止する(酒税、タバコ税、環境税など)
  • 特定の公的プログラムのコストを受益者に割り当てる(ガソリン税、高速道路料金など)

そして、これらに当てはまらない消費税、法人税、社会保障税を全て「悪い税」と考えています。巷で MMT 論者の方々が消費税増税に反対されているのは、ここに理由があったのかと納得できます。

私自身は政策論には疎いので、本書に書かれているような MMT に基づく政策論が正しいのか(日本にとってプラスになるのか)は正直よく分かりません。しかしながら、現在日本経済でみられる現象が、MMT を使ったほうが合理的に説明できるという部分はかなり納得できました。

そういう訳で、第二部、第三部の内容は半分も理解できておりませんが、MMT に関してかなり理解した気分になることができたので、良い本だと思います。



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読書メモ『イージス・アショアを追う』(秋田魁新報取材班)読了

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この本は、秋田市にある陸上自衛隊の新屋演習場がイージス・アショアの配備場所候補となったことに関する、秋田魁新報社における取材プロセスが克明に記録されたものです。この問題が広く知られるようになったきっかけは、2019 年 6 月 5 日付の『適地調査、データずさん』というスクープ記事で、この記事を含む一連の報道は 2019 年の新聞協会賞を受賞しています。

秋田魁新報『イージス配備、適地調査データずさん 防衛省、代替地検討で』
https://www.sakigake.jp/news/article/20190605AK0001/

ここで「ずさん」とされたデータとは、新屋演習場がイージス・アショアの配備に適していることを説明するために防衛省が作成した調査報告書の中で、候補地と近傍の山との位置関係を示す図に初歩的なミス(恣意的な改変の疑いがある)が含まれていたというものです。この「ミス」が明らかになったことをきっかけとして、地元の反発が急激に高まり、その後の参院選では自民党現職候補が落選、本件に対する態度がはっきりしなかった県知事でさえ「全部最初から、一から、そもそも論から」検討をやり直さなければならないという趣旨の発言をせざるを得なくなりました。

『イージス・アショアを追う』秋田魁新報取材班 著、秋田魁新報社
https://amzn.to/2IdCEne

全部で 299 ページある本ですが、本文は 202 ページまでであり、残りは実際に掲載された記事の転載と関連年表となっているので、資料としての価値もあるように思います。

私自身もあのスクープ記事を読むまで、イージス・アショアの問題にはほとんど関心がなかったのですが、そんな私にとっても非常に分かりやすく書かれていると思いました。その理由は恐らく、取材班がどういう理由で何に着目し、何を疑っていたのか、などが丁寧に書かれていたからではないかと思います。

読み終わったところで特に印象に残ったのは、主に次の 2 つでした。

1. あのスクープが生まれるまでの地道な調査報道にこそ価値があった

私は、スクープというのは他の誰もが知らない情報を入手できたときに生まれるものだと思っていましたが、あのスクープの元になっている情報は既に公開されていたものです。したがって他紙などが先に気づく可能性もありました。しかし、秋田魁新報取材班はそれまで地道な調査報道を続けていたからこそ、この調査報告書が「宝の山」だと認識して丹念に読み込み、説明図の欠陥に気づくことができました。

スクープ記事の掲載に関する経緯が書かれているのは第 5 章(142 ページ目から)ですが、ここにたどり着くまでの間に、取材班がどのような問題意識を持っていたのか、地元でどのような動きがあったか、市民の方々がどのように感じていたか、などが丹念に綴られています。このような背景を知ることによって、あのスクープ記事のインパクトの大きさが改めて分かります。

2. 情報公開に関する日本とアメリカとの違い

政府は県や市に対して、イージス・アショアが日本を守るために必要だと説明していますが(そして今でもこの説明方針は変わっていないと思いますが)、取材班は新屋がイージス・アショアの配備候補地になっていることが判明して以来、早い時期からこの点に疑問を抱いていました。そして調査の結果、米国の政策に影響力をもつシンクタンクが、日本にイージス・アショアが導入されることが米国の安全保障に寄与するという趣旨のレポートを 2018 年 5 月に発表していることを見つけました。このレポートは当時から公開されており、下記リンク先で読めます。

CSIS: Shield of the Pacific: Japan as a Giant Aegis Destroyer
https://www.csis.org/analysis/shield-pacific-japan-giant-aegis-destroyer

導入する側の思惑と思われるものが既に公開されているにもかかわらず、それを認めない日本政府の姿勢と、このような政策提言がオープンに行われている米国との違いがとても対照的に描かれているように思えて、とても印象的でした。

 

これら以外にも、この報道が地元の新聞社だからこそできた部分や、地方紙であるがゆえに苦労した部分などが詳細に描かれており、面白くて思わず一気読みしてしまいました。

なお、この記事を書いている 2020 年 2 月の時点ではまだ配備計画に関する結論がでていないため、本件に関する取材活動もまだ続いています。本書の終わり方が物語のエピローグ的な終わり方になっておらず、まだまだ明日からも仕事が続くぞという感じで終わっているのは、そのような事情が関係しているのではないかと思います。しかしながら本書の最後に、かつて取材に応じてくれた地元の主婦との間のエピソードが置かれているのは、一連の取材活動が地元目線で展開されていることの証左であろうと思います。

本書を読んだ今、私の地元の新聞社も、このような調査報道を行う志やリソースがあるだろうか?と思わずにはいられません。

蛇足ですが、個人的には私の尊敬する柳田邦男先生へのインタビュー記事が載っていたのが、予想外の喜びでした。私が「調査報道」という言葉を初めて知ったのは 30 年以上前、高校生の時に柳田先生の著書を読んだときなので、「調査報道」という言葉を聞くと今でも柳田先生を連想します。そのような私にとっては別の意味でも価値のある本となりました。



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読書メモ『一流の人はなぜ風邪をひかないのか?』(裴英洙)読了

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実用書なので「読書」というのは違和感がありますが、役に立つ内容だったのでメモしておきます。

『一流の人はなぜ風邪をひかないのか? – MBA 医師が教える本当に正しい予防と対策33』
裴英洙 著、ダイヤモンド社

Amazon kindle で読めます。

今のところ風邪にはワクチンも治療法もないのは周知の事実ですが、それでも風邪をひきたくない、もしくはできるだけ悪化させたくない、早く治したい人に役立つ実践的ノウハウが多数説明されています。

これに書かれていることを全部実践するのは、個人的にはかなり難しいと感じますが、仕事上の重要なイベントや演奏会の本番などが迫っている、もしくは出産が近いなどの理由で特に風邪をひきたくない時期に、これに書かれていることを出来る範囲で実践すると、かなり効果があるのではないかと思います。

また、風邪に関する基本的な(しかも一般の方々があまり知らない、もしくは誤解されている)知識も詳しく書かれているので、このようなこと予め知っておくと、風邪の予防や早期対処に有効だと思います。

さほどボリュームがない本なので、とりあえず一通り流し読みしてザックリどんなことが書いてあるかを掴んでおくだけでも、いざという時に役立つかも知れません。

 

 



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フォント関係の参考記事(随時更新)

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以下、単なる備忘録です。

『フォント選びに迷ったら見返したい、おすすめ定番フォント31選まとめ (欧文編)』
https://note.com/yoshigorou/n/nf722df5caa46

『【厳選】UIに使える欧文書体まとめ』
https://note.com/_tetchann/n/n0d65872669be

『2020年用、日本語のフリーフォント418種類のまとめ -商用サイトだけでなく紙や同人誌などの利用も明記』
https://coliss.com/articles/freebies/japanese-free-fonts.html

 

こういう記事を書いてくださる方々は本当にありがたいです。



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8 万円くらいあれば社長になれる

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私はもともと個人事業主として仕事をしていましたが、ちょっとした事情から法人化することにしました。しかしながら仕事の内容は全く変わらず、従業員を雇う予定もなく、ただ形式を「個人」から「会社」にしたかっただけなので、できるだけお金と時間をかけずに「会社」という形にする方法を調べて実行しました。

せっかくそんな経験をしたので、自分がどのように会社を作ったかを簡単にまとめておきたいと思います。もしかしたら今後同じようなことを考える人にとって何らかの参考になるかも知れませんので。



【前提条件】

  1. 会社の種類はいろいろありますが、私は「合同会社」を選びましたので、以下の内容は「合同会社」を設立する場合の話です。「株式会社」など他の種類を選んだ場合は手続きや金額が若干変わります。
  2. 以下の内容は「会社」という形にするために必要な手続きと費用に絞って書いてあります。実際にゼロから創業する際には、事務所や銀行口座、インターネットのアカウントや Web サイト、パソコン、スマフォなど諸々用意する必要がありますが、私の場合は既に個人事業主として事業を始めていたため、これらは全て揃っていましたので、今回の記事では触れません。
  3. 自分自身を会社の役員として登記するために、自分自身の実印が登録されている必要があります。もし実印の登録が済んでいない場合は、先に現住所の市町村の役所で印鑑登録を済ませる必要があります。
  4. 私自身は行政書士や税理士、社労士などの資格を持っていませんし、このような分野の専門知識や実務経験はありません。

では本題に入ります。

1. 会社の種類と会社名を決める

私の場合、いつかは法人化しようと思っていたので、会社の種類や会社名は既に考えてありました。したがってこれにかかった時間はゼロです。
ちなみに会社の種類を決めるための参考情報は、ちょっとググればいくらでも見つかりますので、ここでは触れません。

2. 会社の実印を作る

会社を登記する際に印鑑(実印)を届け出る必要がありますので、実印として使える印鑑を作る必要があります。私は「ハンコヤドットコム」(https://www.hankoya.com/)で注文しました。
こちらのサイトで、実印として使える印鑑で最も安いのは、薩摩本柘製で直径 13.5mm のもので、3,370 円で買えます。12 月 26 日に Web から注文し、30 日に届きました。
(なおハンコヤドットコムでは「実印・角印・銀行印」の 3 点セットを勧められますが、会社設立に必須なのは実印だけです。)

3. 会社設立に必要な書類のドラフトを作る

これについては「会社設立 freee」(https://www.freee.co.jp/launch/)というサービスを利用しました。これはクラウド会計システム「freee」の関連サービスで、基本機能は無料で利用できます。

このサイトで新規登録を行って必要事項を入力すると、定款や登記申請用書類などが自動で作成され、PDF で出力されます。入力する内容は概ね次のような内容だったと思います。

  • 会社名(商号)
  • 会社の所在地
  • 代表者の氏名と住所
  • 自分のメールアドレス
  • 自分の会社の Web サイトの URL(会社の電子公告を行う方法を示すために必要)
  • 事業内容
  • 資本金の金額
  • 定款の作成日付(私は入力した日の日付にしました)

これらのうち「事業内容」については、既に個人事業主として開業する際に税務署に提出した「開業届」に記述した内容を、ちょっと手直しすれば済んだので簡単でした。

なおサイトで必要事項を登録する際に、定款を紙で作るか「電子定款」にするかどうかを選択する必要があります。電子定款にしておいた方が後々便利ですし、紙の定款を作るためには印紙代が 4 万円かかるというデメリットもあるので、よほどの理由がない限り電子定款にすることをおすすめします。

このへんをネットで調べながら入力しても、おそらく 1 時間以内に入力完了しました。

4. 行政書士に手数料を支払う

前項で入力した内容は、「会社設立 freee」が契約している行政書士に転送され、定款が作成されますが、ここで行政書士に手数料として 5,000 円を支払う必要があります。指定された銀行口座に 5,000 円を振り込み、入金が確認されると作業に着手されます。

入力内容に特に問題がなければ、行政書士によって作成された電子定款が PDF ファイルで届きます。

5. 資本金を払い込む

登記申請の際には資本金が払い込まれたことを法務局に知らせる必要があります。

しかしながらまだ会社設立前ですので、会社名義の銀行口座はありません。そこで代表者(自分)の名義の銀行口座に、資本金として申請書類に記載する予定の金額を入金し、その入金が記録された通帳のコピーをとります(実際には通帳の表紙などのコピーも必要)。

この作業を行うためには資本金額に相当する現金が必要ですが、外部に支払うわけではなく自分自身の財布と口座との間を移動させるだけなので、設立コストには含めないことにします。

6. 登記申請書類一式を用意する

電子定款は PDF ファイルの中に電子署名が含まれているので、ファイルを電子データで法務局に提出するために CD-R にコピーします(USB メモリなどでは不可)。

前述 3. で「会社設立 freee」のサイトに必要事項を入力すれば、登記申請に必要な書類は自動的に PDF ファイルで作成されるので、これをダウンロードして印刷し、所定の位置に個人や会社の実印を捺印します。
また登記申請書類の添付書類として、次の書類を用意します。

  • 個人の実印に関する印鑑証明
  • 上記 5. で入金した通帳のコピー

7. 登記申請書類一式を法務局に提出する

前述 6. で用意した書類一式を法務局に提出します。ここで登録免許税として 6 万円を払う必要があるため、窓口に行く前に 6 万円分の収入印紙を購入し、これを書類一式とともに窓口に提出します。書類を提出すると手続完了予定日のスタンプが押された控えを渡されるので、持って帰ります。

8. 印鑑カード、印鑑証明書、登記簿謄本の交付を受ける

前述 7. で受け取った控えに記載された手続完了予定日以降に法務局に行って、新たに登記された会社の印鑑カードを発行してもらい、登記簿謄本や印鑑証明書を交付してもらいます。
(このときに必要な書類も「会社設立 freee」で自動的に作成されます。)

印鑑証明書と登記簿謄本はこの先の手続きで必要になるので、それぞれ数部ずつ交付してもらう必要があります。ちなみに本稿で説明している、全ての会社に必要な手続きだけでも登記簿謄本が 4 部必要になりますし、会社として銀行口座を作るためにも登記簿謄本や印鑑証明書が必要になりますので、それらを見越して必要数を交付してもらう必要があります。

なお登記簿謄本の交付には 1 部あたり 600 円の手数料がかかります。

一応ここまでで会社が設立できたことになりますが、この会社で事業活動を行うためには、税務署および年金事務所への届け出も必要ですので、この後の届け出についても記載します。

なお、正式な会社設立日は、前述 7. で法務局に書類を提出した日となりますが、以下の手続きを進めるためには登記簿謄本などが必要になるため、前述 8. まで進まないとこの先の手続きはできません。

9. 税務署に法人設立届出書などを出す

所轄の税務署に次の書類を提出します。

  • 法人設立届出書
  • 法人税の青色申告の承認申請書
  • 給与支払事務所等の開設届出書
  • 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

なお、法人設立届出書を提出する際には登記簿謄本、定款の写し、設立時の貸借対照表、株主名簿の写しが必要になります。

また、「法人設立届出書」と「法人税の青色申告の承認申請書」については、会社の銀行口座を作る時にこれらの控えを要求される場合があるので、税務署のスタンプが押された控えをもらっておく必要があります。実際には書類を提出する前にコピーをとっておき、窓口で書類を提出する際にコピーの方にもスタンプを押してもらう、という手順でした。

10. 各都道府県の税務事務所と市区町村役場にも法人設立届を提出する

前述 9. は国税に関する届け出なので、都道府県と市町村にも同様の届け出を行います(東京 23 区内の場合は都税事務所に提出すれば区への提出は不要)。このときにも添付書類として登記簿謄本と定款の写しが必要になります。

11. 年金事務所に新規適用届を提出する

全ての会社は社会保険に加入しなければならないため、所轄の年金事務所に新規適用届を提出します。この時に添付書類として登記簿謄本が必要になります。

 

結論

恐らく全ての会社に必要な手続きは以上かと思います。なお本稿では触れませんが、もし従業員を雇用する場合は、さらに必要な手続きがありますのでご注意ください。

ここまでで必要となる費用は次のとおりです。

  • 実印作成: 3,370 円(+ 送料)
  • 定款作成手数料: 5,000 円(+ 振込手数料)
  • 登録免許税: 60,000 円
  • 登記簿謄本交付手数料(少なくとも 4 部必要): 600 円 x 4 = 2,400 円

以上を合計すると 70,770 円となります。

実際にはこれに加えて若干のコピー代や交通費、送料、振込手数料、CD-R メディア代などがかかりますが、それらを加えても 8 万円は超えないでしょう

期間については概ね次のとおりです(電子定款の作成には本来もう少し時間がかかるようですが、今回はたまたま早くできたようです)。

  • 12 月 26 日(木): 作業開始、実印発注、「会社設立 freee」に入力開始
  • 12 月 27 日(金): 電子定款作成完了
  • 12 月 30 日(月): 実印到着
  • (12 月 31 日〜 1 月 5 日は年末年始のため役所関係休業)
  • 1 月 6 日(月): 法務局に書類一式提出
  • 1 月 17 日(金): 法務局にて登記手続き完了
  • 1 月 23 日(木): 税務署、都税事務所、年金事務所に書類提出完了

間に年末年始を挟んだためにロスが発生したのと、1 月 20 〜 22 日に他の予定があって税務署などに行けなかったことを差し引くと、概ね 3 週間程度ということになるかと思います。

そういう訳で、ごくごく大雑把な結論としては、8 万円くらいあれば 3 週間程度で会社を設立できることが分かりました。

(もちろん、本当に大変なのは会社を作った後なのは重々承知しています。)



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読書メモ『多井熱』(多井隆晴)読了

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最近、無駄なんじゃないかとも思えるくらい自分の専門分野から遠い世界の本も、たまには読むようにしています。

今回読んだ本はプロ雀士(麻雀プロ)が書いた本ですが、得るものが多かったのでメモしておきます。

『多井熱』(近代麻雀戦術シリーズ)
多井 隆晴 著、竹書房

タイトルは「おおいねつ」と読みます。Amazon kindle で読めます。

著者はプロ雀士として活躍する傍ら、「RMU」(http://www.rmu.jp/)というプロ雀士の団体の代表者を務めておられます。もともとは「日本プロ麻雀連盟」(http://www.ma-jan.or.jp/)の理事だったそうなのですが、事情により別団体として RMU を設立されたとの事で、単に麻雀が強いだけでなく、麻雀業界やプロとしてのあり方などに対して問題意識を強く持ち、かつ発言もされている方です。

この本は「近代麻雀戦術シリーズ」として刊行されていますが、あまり麻雀の戦術とかテクニックの話は書かれておらず、どちらかというとこれからプロ雀士を目指す方々や同業者に対するメッセージが詰め込まれた本で、これからの麻雀業界に対する問題提起や、プロ雀士としての気構え、心がけ、覚悟が綴られています。
(ちなみに「近代麻雀」とは竹書房の麻雀マンガ雑誌です。)

私自身は麻雀をやらない(満貫未満の点数計算ができないので雀荘にも行けない)のですが、プロ雀士としてこうあるべき、という部分は麻雀以外の分野にも通じるところがあるな、と思いながら読み進めました。簡単な例を挙げれば、技術やノウハウだけではなく「見られることを意識しろ」というのは、営業やコンサルタント、講演などにも共通ですし、「課金してもらえる人間になれ」というのも職業を問わず(たとえ会社に勤めていても)求められる考え方なのではないかと思います。

また、著者自身が RMU の代表でありながら、これからは「組織よりも個人の時代」だと説いている部分にも共感しましたし(自分が会社を辞めた身なので当たり前ですが)、「ごまかしの利かない時代になっている」ので技術やノウハウが足りないのがすぐバレて次の仕事が来なくなるというのも、プロの世界ではどの業界でも例外なく当てはまるでしょう。

ちなみにこの本全体を通して私が最も好きなフレーズはこちら。

「後悔しない決断ができた時点で成功しても失敗しても勝ちなんですよ。」

単に雀士だから勝負師だということではなく、様々な経験や苦労、決断をされてきたからこそ言えることだと思います。



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劇団 DULL-COLORED POP の「マクベス」で新たな演劇の楽しみ方を知った

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今日が最終日となった DULL-COLORED POP (以下「ダルカラ」と略記)の演劇『マクベス』を、12 月 12 日(初日)、18 日(6 日目)、22 日(最終日)の 3 回にわたって鑑賞しました。同劇団の作品を鑑賞するのは「あつまれ!『くろねこちゃんとベージュねこちゃん』まつり」「福島 3 部作・一挙上演」に続いて 3 回目となりましたが、今回はシェイクスピアの古典だったこともあり、私にとって全く新しい演劇体験となりました。

この時期にダルカラが『マクベス』を上演することは、「福島 3 部作・一挙上演」の上演時に配布されたチラシで既に知っていたので、スケジュールは空けてあったのですが、どのような舞台になるかは講演数日前に発表されたビジュアル以外なかったので、とりあえずシェイクスピアの原作を予習して初日に臨みました。

予習にあたって参考にしたのは次の 2 つで、いずれも Amazon Kindle で読めます。
(しかも安西徹雄訳は kindle unlimited で無料 \(^_^)/ )

初日数日前にダルカラの Web サイトをあらためて見ると、今回の台本が松岡和子氏の翻訳に基づいていることが分かったので、こちらも Amazon で購入したが、こちらは kindle になっておらず紙の本で、手元に届いたのが初日当日だったので、これを読むのは間に合わず初日を鑑賞しました。

まず舞台や衣装、音楽などが現代であることに驚きました。マクベスやバンクォーはネクタイしてるし、マクベス夫人は Taylor Swift か何か聴きながらバスタブに浸かって、マクベスからの手紙を iPad で読んでます。原作では伝令から伝えられる情報は iPhone。マクベスが王位についたことをバンクォーは新聞で知ります。

しかし台詞は松岡和子訳『マクベス』のままです。これは後から松岡訳の本を読んで分かりました。90 分に収めるためにあちこち大幅にカットしたり、台詞の順序が入れ替わっていたり、台詞の割り当てを別の人に替えるなどの再構成は行われていますが、台詞の内容はおそらくほとんど変わっていないと思います。400 年以上前に書かれ、初演された劇が、現代社会を舞台にしても成立することに驚きました。演出や俳優の皆さんの演技の賜物だと思いますが、原作で描かれている人間の弱さとか、闇に怯える者の苦悩、権力を手にして変貌する者の恐ろしさなどを、これでもかと見せつけられる印象的な舞台でした。

そして恐らく、今回の公演の妙味のひとつは、たった 6 人で『マクベス』を演じるというキャスティングだったと思います。

演劇にさほど詳しくなく、直前に原作を読んだだけの私でさえ、初日の劇場で配布されたキャスティングを見て、これがいかに大変か容易に想像できました。しかも百花亜希さんに至ってはマクダフ一家を全部ひとりで演じるとか。このキャスティングを見たときには、『福島三部作』で見たようなドタバタ(明らかに着替えが間に合わないことで笑いを誘う)があるのかと思いましたが、『マクベス』においてはそのような笑いはなく、他の方々も含めて見事な早着替えと演技の切り替えでこなしておられました(他の部分での笑いはいろいろありました)。見事としか言いようがありません。

さらに、Web サイト上でも「大胆不敵な翻案上演」と書かれているとおり衝撃的なラストシーンがあり、現政権に対する皮肉も加わって、今しかできないマクベス、シェイクスピアには決して書けないマクベスになっていました。そういう意味でも、演劇の面白さや可能性を示す舞台だったように思います。

このラストシーンについては演出の谷賢一さんが tweet されていますので引用します。

 

また私にとって貴重な体験となったのは、3 回の観劇の間に松岡和子訳『マクベス』を読むことで、より劇に対する理解が深まったことでした。松岡氏による翻訳は 1996 年に松本幸四郎の主演で上演されるために行われたようですが、その際に松岡氏が原文をどのように解釈したか、脚注や訳者あとがきで詳しく説明されています。

特に松岡氏は、マクベスと夫人との距離感がどのように変わったかという部分を丁寧に説明してくださっており、そういう文脈を理解した上で改めて鑑賞した 2 回目では、マクベス夫妻の距離感の変化や、その過程におけるマクベスの態度の変化などが、見事に表現されていることに気付いて感動しました。これは、松岡氏の翻訳を読んでダルカラの舞台を観るという両方があって初めて味わえた感動だったと思います。

演劇に詳しい方々にとっては当たり前なのかもしれませんし、古典ならではなのかもしれませんが、演劇にこういう楽しみ方があるということを知ったのは、とても大きな収穫でした。このような機会を与えてくれた松岡和子氏とダルカラの皆さんには本当に感謝しています。これからも、いろいろな公演に足を伸ばして、多様な演劇を楽しんでいきたいと思います。



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組曲「展覧会の絵」プログラムノート

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自分が所属しているオーケストラの演奏会でムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」を演奏したときに、この曲のプログラムノートを書かせていただけることになりました。

演奏会は既に無事終了しましたが、原稿が自分のハードディスクの中に眠っているだけなのもどうかと思いますし、もしかしたら何かの間違いで誰かの役に立つこともあるかもしれないので、ここに載せておくことにしました。




皆様に本日お聴きいただく組曲『展覧会の絵』の楽譜が世に出るまでには、作曲者のムソルグスキーをはじめとして、建築家であり画家であったガルトマン、芸術評論家のスターソフ、作曲家のリムスキー・コルサコフとラヴェル、そして指揮者のクーセヴィツキーという 6 人が関与している。もし彼らのうち一人でも欠けていたら、この曲が現代のオーケストラで演奏されることはなかったであろう。

ムソルグスキーは 1870 年ごろにガルトマンと出会い、親交を深めてゆくが、ガルトマンは 1873 年に動脈瘤破裂のため急死してしまう。スターソフはガルトマンが遺した作品を集めて、1874 年 2 月にペテルブルクの芸術アカデミーにてガルトマンの遺作展を開催するが、そこに訪れたムソルグスキーが、かつての盟友ガルトマンの作品を見たときの印象をもとに、ピアノ曲として同年 6 月から 7 月までの間に一気に書き上げたのが、組曲『展覧会の絵』である。自筆譜には「ヴィクトル・ガルトマンとの思い出に」と書かれており、作品はスターソフに献呈されている。

この楽譜はムソルグスキーの生前に世に出ることはなかったが、彼の死後に遺稿の整理にあたったリムスキー・コルサコフがこれを発見し、彼自身が若干の校訂や変更を加えたものが 1886 年に出版された。ところが、この曲が世界各国で広く演奏されるようになったのは、1922 年にラヴェルがオーケストラ用に編曲した後である。この編曲をラヴェルに委嘱したのは、当時パリを拠点として活動していたロシア出身の指揮者クーセヴィツキーであった。

ラヴェルが編曲に着手した当時出版されていたピアノ譜には、リムスキー・コルサコフの手が入っていたため、ムソルグスキーによる自筆譜を入手しようと試みたが実現しなかった。したがって彼はリムスキー・コルサコフ版をもとに編曲せざるを得なかった(ちなみに自筆譜による原典版は 1932 年に出版されている)。その結果としてラヴェル編曲のオーケストラ版には、リムスキー・コルサコフによる校訂や変更の影響が含まれている。

このような経緯を経て成立した曲であるため、リムスキー・コルサコフおよびラヴェルの手によって、原曲になかった表情や色彩が加えられた面があることは否めないが、それでもこの曲がガルトマンに対するムソルグスキーのオマージュであることに変わりはない。

遺作展には約 400 点もの作品が展示されたとの事であるから、訪れたムソルグスキーも多くのインスピレーションを得たと思われ、これを受けて作曲された本作品にも多彩なキャラクターが詰め込まれている。しかしながら組曲全体を通して最も重要なテーマは「死」であろう。作曲のきっかけがガルトマンの死とその遺作展であったからか、組曲のあちこちに「死」を連想させる要素が散見される。

例えば 2 曲目の「古城」におけるアルト・サキソフォンのソロには「con dolore」(悲しみをもって)と指定されているし、4 曲目の「ビドロ」冒頭の伴奏部分はショパンのピアノソナタ第 2 番の第 3 楽章「葬送行進曲」に酷似している。8 曲目の「カタコンブ」の題材となった絵は、ガルトマンがパリにあるカタコンブ(古代ローマ時代の地下墓地)を見学している様子を描いた自画像であるから、最も「死」に直結した曲と言えよう。これに続いてオーボエとコーラングレがプロムナードに基づく悲しげな旋律を奏でる箇所から約 2 分間の部分には、「死者の言葉による死者との対話」という意味のラテン語のタイトルが付けられている。恐らく「カタコンブ」の絵に描かれたガルトマンの姿を見たムソルグスキーが、故人に思いを馳せている場面の描写であろう。木管楽器を中心に思いを巡らせながら、最後はまるでハープに導かれて昇天していくかのようである。

しかしながら終曲となる「キエフの大門」は、盟友の死による悲しみを乗り越え、故人を偲ぶというよりはその偉大さを称えるような、スケールの大きい荘厳な曲となっている。9 曲目の「鶏の足の上の小屋(バーバ・ヤガー)」から続けて演奏され、管楽器とティンパニによる雄大な響きで始まる。途中で木管楽器の弱奏による、ロシア正教会の聖歌を思わせるフレーズを 2 回はさんで、さらにプロムナードの旋律を重ねながら、鐘やシンバルなどの打楽器を伴って壮麗に幕を閉じる。

(参考資料)



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