音楽家向けの鍼治療を再び受けている話

以前に音楽家向けの鍼治療を受けた話と、それが結果的にはうまくいかなかった話を書きましたが、紆余曲折の末、結局また鍼治療を受け始めました。ただし以前にお世話になった先生とは別のところです。

最初に鍼治療を受け始めたとき、音楽家向けの鍼治療をしているところが 2 ヶ所見つかり、自宅からのアクセスの良さから品川の方にお世話になりました。その後あまり効果が無さそうということになって治療は中断したのですが、個人練習していても頬の震えが収まらず、この状態で練習を続けても意味がないような感じがしてきたので、ダメ元でもうひとつの方(練馬)に行ってみることにしました。

(現実問題として、タンギングがほとんでできなくなっていて、合奏でもほとんどまともに吹けない状態だったので、これ以上悪くはならないだろうという思いもありました。)

行ってみて驚いたのは、品川の先生と練馬の先生とで手法が全く異なることです。

品川の先生の場合、首から上に針を刺したことは一度もなく、一見全く関係無さそうな場所に針を打つのに、頬の震えや呼吸などに大きな変化が現れました。

これに対して練馬の先生の場合、耳の下や喉など、演奏に使う筋肉を直接刺激するような場所に針を打ち、しかも針に電極をつないで電気を数分間流します。手首や足首、背中などにも針を打ったり、お灸も使います。品川の先生の時と比べて即効性は少ないように感じますが、先生と相談しながら考えている治療方針に沿って、少しずつ結果が出てきているように思います。

念のために申し添えますが、どちらが良いとか悪いとかという話ではなく、どちらが今の自分の症状に合ってるかという話なのだろうと思います。

もうひとつの大きな違いは、品川の先生からは「ジストニア」という言葉を(たぶん)聞かなかったのに対して、練馬の先生は最初に状況を見たときから、これはジストニアだと明言されていたことです。

9 月下旬から概ね週一ペースで 7 回施術してもらっています。頬の震えに関しては、第三倍音の D くらいまでは概ね収まってきましたが、これより上の音域になると震えが目立つようになります。

またタンギングに関しては、特に短い音を吹こうとする時に、タンギングをすると息の流れが止まってしまうようで、ほとんど音になりません。先生の観察によると舌に余分な力が入りすぎているとのことで、舌のストレッチを取り入れつつ、比較的無理のない音域(第三倍音の F より下)で譜例 (1) のように四分音符を 60 BPM くらいで吹いてみて、様子を見ながら譜例 (2)、(3) というように少しずつ短くしていくというような練習をしています。

譜例 (1)

譜例 (2)

譜例 (3)

第二倍音あたりでは譜例 (3) のような吹き方ができますが、全体的に音量やイントネーションが安定しないので、安定的にできるようになってから、徐々に音域を広げていこうと思っています。

 

これと並行して、以前からお世話になっている Trombone の先生のレッスンも受けていて、ほぼ週一回くらいのペースで、奏法や音色をチェックしていただいています。いろいろ試行錯誤しながら何となく分かってきたのは、フリーバズ(楽器もマウスピースも使わずにバズィングすること)のときの力の入れ方(力を入れる方向や力加減)がちょうどいいんじゃないかということです(ただしフリーバズと楽器を吹く時とでは唇の振動する場所は違う)。フリーバズをやってる状態で楽器を当てると比較的いい音がするし、頬の震えも少ないことが多いので、フリーバズと楽器とを交互に繰り返すという練習も取り入れています。これも今は第三倍音より下だけで練習していて、様子を見ながら音域を上げていこうと思っています。

このような方法が良いのかどうかは正直よく分かりませんが、今のところは少しでも可能性を感じる方法をしばらく続けてみるしかないかなと。

 

品川の先生と違って、少ない施術回数での効果を期待するという感じでは無さそうなので、しばらく時間はかかると思いますし、先週の本番にも全く間に合わず、ほとんど何もできないまま本番を終えてしまいましたが、これからしばらく本番がないので、ある程度時間をかけるつもりで地道に治していこうと思います。

しかし、まあ何とも金のかかる体になってしまったものです。




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ウォームアップ・基礎練習用伴奏音声ファイル

どのくらい需要があるか分かりませんが、最近自分で個人練習に使っている音声ファイルとその元ファイルを晒します。

iPhone でチューナーアプリで基準音を鳴らしながらメトロノームアプリを使うのが面倒だったので、基準音とテンポを一緒に流す音声ファイルを作りました。

MuseScore4 で作った元ファイルと、そこからエクスポートした MP3 と MIDI ファイルがあります。

特に著作権がナニとか言いませんので、自己責任でご自由にお使いください。MuseScore4 とか MIDI を編集できるソフトをお持ちの方は、音色や音の長さなど、自分の好みに合わせて編集していただければと思います。

なお MP3 ファイルのピッチは A = 442 Hz です。MuseScore4 にはピッチを設定する機能がないようですが、再生するときにチューナーで確認したらそうなってました。

a) 半音階下降形

Bb から全音符で半音ずつ下降していくパターン。基準音のオクターブユニゾンの間に 4 度下の音 を鳴らしています。再生ボタンを押してから音を聴きながら楽器を構える時間をつくるために 8 拍のイントロを入れています。また、下降時に次の音を聴きながら準備するための繋ぎを 4 拍入れています。

 

b) Bb 全音符

ひたすら Bb のロングトーン 8 拍を繰り返すものです。Bb のオクターブユニゾンの間に F を鳴らしています。

 

c) F 全音符

上と同じ内容で 4 度下げたものです。

 




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音楽家向けの鍼治療を受けてみたけどやめた後の練習方法

以前に音楽家向けの鍼治療を受けた話を書きましたが、結果的にはうまくいきませんでした。

先生によると、現在のように吹き方に癖がついている状況だと、一時的に頬まわりの震えを抑えられても、すぐ再発する可能性が高いとのことで、現状では鍼による改善は見込めないのではないかとの事でした。そこで当面は奏法の修正(というかリハビリ)に専念することにしました。

今は、数年前にも Trombone の奏法改善でお世話になった先生に、概ね週に一度レッスンを受けており、現在の奏法や音色をチェックしてもらいながら、練習方法について助言をいただいていますが、何度かの試行錯誤を経て、いま取り組んでいるのは、図 1 のように、リップスラーでオクターブ上に上がり、上がった音を改めて吹き直すという練習です。

図 1

まず最初の Bb の立ち上がりが明瞭で、楽器がしっかり鳴っているかを確認します(これがうまくいかなかったら、リップスラーに移らずにやり直します)。

次に、リップスラーで上がるときに、アパチュアが図 2 のようなイメージで、正しい形のまま小さめにできたかどうか、息の圧力を同じタイミングで高められたかどうか、結果として良い音で正しい音程に上がれたかどうかを確認します(これがうまくいかなかったら、再び下の Bb からやり直します)。

図 2

これができたら、間を一瞬あけて上の Bb を吹き直し、同じ音が再び出るか、音の立ち上がりが明瞭になるかを確認します。これは今のところタンギング無しの方がうまくいきますが、ゆくゆくはタンギングしてもうまくできるように練習するつもりです。

このようなシンプルな音形の練習ですが、これがなかなか安定しなくて困っています。

最初の Bb に関しては、音が出ないということは無いのですが、良いアンブシュアになっているかどうかが分かりにくいと思います。リップスラーで上がった後で最初のアンブシュアが良くなかったと感じることもあります。

リップスラーで上がったときのアパチュアが図 2 のようにならず、図 3 のようになってしまうことがあります。原因はよく分かりませんが、どうも最初の Bb のときのアンブシュアが良くないと、余計なところに力が入ってしまって、上がったときにアンブシュアが崩れるような気がしています。

図 3

「リップスラー」とは言うものの、実際には唇よりも主に息や舌でコントロールするものだと思っているので、次の四つを同時に行うことを意識しながら練習しています。

  • アンブシュアのフォームを変えずにアパチュアを少し小さくする
  • 舌の真ん中あたりを僅かに上げる
  • 息の圧力をしっかり適度に上げる
  • 息の圧力に負けない程度に唇の周りに力を入れて、アンブシュアが崩れないようにする

かつてはこんな事をいちいち考えなくてもできたのに、今はこれらのうち一つでも忘れると音が外れたり、音色や音程が明らかにおかしくなります。

自分のアンブシュアがどうなっているか自分では見えませんし、測れるものでもないため、感覚を取り戻すまでこういう練習を繰り返して、うまくいかなかったらやり直し、うまくいったときの感じを掴んでいく必要があるだろうと思います。地道な作業です。

(2023/8/1 追記)

  • 今日のレッスンでいろいろ検討した結果、まず音色と、音が揺れないようにすることを重視し、タンギングや音の立ち上がりに関しては当面考えないことにするという方針にしました。また口に変な力が入るのは、息の量や圧力が足りない分を口で何とかカバーしようとしてしまっている可能性が高いため、上のようなアパチュアとかは意識せずに、息の流れに集中して練習することにしました。

(2023/8/2 追記)

  • 前日のレッスンで、ブレスの時にマウスピースを唇から離すように言われたの絵、個人練習でいろいろ試してみたところ、ブレスするときに上唇をマウスピースから離すようにしたら、比較的安定するようになった感じがします。上唇をマウスピースから離している間は、楽器を下顎で支えています。この方が、吹き始めた後も上唇が自由に動きやすいように感じます。



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曲目解説を ChatGPT に書いてもらった

先日、所属しているオーケストラの定期演奏会があったのですが、演奏会で配布されるプログラムのなかで、ホルストの組曲『惑星』の曲目解説を私が担当することになりました。当楽団のプログラムで曲目解説を書かせていただくのは、2019 年に演奏した「展覧会の絵」以来、2 回目となります。

演奏するのは「火星」と「木星」だけなので、これら 2 曲の解説を、1,300 文字程度で書くことになったので、試しに ChatGPT に投げてみました。

まずは無料版の GPT-3.5 で、依頼したときの文章はこちら。

アマチュアオーケストラの演奏会で、G. Holst の組曲『惑星』から「火星」と「木星」を演奏するので、演奏会のプログラムに掲載する解説文を、1300文字程度の日本語で、「だ・である体」で作っていただけますか?

これに対して出力された回答は次のとおりです。

はい、かしこまりました。「だ・である体」での解説文を以下に作成いたします。

G. Holstの「惑星」は、20世紀初頭にイギリスの作曲家によって作曲された組曲である。この組曲は、太陽系の7つの惑星に捧げられた7つの楽章から構成され、それぞれの楽章は、それぞれの惑星の神話、特徴、または影響を表現している。今回はその中でも、「火星」と「木星」の2曲を演奏することになっている。

まず、「火星」であるが、この曲は激しい戦争と破壊のイメージを表現している。第一次世界大戦中に作曲されたこともあり、作曲家自身が「戦争に関する何かが私を支配しているようだ」とコメントしている。強烈なパーカッション、厳しい管楽器のフレーズ、そして壮大な和音は、人々が戦争で味わった恐怖や苦痛を表現している。この曲は、現代音楽に大きな影響を与え、映画音楽の世界でもよく引用されている。

次に、「木星」であるが、この曲は穏やかな幸福感と希望を表現している。神話上の「木星」が人々に豊穣や繁栄をもたらす力を持つというイメージを表現しており、美しいメロディーが繰り広げられる。合唱の美しい歌声が加わることもあり、聴衆に心地よい感覚をもたらす。この曲は、テーマ音楽としても広く知られており、様々な映画やTV番組に使用されている。

この2曲は、非常に異なる印象を与えるが、それぞれが人々に深い印象を与える作品である。惑星の世界を音楽で表現したこの組曲は、宇宙や神秘に興味を持つ人々にも愛されている。ぜひ、音楽の力で惑星の世界を体感していただきたい。

実際には依頼文を多少修正しながら何度か試したのですが、何度やり直しても文字数が 600〜700 文字くらいにしかなりません。もしかして半角換算(古い…..)なのかと思って「2600 文字程度」と指示してみましたが変わりませんでした。

これはもしかして無料版だからなのか?と思って、有料版にアップグレードして、GPT-4.0 で試してみました。同じ依頼文で出力された結果がこちら。

アマチュアオーケストラの演奏会において、20世紀初頭に作曲された英国の作曲家グスターヴ・ホルストの代表作『惑星』の組曲から、「火星」および「木星」の二つの惑星が取り上げられます。この組曲は、当時まだ新しかった印象主義や象徴主義の手法を取り入れながら、星占いに基づく7つの惑星が持つ神秘的な性格を音楽で表現しようと試みたものであり、その独創的なアイデアと力強い楽曲構成によって、今日でも広く愛されています。

第1曲「火星」は、組曲の冒頭を飾る壮大な曲であり、「戦争を司る神」を意味するマーズの名に相応しい、荒々しくも力強い音楽となっています。重厚なリズムが特徴で、5/4拍子で進行する行進曲のような形式が、戦争の緊迫感を緻密に描写しています。特に、金管楽器や打楽器の緊迫感ある響きが、戦場の情景を感じさせるような迫力を持っています。また、音楽の途中で現れる静かな部分は、戦争の一時的な休息を表すかのようで、そこから再び力強い音楽へと展開される様子は、戦争の激しさを際立たせています。

一方、第4曲「木星」は、組曲の中でも特に人気が高い曲であり、「知恵を司る神」を意味するジュピターの名にふさわしい、豊かな音楽性を持っています。この曲では、明るく楽し気な主題が織り交ぜられる中、緩やかな中間部には、荘厳で感動的な旋律が現れます。この旋律は、後に「威風堂々」として独立した楽曲となり、英国の愛国歌としても親しまれています。また、弦楽器の美しい響きや木管楽器の軽快な旋律が、木星の豊かさや活気を見事に描き出しており、聴く者を魅了してやまないでしょう。

ホル

なぜか出力される文字数があまり増えません。しかも最後が「ホル」で止まっていて、いかにも途中で止まってしまった感じです。ただし生成された文章は、情報の密度が若干濃くなり、表現も工夫されているような印象を受けます(なぜか「だ・である体」という条件は無視されていますが)。

このあと何度か、依頼文をいろいろ変えて試したのですが、どうしても文字数の問題は解決せず、最後が途中で切れるような出力にしかならなかったので、「火星」と「木星」とを別々に依頼して、あとでニコイチにすることにしました。

ここではとても書き切れないような試行錯誤を経て、ChatGPT による出力結果の中でベストと思われた文案がこちらです。

イギリスの作曲家グスターヴ・ホルスト(1874-1934)は、オペラ、室内楽、合唱曲など幅広いジャンルの音楽を手がけたが、その中でも最も有名であり、世界中のオーケストラの定番曲として愛されているのが、組曲『惑星』である。本作は、1914年から1916年にかけて作曲され、1918年に初演された。この組曲は、7つの楽章から構成されており、それぞれが太陽系の惑星を表現している。
ただし、当時まだ未発見であった冥王星(1930年発見)は含まれておらず、また、地球も主題としては扱われていない。ホルスト自身は占星術に興味を持っており、各惑星が持つ占星術上の性格や意味を音楽的に表現した。それぞれの楽章は独立した作品としても演奏されることが多いが、今回の演奏会では、「火星」、「木星」の2曲を取り上げる。

「火星、戦争をもたらす者」という全称で知られるこの楽章は、ホルストが第一次世界大戦の勃発直前に作曲したものである。楽章は5/4拍子のリズムによって特徴付けられ、この不規則なリズムは軍隊のマーチを想起させ、戦争の緊張感と衝撃を効果的に表現している。また、強烈なリズムに乗せた重厚なオーケストラの響きは、聴衆に強烈な印象を与える。
楽曲の中には、ホルストの革新的なオーケストレーション技法が随所に見受けられる。特に彼が駆使する金管楽器の使い方は、音楽の劇的な効果を高めている。このオーケストレーションは、その後の映画音楽に大きな影響を与え、特にエピックやSF映画のスコアにその影響が見て取れる。
「火星」は、その激しい音楽的描写から、時には戦争や闘争の象徴ともされる。しかし、ホルスト自身は戦争賛美の意図はなく、むしろ戦争の恐ろしさや悲劇性を音楽を通じて伝えようとしたとも考えられる。この視点から、「火星」は戦争の現実を率直に描き出す音楽とも言えるだろう。

本日の演奏会で取り上げる「木星」は、組曲の中で4番目の楽章であり、「木星、喜びをもたらす者」という副題が付けられています。木星は、古代ローマ神話における神々の最高神であり、雷神であるユピテル(ゼウス)を象徴しています。この楽章は、神々の王である木星の持つ権威と喜びに溢れる性格を表現しています。
「木星」は、その華やかな管弦楽法と独特の旋律で知られており、組曲全体の中でも最も人気のある楽章のひとつです。総奏で始まる壮大な序奏の後、トランペットによる力強い主題が登場します。この主題は楽章全体を通して繰り返され、楽器や編成が変化しながらさまざまな表情を見せてくれます。
中盤には、イギリスの民謡に影響を受けた美しい旋律が現れ、ホルストの愛国心を感じさせます。この部分は、後に『アイ・ヴォウ・トゥ・ジー・マイ・カントリー』という賛美歌に編曲され、イギリス国内外で広く歌われるようになりました。
楽章のクライマックスでは、壮大な総奏が再び現れ、力強い主題と美しい旋律が絡み合って盛り上がります。最後に再び力強い主題が登場し、華やかなフィナーレを迎えます。

これで 1,220 文字です(また文体の指定が無視されている)。

まあ何となくソレっぽい文章になってはいますが、この文案には致命的な問題が 2 つあると思いました。

1 つ目は、ホルストは占星術に興味を持っていたものの、この曲と神話に登場する神々との関連についてはホルスト自身が明確に否定していることです。巷にはこの曲と神話の神々との関連を語っている Web サイト(主に占星術系)が多数あるので、その辺から学習してしまったんだろうと思います。

2 つ目は、「火星」が「その後の映画音楽に大きな影響を与え」たかどうかが良く分からず、確認のしようがないと思ったことです。何度か出力させたうちの別のバージョンには、「ジョン・ウィリアムズの『スター・ウォーズ』の音楽には、この「火星」からの影響が見られる」とまで書かれていました。まあそうかも知れませんが、裏が取れないので、ちょっとこれは書けないな、と思いました。

このような状況から全面的な修正が必要だと判断し、ChatGPT から出力された他のバージョンからも「いいとこ取り」しつつ修正して、最終的に提出した文案がこちらです。

イギリスの作曲家グスターヴ・ホルスト(1874-1934)は、オペラ、室内楽、合唱曲など幅広いジャンルの音楽を手がけたが、その中で最も有名であり、世界中のオーケストラで広く演奏されているのが、組曲『惑星』である。本作は 1914 年から 1916 年にかけて作曲され、1918 年に初演された(ただしこれは私的な機会での演奏であり、正式な初演は 1920 年)。この組曲は次の7つの曲から構成されており、今回の演奏会ではその中から「火星」、「木星」の 2 曲を取り上げる。

1. 火星、戦争をもたらす者
2. 金星、平和をもたらす者
3. 水星、翼のある使者
4. 木星、歓楽をもたらす者
5. 土星、老いをもたらす者
6. 天王星、魔術師
7. 海王星、神秘主義者

なおホルスト自身は占星術に興味を持っており、1913 年に友人に宛てた手紙では「それぞれの惑星の性格が私に多くを語りはじめました」と書いている。また曲順が天文学的な位置関係と異なり「火星」から始まるのも、占星術から影響を受けている可能性がある。しかし一方でホルスト自身は、それぞれの惑星と同じ名前を持つ古代神話の神々との関連を否定しており、占星術などから先入観を持たれることは望んでいないようである。

第 1 曲「火星」は強烈なリズムと重厚なオーケストレーションが特徴である。曲の冒頭では弦楽器に対して、弓を裏返して木の部分で弦を叩く「コル・レーニョ」という奏法が指示されており、これが迫りくる戦争の緊張感を効果的に表現している。曲全体が 5 拍子で支配されている中で、同じような音形が執拗に繰り返されながらクライマックスを迎えるが、勝利や歓喜を想起させるものは全く現れず、戦争には勝者などいないということを暗示するような絶望的な響きでの幕切れとなる。

第 4 曲「木星」は、その華やかなオーケストレーションと独特の旋律で知られており、組曲全体の中で最も人気のある曲のひとつである。特に中間部の緩やかな 3 拍子の部分は、後に『我は汝に誓う、我が祖国よ』(I vow to thee, my country)という賛美歌に編曲され、戦没者追悼記念日(Remembrance Day)をはじめイギリス国内外で広く歌われている。日本では 2003 年に、シンガーソングライターの平原綾香がこの部分に独自の歌詞を付けた『Jupiter』が大ヒットしており、これを契機としてホルストの『惑星』を知ったという人も多いであろう。
この曲は「火星」とは対照的に、明るく陽気で躍動感のある旋律で始まり、拍子やテンポを変えるたびに新たな主題が現れる。全ての主題はまずホルンで演奏されるので、まるで「全てのお楽しみはホルンから始まる」とでも言わんばかりの構成だが、楽しいことをホルンが全て独占している訳ではなく、様々な楽器が、その楽器らしい楽しみ方でこれらを引き継いでいく。これらはホルストの見事な作曲技法によって、絡み合いながらクライマックスに向けて展開されていき、全員で歓びを分かち合いながら華やかなフィナーレを迎える。

結局、8 割くらい修正(もしくは書き直し)しましたので、ほとんど原形を留めておりませんし、全て自分で書き起こすのと同じくらい時間と労力がかかりましたので、ChatGPT を使う意味があったのか?という感じもします。しかし少なくとも次の 2 点については ChatGPT の案を採用したので(細部は修正しました)、それなりに意味はあったという事にしたいと思います。

  • 「火星」におけるコル・レーニョ奏法に関する記述(別バージョンから借用)
  • 「木星」が「I vow to thee, my country」として歌われていること

なお全面的に修正/書き直しをするにあたり、下記の参考資料以外にも様々な Web サイトや書籍にあたったり、あらためてスコアをあちこち読んだりしたので、いろいろ勉強になって良かったと思います。特に解説にも書いた「全てのお楽しみはホルンから始まる」というのは今回初めて気付いたことでした。ちょっと流行らせたいと思っています。

余談ですが、いろいろなパターンで文案を出力してもらった後にお礼を伝えたときのリアクションがこちら。

なかなかよく出来てると思いませんか?

 

(参考資料)

  • (株)全音楽譜出版社『オイレンブルク・スコア ホルスト 組曲《惑星》』(解説:Colin Matthews/三橋圭介訳)
  • (株)ソニーミュージックエンタテインメントの CD『ホルスト:組曲「惑星」』(Leonard Bernstein / New York Philharmonic)(SRCR 1626)(解説:近藤憲一)



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音楽家向けの鍼治療を受けてみた話

楽器の吹き方が一向にコロナ前のような状況に戻らず、楽器を吹くことがほとんど楽しくない(たまに楽しい)という状況が 2 年以上続いていますが、どうも自分なりに試行錯誤している間に変な癖がついてしまったようで、唇の周りや頬の筋肉が震えるようになってきました。

具体的にいつ頃からこのような症状が現れたのか分からないのですが、4 月から Trombone でプロの方のレッスン(というかリハビリ)を受けるようになった時点では既に自覚していたので、3 ヶ月以上前から症状はあったと思います。

それでも吹奏楽団の本番は何とかしのいだ(というか相当サボった)のですが、オーケストラの本番を 2 週間後に控えたところで急に悪化して、ロングトーンが持続できなかったり、大して高くもない音を出せないような状況になりました。こんな状況でオケの練習に行っても意味が無いと思って、とりあえず直近の練習は欠席し、今さらエキストラなんか頼めないよなぁ、などと考えながら Web で少々調べたところ、どうもフォーカルジストニアという症状があるらしく、これに関連して音楽家向けの鍼治療があることを知りました。

自分がちょっと調べた範囲でも、次の 2 ヶ所が見つかりました。

これらのサイトに症例の動画がいくつか掲載されていますが、自分の症状もまさにこれだなと。高音域の方が比較的安定しているところまでクリソツです。

鍼は全く経験がないので若干の不安はありましたが、そんなことも言っていられず、とりあえず自宅から通いやすい場所ということで品川の方に連絡したところ、翌日に予約がとれたので、楽器(Euphonium)を持参して診てもらいました。

まず状況を説明した後に楽器で音階など簡単なフレーズを少し吹いてみて、触診で顔や首、肩、背中などの筋肉の状況を確認してから、治療方針を決め、鍼を刺すという流れになります。1 回の施術がだいたい 1 時間強くらいなので、

演奏などで状況確認 –> 施術 –> 再び演奏して状況確認 –> 施術 –> 再び演奏して状況確認

という感じです。

最初に状況を確認していただいた時点で、既に自覚している顔面の震えだけでなく、呼吸などにも問題がありそうだということでした。もちろん 1 回の施術でいきなり全て解決するわけではないので、ある程度時間はかかるのですが、一方で 6 月 11 日に本番を控えていることを伝え、本番までにできるだけ改善することを目指すという方針で進めていただくことにしました。

そして最初の施術ですが、鍼を刺したのは右の肩甲骨のあたりに 1 本、背骨の右側面に 1 本でした。「え?そこなの?」と思いましたが、鍼を抜いた後で少し吹いてみたら、予想以上に体の状態が変わっていてびっくりしました。施術前と同じように吹いたつもりなのに、楽器の鳴り方が明らかに変わっていました。アンブシュアの震えはむしろ以前より増えた感じがありました。

次に右肘の後ろに 1 本、右手の甲の親指と人差し指の間に 1 本打って、5 分ほどおき、鍼を抜いてから再び吹いてみたところ、息の立ち上がり(レスポンス)が明らかに良くなっていました。同じように吹いたつもりでしたが、先生からは音量が増えたと言われました。先生によると、肋骨が動きやすくなるように筋肉を緩めたとのことでした。ここまでで初回の診療は終了。

既にこれまで 3 回通っていて、それらの間に練習(カラオケボックスでの個人練習を含む)が数回ありましたが、施術のたびに異なる場所に鍼を刺して、いろいろな部分の状況を少しずつ変えているという感じです。ちなみにこれまで鍼を刺した場所は、腰、左右ふくらはぎ、左右の肩、右腕などです。事前の予想に反して、顔面には一本も打っていません。

これらの施術の間に行った練習では、部分的に症状が改善されたり、また戻ったりという状況が続きました。例えば高音域で倍音を低音側に外しやすくなったり、タンギング直後の音の立ち上がりが良くなったり悪くなったり、先週できなかったフレーズが難なく出来るようになったり、そういう状況のなかで、従来よりも慎重に体の状況を探りながら、姿勢やアンブシュアが乱れないように気をつけながら吹いているという感じです。

そんな状況でオーケストラの本番を迎えました。結果としては、「惑星」の Tenor Tuba ではソロでミス多発、ブラームス交響曲第 1 番の 1st Trombone は何とか無難に(大きなミスなく)吹ききりました。いろいろ不本意ではありますが、曲の流れを止めたり大穴を掘るような事故は回避できたので、まあ当面の目標をギリギリ達成できたというところでしょうか。「惑星」に関しては当日午前中のリハーサルで好感触だったので、本番でなぜあんなに崩れたのかが良く分かりません。治療中の不安定さが露呈したのかもしれません。

とりあえず目先の本番は乗り切ったので、これからしばらく時間をかける覚悟で、鍼治療とレッスン(リハビリ)の同時並行で取り組んでいきます。金かかるなぁ…..。

(追記:2023/06/22)

(追記:2023/06/22)

  • 昨日また施術に行ってきました。今回は両足の膝の内側と脛の内側に各 1 本(計 4 本)打って 10 分程度放置、右肩甲骨のまわりに 2 本打ちました。先生によると、今回は顔面の震えに直接影響するような施術はしておらず、どちらかというと首まわりの筋肉のバランスを調整する方向の施術だったようです。これでしばらく様子を見ます。

(追記:2023/07/24)

  • 先週施術していただいた際に先生と話したところで、施術によってこれ以上の改善を望むのは難しいだろうという結論となりました。理由は、現在の奏法に起因する問題(具体的にどのような問題なのかは不明)を口でカバーしようとしているような状態のため、施術によって一時的に口唇まわりの震えを抑えても、すぐ再発する可能性が高いと考えられるためです。このような理由から、施術を中止して奏法の修正に専念することにしました。

(追記:2023/7/31)

  • その後どのような練習をしているかを別の記事にしました。

 




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Euphonium / Trombone リハビリ経過

新型コロナウイルスによるパンデミックの影響で、全く練習できない期間が数ヶ月ありましたが、練習再開後もなかなか以前のような演奏ができないまま、現在に至っています。

練習再開からしばらくは、まあブランク明けはこんなもんだろう、という程度の認識でしたが、数ヶ月たってもなかなか好転せず、むしろどんどん下手になっていくようでした。

そんな中でもオーケストラ(自分の所属しているのとは別の団体)で演奏する機会を 2 度ほどいただいたり、吹奏楽やブラスバンドなどの本番もいくつかあったりしたので、ごまかしながら何とか凌いできましたが、原因を自分なりに考えて対策しようとするほど逆にうまくいかず、状況は悪化する一方でした。

特に、アンブシュアを支える筋力が落ちたのではないかと考えて、昨年 9 月からマウスピースでの buzzing の練習を毎日やるというのを数ヶ月続けてみましたが、それなりに気付きがあった一方で、楽器の演奏は改善できなかったので、いよいよ自力で改善できる見込みは無さそうだと考え、以前にお世話になっていた先生に再び連絡をとり、しばらくレッスンをお願いして矯正していくことにしました。

なお、症状は Euphonium でも Trombone でも変わらないのですが、Trombone の方が奏法の良くないところが分かりやすいので、レッスンは Trombone で受けています(Euphonium だと奏法が多少ずれていても楽器が響いてくれるので、アラが分かりにくい)。

まず、レッスン開始前の時点で自覚していた症状は次のとおり。

  • 大したことない音域(第四〜第五倍音)で音を外す(だいたい下に外れる)
  • 短い音が音にならない。例えばスタッカートの八分音符ひとつを p で吹こうとすると唇が振動しない。
  • 大したことないテンポで八分音符が続くフレーズを吹けない。タンギングのたびに唇の両脇から息が漏れて、音にならない。

四月の第一週からレッスンをスタートしましたが、これまで 4 回のレッスンの中で、だいたい次のようなことが分かってきました。

  • 息の量とスピードが足りない。この状態だと、近くでは音が出ていてるような感じがしても遠くに届かない。特にオケではまずい。
  • ベルの横から耳に入る音を聴きすぎる。本来は、楽器から出た音が壁などで反射してくる音を聴くのが良い。その結果として、少ない息で出ている音を良い音だと思ってしまい、息の少ない吹き方が定着してしまっている可能性がある。
  • 楽器の角度がやや上向きになっている。かつて奏法を矯正したときに、やや下向きに修正したのが元に戻ってしまっている。
  • アパチュアがやや閉じ気味になっている。本来は(自分の場合)もう少し開き気味にして、息を若干捨てるくらいになった方が良い(奏者本人には、かすれ気味の音に聴こえるくらいの方が、結果として良い音が出ている)。
  • コロナ前に比べて喉の奥が開いていない。

なぜそうなったのか原因はよく分かりません。コロナの影響で数ヶ月吹かない間に筋力が落ちたとか、加齢による筋力低下などが複合的に作用している可能性もあります。また、要因のひとつとして考えられるのは、マウスピースでの buzzing の練習を継続的にやったことで、息を使わない吹き方が定着してしまったのではないか、ということでした。

また、自分自身としては息が足りなくなっているという自覚はほとんどなく、息よりもアンブシュア(およびそれを支える筋力)の方が問題だと思っていましたが、根本原因は息の方にあるようでした。

これらを踏まえて、先生と相談しながら今後の練習方針を次のように決めました。

  • 楽器の角度に注意する。マウスピースを主に下あごで支える感じで、リムの上端が浮いてるくらいが良い。
  • マウスピースだけの buzzing を、アパチュアを閉じ過ぎずに、十分な息を使ってできるのを確認してから楽器を吹く。マウスピースだけで buzzing したときに音が上ずるような感じになったら、息が足りていないと考える。
  • 練習のときに自分の音色を気にしない。録音も聴かない方が良さそう。ただし音程や音色が揺れたり不安定になったりしていないかどうかは気にしながら吹く。
  • 変な癖がつくのを防ぐために、自宅で buzzing などの練習をしない。

なお先生によると、大人の生徒さんの良くないところは、あれこれ考えすぎる事だそうです。そういった意味では、こんなことを文章にすること自体が有害とも言えます。しかし自分の場合は何らかの形で言語化できないと腑に落ちない気がしますし、練習内容や結果に納得感が欲しいので、こういうプロセスが必要だと思っています。




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安東京平先生の Euphonium レッスン受講(たぶん通算 6 回目かな?)

新型コロナウイルスのパンデミックによる最初の緊急事態宣言のときに、4 ヶ月ほど楽器を全く吹かない期間ができた影響で、吹き方がすっかりおかしくなってしまいました。

最初は唇の両脇から息が漏れるのがとても気になって、ああこれは単純に口の周りの筋肉が落ちたかなと思っていましたが、何度か合奏をやっていくうちに、コロナ前なら何も考えずに吹けていたような簡単なフレーズでミスしたり、大したことのない音域で倍音を外したりすることが多くて、かなり全体的に奏法を忘れてしまったか、バランスが大きく崩れてしまったなと思いました。どの楽器でも(Euphonium、Baritone、Trombone)同じようにダメなので、楽器のせいでないことは明らかでした。

これまでいろいろ対策を考えながら、いくつかの本番を何とかしのいで来ましたが、一向に好転しないので、仕事の方も含めてスケジュールが一段落したところで、安東京平先生にレッスンをお願いしました。

 

(写真はイメージです)

 

レッスンの最初にこれまでの状況を一通り説明した上で、楽器を吹いて奏法をチェックしてもらったところ、いろいろな筋肉が落ちていることと、逆に首の周りや胸のあたりに余計な力が入りすぎていることを指摘されました。

筋肉が落ちていることは予想通りだったのですが、余計な力が入りすぎていることに関しては自覚がありませんでした。先生の見立てでは、これまでは口の周りで適当にごまかしてた部分が、筋力が落ちたためにごまかせなくなり、それを無理に修正しようとして無意識のうちに余計な力が入るようになってしまったのではないか、ということでした。ここまでで今後の奏法改善に関する方向性が概ね決まりました。

  • コロナ前の吹き方を忘れたということは、コロナ前にあったと思われる変な癖も忘れたと考えて、良い機会だととらえ、息の流れを作り直す。
  • 落ちた筋力を鍛えることを目指すよりも、筋肉が落ちた状態でスムースに吹けるようになることを目指す。

 

(写真はイメージです)

 

レッスンの中でいろいろ試行しながら相談し、次のような練習をしばらく試してみることになりました(以下は私の現状に対していただいたアドバイスなので、他の方々に役立つとは限りません)。

  • 楽器の抵抗感を上回る圧力で吹き込まないようにする。目安としては、音を鳴らさずに息だけを吹き込んだときの音に、高めの風切り音が含まれていたときは、息の圧力が楽器の抵抗感を上回っていると思われる。
  • ウォームアップのときに、これから吹こうとする楽器で出す音をイメージしながら息を吐く練習をすると良いかもしれない。そのときに前述の抵抗感を確認しながら、音を出す練習と息を吐く練習とを交互に繰り返す。
  • 楽器がないときは、4 拍くらいかけて息をゆっくり吸って、息をゆっくり一定の圧力で吐く練習をする。そのときに胸から上の力を抜き、息の圧力はアパーチュアと腹筋だけでコントロールする。
  • これは膨らました風船がしぼんでいくイメージ。風船がしぼんでいくときに、風船に力をかけて潰そうとするのではなく、しぼむ速さは口の開け閉めだけで調節する(これがアパーチュアに相当)。
  • マウスピースに頼らずに安定した buzzing ができるように練習する(リムのみの使用は可)。このとき、アンブシュアを変えずに安定して鳴らせる音域を少しずつ広げられるように練習する。
  • 楽器を鳴らすときと、buzzing するとき、声で歌うとき、単に息を吐くときとの間で、息の出方(そのときの体の使い方)が一致することを目指す。

レッスン前は、どちらかというと筋力を鍛える方向を目指すべきかと考えていたので、ある意味で真逆になったのは意外でしたし、行動に移す前に先生に見てもらって良かったと思いました。

もともとオーバーブロウ(やたらと息を吹き込む割には効率よく音量が上がらない)になりがちな癖もあったので、この方向で練習を続けていけば、そのような癖も軽減されるかもしれません。

しばらく時間はかかりますが、何とか立て直していきたいと思います。




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合奏専用眼鏡を投入

乱視プラス老眼のため、約 5 年前にデスクワーク用の中近両用4 年前に日常生活用の遠近両用眼鏡を作ってもらって以来、すっかり眼鏡オヤジが定着してきましたが、実は楽器を演奏するときの眼鏡選びにはずっと答えが見つかっていませんでした

どうしても楽器を演奏するときに、顔の角度がある程度動くんですよね。

もともと顔が若干下向きになる癖があるので、眼鏡をかけると指揮者がちょうど上側のフレームと重なって見にくくなります。それを防ぐために Euphonium や Baritone を吹くときには楽器と体の間にクッションを入れて、顔が少し上を向くように矯正しようとしたのですが、やはり演奏上あまり良くなさそうだという結論に落ち着きました。

また、楽譜の中で読みたいところが、ちょうど眼鏡の下側の老眼対策ゾーンに重なると、かなりぼやけてしまって、小さめの楽譜だとたまに読み間違えるようになりました。

3 年近く前には「演奏用に新しく眼鏡を作るのもちょっとやり過ぎな感じもします」などと思っていたのですが、乱視が進行したのか老眼が進行したのか(もしくは両方か)、最近特に楽譜の見間違えによるミスが増えてきました(もちろん楽譜以外の理由による凡ミスもあります)。そこで思い切って合奏専用眼鏡を作ることにしました。

楽譜を持って眼鏡屋に行き、合奏のときの譜面台の場所を想定して楽譜を置いた状態で乱視矯正が最適になるように調整してもらい、老眼対策は捨てて乱視対策一本にしました。

フレームについてはアンダーリムのものもいくつか試しましたが、結局のところ今回選んだ丸形のものの方が、縦方向の視界が広いようでした。丸眼鏡というと古臭い印象になるかと思いましたが、こちらはデザインのせいか色のおかげか、さほど古臭い感じはしないと思いました(まあ主観ですが)。

 

これまで作ってもらったときはもっと納期が長かったので、今回もそれなりに時間がかかると覚悟していましたが、今回は遠近両用や中近両用ではないので時間がかからないらしく、超短納期でした。

眼鏡屋に行ったのは水曜日でしたが、金曜日には仕上がるとの事だったので、宅急便での配達をお願いし、土曜日の午前中に届きました。

こんな写真では伝わらないと思いますが、エアキャップを止めるテープを切るのがもったいないくらい、とても丁寧に梱包されて届きました。結局切りましたけどね。

 

午後から吹奏楽団の練習だったので、早速実戦投入しました。

期待どおり、顔の角度が多少変わっても、楽譜全体がはっきり見えます。逆に、楽譜以外はほとんど全て、少しボケて見えます。くっきり見えるのは一列前の人くらいまででしょうか。これは想定していたとおりです。

当然ながら指揮者の顔もあまりはっきり見えません(表情くらいは分かります)。指揮者の先生方には申し訳ありませんが、先生方の顔がはっきり見えることはあまり重要ではないので、良しとします。

 

今日の合奏全体を通して、楽譜が見にくいということは全くありませんでした。なかなか良さげなので、ブラスバンドやオーケストラでも早く試してみたいところです。

眼鏡の選択肢が増えると、人生がさらに楽しくなりますね。



佐藤采香さんの音が沁みる『軒下ランプ』

佐藤采香さんの演奏は数年前にどこかの楽器屋のホールで聴かせていただいたことがあって、しっかり芯があるのに柔らかい音色が印象的だったことを覚えていました。

そんな佐藤采香さんの 2 枚目のアルバムを密林で昨年予約したところ昨日届いたので、早速聴いてみました。

今や世界的に CD よりも圧倒的にダウンロード販売が多くなっていて、CD の方が多く売れているのは日本くらいだ、という話を随分前から聞くようになりましたが、こういうデザインや装丁だと、やっぱり CD 買ってよかったと思いますね。収録されている解説も佐藤采香さんご自身によるもので、情報量も多く読み応えがあります。

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アルバム冒頭に収められているタイトル曲の「軒下ランプ」は、とても叙情的でいい曲だと思いました。佐藤采香さんの音色の暖かみもランプっぽい感じがして、曲のイメージとよく合ってるように思います。他の(特に外国の)方々の演奏も聴いてみたいと思える曲でした。

この CD で最も驚いたのは Bach の Partita でした。まるで Bach が Euphonium のために作曲したかのように、自然に音楽が流れてくる感じがしました。Beethoven や Mendelssohn も、「チェロのための曲を頑張ってユーフォでやってみました!」という感じが全く無く、余計なことを一切考えずに曲の良さを味わえる感じです。

私はこのような古い時代の曲は Euphonium には向かない(似合わない)と勝手に思っていたのですが、いかに自分が浅はかだったか思い知らされ、反省しました。

Waespi のコンチェルトでは Bach の時とは対象的にアグレッシブな演奏が聴けます。長いカデンツァも含めて聴いている方もアドレナリン高めになる曲で、リサイタルで生の迫力を味わってみたいと感じました。最後は「え?」と思うような意外な終わり方で、演奏が終わった瞬間にドヤ顔になっている姿を想像しました。

最後に収録されている Sparke の Song for Ina は、無理だとは知りつつ自分もこういう風に吹きたいと心底から思える演奏でした。この曲はこれまでいろいろな方々の演奏を聴いてきましたが、それらの中で最も優しさが深い演奏だと感じました。清水初海さんのピアノがまた優しくて、アルバムの最後に気持ちいい余韻が残ります。

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軒下ランプ/佐藤采香・清水初海




緊急事態宣言後初の Euphonium 練習

新型コロナウイルスの影響で練習場所が使えなくなって以来、しばらく練習から遠ざかっておりましたが、楽団役員の皆様の尽力のおかげで、ようやく条件付きで練習できる場所が確保できたので、久しぶりに所属楽団の練習で Euphonium を吹くことができました。

最後の練習がいつだったのか記憶が曖昧ですが、おそらく 4 ヶ月ぶりくらいだと思います。

今住んでいる場所が室内練習不可(サイレントブラスをつけても NG)だったので、せめてマウスピースでのバズィングくらいやっておけば良かったのですが、仕事など諸々慌ただしかったり、モチベーションがイマイチだったり、もともと地道に基礎練習するのが苦手だったり、様々な理由が重なって、結局何もやらずじまいでした。

(要するにやる気にならなかったってことだな。)

せめてメカ的なトラブルだけは無いようにしたかったので、楽器の丸洗いだけはやりましたが、それ以外は本当にほぼ 4 ヶ月何もしないというブランクを経験したので、音も出ないんじゃないかと思いました。

 

練習会場に着いて、従来どおり発声練習 –> バズィング –> Eb のロングトーンという入り口のルーティンをやってみたところ、意外といつもの感じで楽器が鳴ったように思います。そこから少しずつ音域を広げたり、ゆっくりリップスラーを入れたり、という感じで探りながら吹いて見ましたが、楽器の鳴り方は覚悟してたほどひどくはなかったなという印象でした。

ただ、やはり頬の筋肉が落ちているのか、音が持続しない感じで不安定でした。高音域も一発なら当たりますが、ロングトーンにすると音色や音程がぶれていきます。これはしばらく時間をかけてリハビリするつもりで取り組む必要がありそうです。

 

余談ですが、あまりに久しぶりに楽器を吹いたので、クッションをどこにつけていたか全く思い出せなくなりました。これは本来 U 字管の下に付けて腿と楽器の隙間を埋めるものですが、私は楽器と腹(または胸)との間に入れて、顔と楽器との角度を調節しやすくしています(トリガーを引いたときにチューニング管が腹にあたらないようにするためでもあります)。

以前はちょうどいい角度になるポジションを見つけてあったのですが、今日はそれがどうしても思い出せず、しかも顔の角度もよく分からなくなっていたので、あれこれ探っているうちに練習時間が終わってしまいました。

まあ、これから改めて探っていきたいと思います。




Adam Frey 先生の Master Class と Focus Class 受講

昨晩は International Euphonium Tuba Festival 2020 の最終日でしたが、昼間に行われた外囿祥一郎先生のスペシャルクラスには所用のため参加できず、日本時間で深夜 0:00 から行われた Adam Frey 先生の Master Class を聴講しました。

Adam 先生のレッスンで面白かったのは、Audacity を使って自分自身や受講者の演奏を録音し、その波形を説明に使っていたことでした。

上の画像は Adam 先生自身が演奏した音の波形ですが、このときはこの画像を使って音が減衰する様子を説明していました。受講者の演奏では音の終わり方がブツっと切れるような感じになっていたのですが、そのような違いが目で見て分かるように示すというのが新鮮でした。

このような方法を使うことには賛否両論あるかもしれませんが、アコースティックな楽器のレッスンにおける IT の使い方として面白いと思いました。

続いて深夜 2:00 からは Focus Class で、2 つのセッションがありましたが、私は Adam Frey、James Gourlay、Aaron Tindall という 3 人の講師による「Instrument Doubling」というセッションを選んで受講しました。これは複数の楽器を掛け持ちすることに関する議論で、3 人とも Euphonium と Tuba との両方を、また Adam 先生に関しては Bass Trumpet や Tenor Horn なども含めて演奏してきた経験をもとに、様々な議論がありました。

受講者にはプロを目指している方も多かったと思われるので、複数の楽器ができたほうが将来のキャリアに有利かどうかという観点もあり、自分には関係ないものの興味深い話題でした。

私から Trombone と Euphonium との間でスムースに切り替えるコツはあるかと質問させていただいたところ、できればマウスピースのリムを同じものに揃えることと、リムが同じだとしても音のコンセプトが全く違うことをしっかり意識すること、という回答がありました。いずれも私自身が既に実践している事ではありましたが、プロの方々から同じ見解をいただけたことで自分の実践が裏付けられ、確信が深まって良かったと思います。

今日でイベントの全日程を終了しました。深夜ということもあって、参加できたセッションも限定的でしたが、ここでしか得られなかったと思われるものも多く、私にとっては実りの多いイベントだったと思います。

なお、今回は特別に日本人向けに、日本で参加しやすい時間帯の、日本語字幕や通訳付きのプログラムも用意されたのですが、そちらの方は三浦徹先生のセッションしか参加できませんでした。逆に、米国時間で行われたセッションでは、私が参加したセッションにおいて日本人と思われる名前の参加者はほとんどいませんでした(たまに 1 〜 2 名見た程度)。今回は日本からも 30 人くらい参加されたというような話を聞きましたが、多くの方々は日本人向けプログラムに集中されたのかもしれません。もしくは、深夜のプログラムに関しては後で YouTube にアップロードされるのを見れば十分と思われたのかもしれません。個人的には、こういう場に積極的に参加する日本人がもっと増えると良いなぁと思うのですが、当分はまだ難しいですかね……。