読書メモ『結局、ウナギは食べていいのか問題』(海部健三)読了

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リアル本屋でタイトルだけ見て衝動買いした本です。

私は別にウナギに関して特に問題意識を持っていた訳ではありませんが、この本のタイトルを見た瞬間に「そういえばウナギが絶滅危惧種のリストに入ったって話は聞いたことがあるな」「その割にはスーパーとかで普通にウナギ売ってるし、店でも食えるよな」などと考えが巡って、そのまま買ってしまいました。タイトルの付け方って大事ですね。

『結局、ウナギは食べていいのか問題』海部健三 著、岩波書店 岩波科学ライブラリー 286(2019 年)

本書の「はじめに」の最初のページにいきなり書いてありますが、『結局、ウナギは食べていいのか問題』というタイトルの本なのに、結局我々はウナギを食べていいのかどうかという結論については、本書には書いてありません。本書は、ウナギを食べるかどうかは個々人が自分で決める話だという前提で、食べるかどうかを判断するために必要な知識や情報について広範な視点から書かれています。

詳しくは本書をお読みいただきたいと思いますが、本書のポイントはざっくり言うと次のような感じになるかと思います。

  • ウナギが絶滅危惧種のリストに入っているのは事実。現在の状況が続くと絶滅する可能性がある。この点については諸説あるが、絶滅する可能性がある以上、いまから手を打っていかないと手遅れになる。
  • 養殖されたウナギは、野生から捕獲されたシラスウナギを養殖池で育てられたものだが、そのシラスウナギの半分以上が違法に捕獲されている。違法捕獲によって絶滅の可能性が高まるだけでなく、実態の把握が困難になっている。
  • 違法なシラスウナギと合法なシラスウナギは流通や養殖の過程で混ざるため、販売店や飲食店、消費者が違法行為によるウナギを区別することは不可能。高価なウナギの中にも違法ウナギは混ざっている。
  • 全国で、良かれと思って行われているウナギの放流は、野生のウナギや生態系に悪影響を与える可能性が高いので、現状では行うべきではない(ただし、より良い放流のしかたはある)。

したがって、我々のような一般消費者が消費行動によってウナギの持続可能な利用に貢献する、もしくは違法ウナギの廃絶に貢献するような方法は、今のところなさそうです。しかしながら、このような知識や問題意識を持っておくことはそれなりに大事ではないかと思います。

本書でも紹介されていますが、イオン株式会社は 2018 年に「イオン ウナギ取り扱い方針」を定め、2023 年までに 100% トレースできるウナギ(つまり違法行為が関わっていないことが確認されたウナギ)の販売を目指すことを発表しています。

本件に関するイオン(株)のプレスリリースはこちら:https://www.aeon.info/news/2018_1/pdf/180618R_1.pdf

例えば、この取り組みに基づいて 2019 年からイオンで販売されている「静岡県浜名湖産うなぎ蒲焼き」は、浜名湖で合法的に捕獲されたシラスウナギを、他のシラスウナギと混ざらないように養殖したものだそうです。流通大手のイオンがこのような行動に取り組み始めたことで、他の流通各社や養殖業者がこの流れに追随する可能性があります。

このような商品が増えてきたときに、消費者がその意味を正しく理解して、それを選んで買うことが、持続可能なウナギの利用に貢献することになるでしょう。それまでに一般消費者の間でウナギ問題の普及啓発が進むことが大事ということです。

本を読むのは面倒という方でも、著者による「ウナギレポート」という Web サイトにアクセスしていただくと、本書の内容を大まかに知ることができます。

ウナギレポート
http://c-faculty.chuo-u.ac.jp/~kaifu/index.html

ちなみに著者の肩書きは「中央大学法学部准教授・中央大学研究開発機構ウナギ保全研究ユニット長」だそうです。中央大学に「ウナギ保全研究ユニット」という組織があることも驚きですが、持続可能なウナギの消費が法学部の範疇になっていることも意外でした。



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