今日の ABEMA Prime で、IT 担当大臣がハンコ議連の会長を辞めたというニュースの絡みで、ハンコ議連会長代行の国会議員をゲストに呼んで討論が行われたのを見ました。討論そのものは案の定というか話が全然かみ合わずに終わったのですが、ハンコ議連の議員でさえこんなことも知らないのかと思ったことが一つありました。
この会長代行は、(正確な表現は忘れましたが)ハンコが義務付けられているのではなく、あくまでも選択肢の一つとしてハンコがあるのであって、サインを使いたい人はサインを使えばいいし、電子的な手続きでもいい、各人や各社が自由に選べばいい、というような趣旨の主張をされていました。また前会長(IT 担当大臣)は 4 月に、ハンコの使用については「しょせんは民・民の話だ」などとコメントされていました。
お二方とも、ご存じないのか意図的なのか分かりませんが、私の知っている範囲でも民間の側だけでハンコを使うかどうかを選べない手続きがあります。そのひとつは法人登記です。
法務局で法人登記を申請する際には代表者の実印が必要です。また、登記の際に必ず法人の実印を登録する必要があります。したがって少なくとも代表者個人の実印と法人の実印との 2 つを作っておく必要があります。
そして法人登記が完了したら、登録された実印とその実印に関する印鑑証明書とをセットで使うことが、様々な手続きにおいて実在の法人であることの証明として要求されます。法人登記で実印を登録するという仕組みが変わらなければ、法人設立後の様々な手続きで実印と印鑑証明書を求められるという状況はなくならないでしょう。
中には電子署名の入った IC カードを使ってオンラインでできる手続きもありますが、まだまだ限定的ですし、政府の手続きにも、電子署名に対応しておらず印鑑と印鑑証明書が求められるものが、まだまだ残っています(例:G ビズ ID 登録)。
こういう状況で「しょせんは民・民の話」という発言はありえないと思います。また ABEMA Prime に出演されたハンコ議連会長代行は「サインよりもハンコのほうが簡単で便利」というような趣旨の話をされましたが、実印に関してはハンコを押せば済むことよりも印鑑証明書も必要になることの方が多いので、非常に面倒ですし、そのたびに金がかかります。事実誤認も甚だしいと思います。
私自身は会社を辞めて独立しましたので、社内手続きで上司のハンコをもらうというような煩わしさからは開放されましたが、実印だけは自分の力では廃止できません。
ぜひ IT 担当大臣には実印廃止に本気で取り組んでいただきたいと思います。