感染症全般について、医療従事者でなくても知っておいたほうがいい知識が、おそらく網羅的に、医学的な知識がない人でも読めるように書かれている本です。
ただし、「絵でわかる」シリーズの本ではありますが、本書に関しては正直言って絵では分からないと思います。要所要所に「もやしもん」のイラストやマンガが挿入されていて雰囲気がなごむ感じはありますが、絵でわかることを期待して買うと後悔するかもしれません。基本的には文章を読んで理解する本です(でも本書のイラストやマンガは好きです)。
本書は次のように 5 章からなっており、特に第 1 章、第 2 章の序盤、第 5 章あたりは、医療従事者や専門家でなくても知っておくと有益な知識だと思いました。
- 第 1 章 感染症の全体像
- 第 2 章 抗菌薬を理解しよう
- 第 3 章 症候からアプローチする感染症
- 第 4 章 微生物からアプローチする感染症
- 第 5 章 特別な問題
本書によると、医療従事者でも感染症やその治療方法にあまり詳しくない方々も多いようですが、本書を読むと、非常に多くの病気や症状にウイルスや細菌などが関わっていることが分かります。このような知識を持っておくことは自己防衛に役立つと思います。
例えば、お医者さんに診てもらったときに抗菌薬(抗生物質)を処方されたときに、それが適切な処方なのか、お医者さんが「とりあえず」処方しといたという感じなのか、疑問を持ったほうがいいかもしれませんし、場合によってはセカンド・オピニオンを求める必要があるかもしれません。本書を読むことで、そのような疑問を持つきっかけを得ることができます。
第 2 章の途中から、微生物や感染症、薬の名前が大量に出てきますので、こんなもの到底覚えられませんし、私もかなり読み飛ばしましたが、ざっと流し読みして何が厄介なのか、どういうことが起こるのかなどを何となく知っておくだけでも、多少は意味があるように思います。
なお、多くの図とともにレイアウトされた kindle 版の難点で、マーカーを引いたりテキストで検索したりできないのですが、本書には巻末に 5 ページにわたって索引があるので、恐らくほとんどの微生物や感染症の名称から解説を探すことができると思います。とりあえず全体にざっと目を通しておいて、後から必要に応じて知りたいところをピックアップして読むという使い方もできそうです。
私自身は過去の SARS や新型インフルエンザ、そして最近の新型コロナウイルスなど、感染症が流行(もしくはそのような懸念が発生)したときに、これらの感染症に関するニワカ勉強と情報収集をしてきましたが、本書のような基礎知識を先に持っておけば、理解のしかたも違ったと思います。今後も新型コロナウイルスに関する情報収集を続けていく上でのベースとして、本書が役に立つと思います。
【書籍情報】
岩田健太郎、石川雅之(2015)『絵でわかる感染症 with もやしもん』講談社 KS 絵でわかるシリーズ