佐藤采香さんの音が沁みる『軒下ランプ』

佐藤采香さんの演奏は数年前にどこかの楽器屋のホールで聴かせていただいたことがあって、しっかり芯があるのに柔らかい音色が印象的だったことを覚えていました。

そんな佐藤采香さんの 2 枚目のアルバムを密林で昨年予約したところ昨日届いたので、早速聴いてみました。

今や世界的に CD よりも圧倒的にダウンロード販売が多くなっていて、CD の方が多く売れているのは日本くらいだ、という話を随分前から聞くようになりましたが、こういうデザインや装丁だと、やっぱり CD 買ってよかったと思いますね。収録されている解説も佐藤采香さんご自身によるもので、情報量も多く読み応えがあります。

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アルバム冒頭に収められているタイトル曲の「軒下ランプ」は、とても叙情的でいい曲だと思いました。佐藤采香さんの音色の暖かみもランプっぽい感じがして、曲のイメージとよく合ってるように思います。他の(特に外国の)方々の演奏も聴いてみたいと思える曲でした。

この CD で最も驚いたのは Bach の Partita でした。まるで Bach が Euphonium のために作曲したかのように、自然に音楽が流れてくる感じがしました。Beethoven や Mendelssohn も、「チェロのための曲を頑張ってユーフォでやってみました!」という感じが全く無く、余計なことを一切考えずに曲の良さを味わえる感じです。

私はこのような古い時代の曲は Euphonium には向かない(似合わない)と勝手に思っていたのですが、いかに自分が浅はかだったか思い知らされ、反省しました。

Waespi のコンチェルトでは Bach の時とは対象的にアグレッシブな演奏が聴けます。長いカデンツァも含めて聴いている方もアドレナリン高めになる曲で、リサイタルで生の迫力を味わってみたいと感じました。最後は「え?」と思うような意外な終わり方で、演奏が終わった瞬間にドヤ顔になっている姿を想像しました。

最後に収録されている Sparke の Song for Ina は、無理だとは知りつつ自分もこういう風に吹きたいと心底から思える演奏でした。この曲はこれまでいろいろな方々の演奏を聴いてきましたが、それらの中で最も優しさが深い演奏だと感じました。清水初海さんのピアノがまた優しくて、アルバムの最後に気持ちいい余韻が残ります。

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軒下ランプ/佐藤采香・清水初海




安ワインでもグラスを変えれば香りが分かりやすくなるんですけど

新型コロナウイルスの影響で、外で酒を飲むことが少なくなったこともあって、最近は自宅でほぼ毎日、夕食時にワインを飲んでいます。もちろん安ワインです。

たまに行くバーのオーナーから、何年か前に「モンテプルチアーノ・ダブルッツォ」(Montepulciano d’Abruzzo)という赤ワインを勧めてもらって飲んだときに、美味しかったのを覚えていたのですが、これが近所のスーパーで 1,100 円くらいで売ってるのを見つけました。

もちろん店で飲んだものと全く同じものではありませんが、買って飲んでみたら味がしっかりしてて、なかなか良かったので、それ以来常備しています。

普段はワイングラスも使わず、ガラスのコップで無造作に飲んでますが、ちょっとしたご縁でワイングラスをもらったので、試しに使ってみました。

しかもリーデルですよ。Don Julio というテキーラの販促品だそうで非売品です。テキーラをワイングラスで飲むって想像しにくいですが。

こんな大きくて品のあるグラスを使い慣れないので、どのくらい注ぐのがいいのかさえ分かりません。とりあえずこのくらい。

やはり大容量大口径(あまりグラスでこういう表現は使わないかもしれませんが)のグラスだと香りが分かりやすいですね。最初のひと口で「おっ」と思うくらいの違いがありました。

しかしグラスが薄いので、持つのも洗うのも緊張します。特に洗うときは、このグラスを洗う前に台所を一旦片付けたくなるくらいで、これを毎日続けるのは少々キツい…….。

 

…..結局再び箱に収納しました。

 

明日からは普通のグラスにして、デラックスなグラスはたまにちょっと気分を変えたいときにでも再び使おうと思います。




ワイシャツ退役

今日、ワイシャツを一枚退役させました。

もちろんワイシャツを退役させるのは、これが初めてではありませんが、買った時期がわかるワイシャツを退役することにしたので、何となく書いておきます。

私は首が細くて腕が長いために既製品のワイシャツではサイズが合わないので、仕事用のワイシャツは全てフルオーダーです。ワイシャツをオーダーで作ってくれる店はいろいろありますが、私はほとんどエフワンでお願いしています。

エフワンでお願いするとネームを 4 文字まで入れてくれます。一般的にはイニシャルを入れてもらう方が多いと思いますが、私は仕立て上がりの年月を入れてもらっています。今回退役させたワイシャツは 2016 年 2 月に仕立て上がりだったので、次のように入っています。

ちょうど 5 年前から着ていたことになりますが、直近 1 年弱は新型コロナウイルスの影響で背広を着る機会が激減したので、実質的な就役期間は 4 年少々でした。度重なる洗濯の影響で若干縮んで袖周りがキツくなってきたのと、袖口が若干すり減ってきたので、退役させることにしました。

この先も当分の間は背広で外出する機会が増えないと思われるので、当分は追加発注しませんが、パンデミックが収束したらまた発注したいと思います。




脅迫メール受信 (^_^;

本日私のメールアドレスに脅迫メールが届きました。文面を晒そうと思いましたが、全く同じものが Web 上で見つかりましたので、リンクを張らせていただきます。

 

別館.net.amigo「【迷惑メール】 Jeffrey Taylor「あなたのパスワードを知ってるぞ」送信元がClark@adsbexchage.com」(2020/8/10)
https://ami-go45.hatenablog.com/entry/2020/08/10/173546

 

私に届いたものも文面はほぼ同じ。ただし送信元の名前は「Albert Jackson」で、パスワードも私が過去に使っていたパスワードが書かれていました。しかもメールのタイトルがその古いパスワードだったので、見たときはさすがに驚きました。おそらく過去にどこかのサイトで発生した情報漏えい事件で流出したものだと思いますが、その手の事件はあまりにたくさんありましたし、サイト側が気づいていない事件や公開していない案件もあると思いますので、自分のデータがいつ流出したのかも分かりません。

なお要求金額は $4090 になっていました。ずいぶんと値上げしたなぁオイ。

文面をザックリ訳すと、

お前がアダルトサイトにアクセスしている間に、サイトに仕込んだマルウェアでお前の PC の画面とカメラにアクセスした上に、お前のメッセンジャー、FB、メールアカウントから連絡先情報を盗んだぞ。

さらにお前が見たエロ動画と、それを見てるお前自身を組み合わせた動画を作ったから、これをお前の友達や家族、仕事相手などにバラまかれたくなかったら、さっさとビットコインで $4090 送金しろ。

というような内容です。

まあ私自身はそのようなアダルトサイトにアクセスしていませんし、連絡先の情報を含むようなサービスに関しては 2 段階認証を使っているので、全く心配していません。

しかしながら、古いとはいえパスワードを知られているというのは気持ち悪いので、主だったパスワードをひととおり変更し、PC の HDD をひととおりスキャンしておきました。




読書メモ『数学ガールの秘密ノート/確率の冒険』(結城浩)

私は学生時代から数学が苦手です。高校の途中まではそのような苦手意識はなく、むしろ得意な方だと思っていましたが、高校の数学で微分方程式やラプラス変換がサッパリ分からずに挫折して、そこから立ち直ることができませんでした。

ところが数学が苦手であるにもかかわらず物理は得意でしたが、先生からは「普通はそういうのはあり得ない」と言われました。数学は物理現象を表現する言語なので、数学がわからないのに物理が得意な訳がない、ということだったのでしょう。実は高校の物理の教科書で、本来は微分・積分を使って説明すべきものが、(学習の順序が逆であるため)あえて微分・積分を使わない方法で説明されていることを知ったのは、大学に入った後でした。

大学は理工学部機械工学科に進学しましたが、当然ながら数学で苦労することになります。高度な微分・積分や微分方程式、フーリエ級数などが必要となる科目(流体力学、振動工学、伝熱工学など)については単位を取れませんでした。
(それ以外の科目のおかげで無事に卒業はできました。)

前置きが長くなりましたが、そのくらい数学に根強い苦手意識を持っている私にとっても、本書は読みやすく分かりやすいと思いました。特に、確率を考える上で間違えやすいポイント(例えば、どこからどこまでを「全体」と考えるのか、など)の説明が、これ以上丁寧に説明できないと思えるくらい丁寧です。

確率に関する数式(「∩」や「∪」を含むやつ)が使われていますが、このような数式が苦手であれば、数式の部分を読み飛ばしても、大事な部分は理解できると思います。

また、時節柄ということもあるでしょうが、病気の検査に関する説明にもかなりの分量が割かれています。本書中では「新型コロナウイルス」とか「PCR 検査」という言葉は使われていませんが、ある検査で陽性だった人が実際にその病気にかかっている確率を、その検査の感度と特異度を考慮して求める、という例題に基づいた説明があります。こういう問題を理解した人が増えると、闇雲に PCR 検査対象を広げることの害悪がもう少し世間でも認識されるのではないかと思います(もちろん、感染の疑いがある方や濃厚接触者の方などに対する検査体制は充実すべきだと思います)。

 

ちなみに PCR 検査の感度や特異度に関しては、下記のページに詳しい説明があります。

東京大学 保健・健康推進本部 保健センター Web サイト:
http://www.hc.u-tokyo.ac.jp/covid-19/tests/

 

著者の「数学ガール」シリーズは既に多数出版されていますが、自分が高校生くらいのときに、こういう本があったら良かったと思える本です。まだ本シリーズには微分方程式とかラプラス変換などを扱う本は無いようですが、もしそのような本が発行されたら、私の数学コンプレックスも少しは軽くなるかもしれません。今さらですが。

 

【書籍情報】

結城浩(2020)『数学ガールの秘密ノート/確率の冒険』SBクリエイティブ

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読書メモ『理論疫学者・西浦博の挑戦 新型コロナからいのちを守れ! 』(西浦博・川端裕人)

本書は、2020 年に発生した新型コロナウイルスのパンデミックに際して「8 割おじさん」として突如有名になった、京都大学の西浦博教授(当時は北海道大学教授)に、作家の川端裕人氏が数回に分けて実施した Zoom でのインタビューで聞き取りを行った内容をもとに書き起こされたものです。また最後に雑誌『中央公論』2020 年 12 月号に掲載された両名の対談記事が、加筆・再構成されて収録されています。

西浦先生はクラスター対策班の活動を中心に激務をこなされた上に、政府や自治体、一部の専門家、一般市民など各方面から名指しで批判されたり、脅迫や殺害予告を受けたりと、大変な思いをされています。そのような経験をしてもなお感染拡大防止に関する対策や研究に尽力され、さらにはこのような本を世に出して下さって、本当に有難いことだと思います。

本書では、2019 年 12 月の終わりに中国で新しい感染症が発生していることが分かった直後から、俗に専門家会議の「卒業論文」と呼ばれている資料が発表された 6 月 24 日までを中心に、西浦先生ご自身およびクラスター対策班や、専門家会議などの活動内容が詳細に綴られています。また、西浦先生から見えた範囲での政府や自治体の動き、政治家や官僚の言動などについても具体的に記述されています。国内で新型コロナウイルス感染者が発生して以来、政府や専門家会議からいろいろな情報やメッセージが発出され、また政府や自治体によって様々な施策が講じられてきましたが、それらの舞台裏がかなり具体的に明らかになっている貴重な本だと思います。

特に私の印象に残ったのは、3 月 30 日に東京都知事が記者会見で発表した、夜間の外出自粛の呼びかけに関するやりとりの場面です。3 月 24 日に西浦先生が都知事と面会して本件について進言した際、都知事や秘書などから「先生がこれを発表してくれますか?」と言われ、西浦先生はその場でこれを承諾します。しかし厚労省は、これを西浦先生が発表すると厚労省を代表して発言しているように伝わってしまうことを懸念して、これに待ったをかけ、発表の方法(どちらが発表するか)や表現などについて延々と都との間で調整(?)し、30 日にようやく都からの発表ということで決着します。この原因が両者の消極的な姿勢によるものなのか、法律や制度の不備などによって責任の所在が不明確だからなのか、私には分かりませんが、結果としては 5 日程度の時間を空費しているように思えます。現在でも政府と自治体との間で似たようなことが発生していると思われるシーンが度々見られますが、このような問題は当分解決することは無さそうです。

また、本書の中で西浦先生が比較的多くの分量を割いておられるテーマのひとつは、本件に関するリスクコミュニケーションの大切さや難しさだろうと思います。西浦先生はご自身がリスクコミュニケーションに関して失敗したと自省しておられると同時に、政府や自治体、専門家会議などにおけるリスクコミュニケーションに関する課題について問題提起されています。これについては、情報の出し方が改善されるべきであることはもちろんですが、コミュニケーションが情報の出し手と受け手との間での双方向のやりとりである以上、情報の受け手である私たち一般市民も改善していくべきことが、たくさんあるはずで、本書を読むことが、リスク情報の受け手として、より良いリスクコミュニケーションを目指す上でも大変役に立つのではないかと思います。少なくとも私自身にとっては大変勉強になりました。

 

なお、本書を知るきっかけとなったのは岩田健太郎先生のブログでした。本書が発行された直後にブログにて紹介してくださったおかげで、私も早い時期にこの本を読むことができ、大変感謝しています。

 

【書籍情報】

西浦博・川端裕人(2020)『理論疫学者・西浦博の挑戦 新型コロナからいのちを守れ! 』中央公論新社

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