《以下の内容は、あくまでも私の個人的な試行錯誤をまとめたものですので、他の方々にとって有用かどうかは不明です。本稿の内容を試行される場合は自己責任で行ってください。》
三年くらい前から吹き方がいろいろとおかしくなってしまい、一部の方々にはいろいろとご迷惑をおかけしてきました。特に最近は、唇まわりの震えと口角からの息漏れが収まらず、音階すら吹けないという状況が続いていたので、以前に施術していただいた品川の鍼の先生をダメ元で再訪しました。1/23(木)のことでした。
結果的には前回と同様、状況は改善されなかったのですが、そのときに先生から聞いた話が大きなヒントになりました。要約すると、歯ぐきが痩せた影響で息漏れがひどくなった人がいて、歯にアダプターをかませることで状況が改善したとの事でした。
文京区の歯科医のブログに、これに類似する例が掲載されています。
http://muse.air-nifty.com/weblog/
このブログ記事は以前から知っていましたが、どちらかというと歯並びの悪さを補うのが目的だと思っていたので、自分にはあまり関係ないものだと見なしていました。ところが改めて読み直しつつ、鍼の先生から伺った話と合わせて考えると、自分の問題とも無関係でないように思われました。
そこで、この際自分で作ってみるかと思いたち、早速ヨドバシでプラスチックねんどを購入。ある程度の試行錯誤が発生することを想定して 2 セット購入しましたが、ポイントが貯まっていたので実質ゼロ円でした。
最初のプロトタイプ
私の場合、歯並びが極端に悪いわけではないので、歯に被せるというよりは、歯茎と頬肉との間の隙間を埋めつつ、口角を塞ぐ形を考えてみました。どのくらいの大きさが良いか分からなかったので、3 組作って 1/25(土)に所属吹奏楽団の練習(Euphonium)で試してみました。
合奏中に取っ替え引っ替え試してみたところ、上の写真で一番上にあるもの(最も小さくて薄い)が好感触で、口角からの息漏れはかなり収まりましたが、それでも若干厚みがあったからかアンブシュアと干渉して若干吹きにくい感じがありました。そのため度々ミストーンが発生し、同パートの大先輩から「今日はずいぶん調子悪そうだな」と言われましたが、実は前週まではマトモに音が出てなかっただけで、この日は音が出るようになったためにミストーンが悪目立ちしたのでした。したがって本人的には前週よりよっぽど調子が良かったというか、合奏に参加できていた感じがありました。
このときの経験を踏まえて、アンブシュアに近いところが薄くなるよう追加試作し、1/28(火)のレッスン(Trombone)に持ち込んでみました。このとき持ち込んだ試作品はこちら。
吹きやすさや息漏れの量など、それぞれ状況が異なるのですが、先生によると、写真の右上にあるセットが最も音が良いと言われました。倍音を多く含む音になっているとのことでした。
しかしこれは個人的には失敗作で、顎を若干開いた状態に合わせて作ってしまったので、顎が動かしにくくて吹きにくいのです。
改良試作
この失敗を踏まえて、顎を若干閉じ気味にした状態に合わせて、さらに追加試作しました。プラスチックねんどはお湯で温めると柔らかくなり、成形した後に冷めると固まるものなので、明らかに失敗だったものは再利用できます。多少でも可能性のあるものは残し、見込みのないものはお湯に浸けて再成形して、下の写真のようなセットになりました。なお、これらのうち新しいのは上段の 2 組で、右側中段のものはレッスンで先生から音が良いと言われたので一応残したものです。
これらを 2/1(土)に所属吹奏楽団の練習(Euphonium)に持ち込んで再度テストしました。写真左上のセットはウォームアップの時点で既にボツにし、合奏では右上のセットを中心に何度か付け替えながら試しました。これらの中では右上のセットがベストでしたが、タンギングの音漏れが激減したので短い音を出せるようになった反面、高音域がかなり当たりにくくなったので、合奏への参加率は高くなったものの音楽的には惨敗でした。
ついでに言うと、久しぶりに頬の筋肉に疲れを感じました。前週までは頬が疲れるほど音を出せていなかったわけです。
改良試作 2
前述の惨敗のおかげで改良の方向性は見えてきました。アンブシュアに近いところをもっと薄くして、干渉を減らした方が良さそうに思えました。また高音域が出にくくなったのは、空気の通り道を塞ぎすぎた可能性があるので、先端を若干短めにしようと思いました。
全体的に薄く短くすると息漏れが増える可能性があるので、その分は奥歯側を厚めにして、息が奥歯の後ろから外に漏れるのを防ぐような形も良いかもしれないと考え、下の写真のような試作品群となりました。右側の上から 3 組が前回までに試作したもので、これら以外が今回新たに試作したものです。
これらを 2/4(火)のレッスン(Trombone)に持ち込み、先生に音を聴いていただきました。右側の上から 2 つめの組は、前回のレッスンで音が最も良いと言われたので一応リファレンスとして残してありますが、自分の中ではボツ確定となっています。レッスンの間にハサミで長さを調節しながら試したので、上の写真からは若干形が変わりましたが、このレッスンでは下の 3 つがベストであるように思われました。左側(白い方)は確定、右側(黒い方)はこれら 2 つで甲乙つけがたい感じでしたが、右側の方が息漏れが多いということもあり、まだ改良の余地があるように思えました。
改良試作 3
上の試作品の吹きにくさを軽減すべく、より薄くすることを狙って追加試作を行い、上の写真の試作品加えて下のような試作品を用意し、2/8(土)に所属吹奏楽団の練習(Euphonium)に臨みました。
下側の赤とピンクのものはウォームアップの段階で敗色濃厚でした。薄くした分だけ息漏れが増えた割には、奥歯側が大きすぎてアンブシュアを作る動作が妨げられる感じがしました。ハサミであちこちを切りながら試行錯誤しましたが好転せず、合奏では結局レッスンで好感触だった白黒の組み合わせを中心に試しました。
ところが合奏が始まってみると、レッスンのときの好感触が嘘のようで、なかなか思うように吹けずじまいでした。これが Trombone と Euphonium との違いによるものなのか、基礎練習と曲練習との違いによるものなのかは分かりませんでしたが、いずれにしても手も足も出ないまま合奏終了となりました。
実用化間近か
2/8(土)の合奏での惨敗を踏まえて考え方を変えることにしました。まず、ある程度の息漏れは許容することにしました。この日の合奏では全体的に息漏れが多かったものの、それなりに音は出ていたので、ねんど使用前と比べれば相当マシだと思えました。そこで現時点ではある程度の息漏れは許容し、今後の練習で頬の筋力がついたり吹き方が慣れてきたら息漏れが減るのではないかと期待することにしました。
また、息漏れを許容する前提で、アンブシュアへの干渉を極力減らすことを目指しました。そのために全体的に薄く小さくすることにしました。このような考え方でいくつか追加試作し、2/9(日)にカラオケボックスに全ての試作品を持ち込んで、ハサミで切ったり組み合わせを変えたりしながらベストな組み合わせを探しました。
結果的にベストとなったのが下の写真の組み合わせです。左側は今回新たに作ったもの、右側は前日の吹奏楽団の練習に持ち込んだものでした。
先日の合奏で練習した曲を少し吹いてみたところ、やはり若干のミストーンは発生しますが、合奏のときよりは吹きやすかったように思いました。
翌日(2/10(月))には急遽アンサンブルの練習に Baritone で参加することになったため、この組み合わせを試してみました。譜面自体の難易度がさほど高くなかったものの、イントネーションをはっきりさせられなかったり、音量のコントロールがうまくいかなかったりしましたが、そのへんは慣れでカバーできそうな感じもしました。
さらに 2/11(火)には再度カラオケボックスにて、Euphonium で練習に使ってみました。何年か前に安東京平先生にいただいた Warm up exercise も 8 割程度こなせるようになりましたが、まだリップスラーに難があります。所属吹奏楽団で練習している曲も、全ての曲から少しずつピックアップしてさらってみましたが、8 日の合奏に比べれば全然マシになりました。
これからどうするか
つい 2 週間ほど前までは音階すらまともに吹けなかったことを考えると、このような小細工で音階どころか Warm up exercise ができるようになったのは、劇的な変化だと言えます。しかし、色々試してみた経験を通して、やはり最終的には口の中に異物を入れずに吹けるようになることを目指すべきだということが明確になりました。
これまでは唇の震えや息漏れがひどくて基礎練習すら満足にできず、その結果として口の周りの筋力が落ち、さらに吹けなくなるという悪循環に陥っていたのではないかと思います(あくまでも推測です)。しかし小道具に頼れば基礎練習ができるようになったので、これからは小道具付きで基礎練習の時間を増やして筋力をつけられれば、震えや息漏れも軽減できるのではないかと期待しています。
唇まわりの震えがひどくなってきたときはフォーカルジストニアを疑いましたが(今でも疑いが晴れたわけではありませんが)、上の見立てが正しければ、ジストニアではなかったということで、自力で回復できる可能性が高くなってきたとも考えられます。この見立てが正しいかどうかが分かるまでには結構時間がかかると思いますが、医者に診てもらって何とかなるものでもなさそうなので、自分にできることを地道に続けていきたいと思います。
(余談)コレを何と呼ぶか
今回いろいろ製作してきた小道具を何と呼ぶか、まだ決めかねています。一般的には「マウスピース」と呼ばれることが多いと思いますが、我々にとって「マウスピース」とは楽器に付いている金属性の部品のことなので、この呼び方が使えません。前述の歯科医のブログに習うと「アダプター」ということになりますが、私が作ったものは形や用法が全然違います。もう少しいろいろ考えてみたいと思います。