安東京平先生の Euphonium レッスン受講(たぶん通算 6 回目かな?)

新型コロナウイルスのパンデミックによる最初の緊急事態宣言のときに、4 ヶ月ほど楽器を全く吹かない期間ができた影響で、吹き方がすっかりおかしくなってしまいました。

最初は唇の両脇から息が漏れるのがとても気になって、ああこれは単純に口の周りの筋肉が落ちたかなと思っていましたが、何度か合奏をやっていくうちに、コロナ前なら何も考えずに吹けていたような簡単なフレーズでミスしたり、大したことのない音域で倍音を外したりすることが多くて、かなり全体的に奏法を忘れてしまったか、バランスが大きく崩れてしまったなと思いました。どの楽器でも(Euphonium、Baritone、Trombone)同じようにダメなので、楽器のせいでないことは明らかでした。

これまでいろいろ対策を考えながら、いくつかの本番を何とかしのいで来ましたが、一向に好転しないので、仕事の方も含めてスケジュールが一段落したところで、安東京平先生にレッスンをお願いしました。

 

(写真はイメージです)

 

レッスンの最初にこれまでの状況を一通り説明した上で、楽器を吹いて奏法をチェックしてもらったところ、いろいろな筋肉が落ちていることと、逆に首の周りや胸のあたりに余計な力が入りすぎていることを指摘されました。

筋肉が落ちていることは予想通りだったのですが、余計な力が入りすぎていることに関しては自覚がありませんでした。先生の見立てでは、これまでは口の周りで適当にごまかしてた部分が、筋力が落ちたためにごまかせなくなり、それを無理に修正しようとして無意識のうちに余計な力が入るようになってしまったのではないか、ということでした。ここまでで今後の奏法改善に関する方向性が概ね決まりました。

  • コロナ前の吹き方を忘れたということは、コロナ前にあったと思われる変な癖も忘れたと考えて、良い機会だととらえ、息の流れを作り直す。
  • 落ちた筋力を鍛えることを目指すよりも、筋肉が落ちた状態でスムースに吹けるようになることを目指す。

 

(写真はイメージです)

 

レッスンの中でいろいろ試行しながら相談し、次のような練習をしばらく試してみることになりました(以下は私の現状に対していただいたアドバイスなので、他の方々に役立つとは限りません)。

  • 楽器の抵抗感を上回る圧力で吹き込まないようにする。目安としては、音を鳴らさずに息だけを吹き込んだときの音に、高めの風切り音が含まれていたときは、息の圧力が楽器の抵抗感を上回っていると思われる。
  • ウォームアップのときに、これから吹こうとする楽器で出す音をイメージしながら息を吐く練習をすると良いかもしれない。そのときに前述の抵抗感を確認しながら、音を出す練習と息を吐く練習とを交互に繰り返す。
  • 楽器がないときは、4 拍くらいかけて息をゆっくり吸って、息をゆっくり一定の圧力で吐く練習をする。そのときに胸から上の力を抜き、息の圧力はアパーチュアと腹筋だけでコントロールする。
  • これは膨らました風船がしぼんでいくイメージ。風船がしぼんでいくときに、風船に力をかけて潰そうとするのではなく、しぼむ速さは口の開け閉めだけで調節する(これがアパーチュアに相当)。
  • マウスピースに頼らずに安定した buzzing ができるように練習する(リムのみの使用は可)。このとき、アンブシュアを変えずに安定して鳴らせる音域を少しずつ広げられるように練習する。
  • 楽器を鳴らすときと、buzzing するとき、声で歌うとき、単に息を吐くときとの間で、息の出方(そのときの体の使い方)が一致することを目指す。

レッスン前は、どちらかというと筋力を鍛える方向を目指すべきかと考えていたので、ある意味で真逆になったのは意外でしたし、行動に移す前に先生に見てもらって良かったと思いました。

もともとオーバーブロウ(やたらと息を吹き込む割には効率よく音量が上がらない)になりがちな癖もあったので、この方向で練習を続けていけば、そのような癖も軽減されるかもしれません。

しばらく時間はかかりますが、何とか立て直していきたいと思います。




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合奏専用眼鏡を投入

乱視プラス老眼のため、約 5 年前にデスクワーク用の中近両用4 年前に日常生活用の遠近両用眼鏡を作ってもらって以来、すっかり眼鏡オヤジが定着してきましたが、実は楽器を演奏するときの眼鏡選びにはずっと答えが見つかっていませんでした

どうしても楽器を演奏するときに、顔の角度がある程度動くんですよね。

もともと顔が若干下向きになる癖があるので、眼鏡をかけると指揮者がちょうど上側のフレームと重なって見にくくなります。それを防ぐために Euphonium や Baritone を吹くときには楽器と体の間にクッションを入れて、顔が少し上を向くように矯正しようとしたのですが、やはり演奏上あまり良くなさそうだという結論に落ち着きました。

また、楽譜の中で読みたいところが、ちょうど眼鏡の下側の老眼対策ゾーンに重なると、かなりぼやけてしまって、小さめの楽譜だとたまに読み間違えるようになりました。

3 年近く前には「演奏用に新しく眼鏡を作るのもちょっとやり過ぎな感じもします」などと思っていたのですが、乱視が進行したのか老眼が進行したのか(もしくは両方か)、最近特に楽譜の見間違えによるミスが増えてきました(もちろん楽譜以外の理由による凡ミスもあります)。そこで思い切って合奏専用眼鏡を作ることにしました。

楽譜を持って眼鏡屋に行き、合奏のときの譜面台の場所を想定して楽譜を置いた状態で乱視矯正が最適になるように調整してもらい、老眼対策は捨てて乱視対策一本にしました。

フレームについてはアンダーリムのものもいくつか試しましたが、結局のところ今回選んだ丸形のものの方が、縦方向の視界が広いようでした。丸眼鏡というと古臭い印象になるかと思いましたが、こちらはデザインのせいか色のおかげか、さほど古臭い感じはしないと思いました(まあ主観ですが)。

 

これまで作ってもらったときはもっと納期が長かったので、今回もそれなりに時間がかかると覚悟していましたが、今回は遠近両用や中近両用ではないので時間がかからないらしく、超短納期でした。

眼鏡屋に行ったのは水曜日でしたが、金曜日には仕上がるとの事だったので、宅急便での配達をお願いし、土曜日の午前中に届きました。

こんな写真では伝わらないと思いますが、エアキャップを止めるテープを切るのがもったいないくらい、とても丁寧に梱包されて届きました。結局切りましたけどね。

 

午後から吹奏楽団の練習だったので、早速実戦投入しました。

期待どおり、顔の角度が多少変わっても、楽譜全体がはっきり見えます。逆に、楽譜以外はほとんど全て、少しボケて見えます。くっきり見えるのは一列前の人くらいまででしょうか。これは想定していたとおりです。

当然ながら指揮者の顔もあまりはっきり見えません(表情くらいは分かります)。指揮者の先生方には申し訳ありませんが、先生方の顔がはっきり見えることはあまり重要ではないので、良しとします。

 

今日の合奏全体を通して、楽譜が見にくいということは全くありませんでした。なかなか良さげなので、ブラスバンドやオーケストラでも早く試してみたいところです。

眼鏡の選択肢が増えると、人生がさらに楽しくなりますね。



佐藤采香さんの音が沁みる『軒下ランプ』

佐藤采香さんの演奏は数年前にどこかの楽器屋のホールで聴かせていただいたことがあって、しっかり芯があるのに柔らかい音色が印象的だったことを覚えていました。

そんな佐藤采香さんの 2 枚目のアルバムを密林で昨年予約したところ昨日届いたので、早速聴いてみました。

今や世界的に CD よりも圧倒的にダウンロード販売が多くなっていて、CD の方が多く売れているのは日本くらいだ、という話を随分前から聞くようになりましたが、こういうデザインや装丁だと、やっぱり CD 買ってよかったと思いますね。収録されている解説も佐藤采香さんご自身によるもので、情報量も多く読み応えがあります。

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アルバム冒頭に収められているタイトル曲の「軒下ランプ」は、とても叙情的でいい曲だと思いました。佐藤采香さんの音色の暖かみもランプっぽい感じがして、曲のイメージとよく合ってるように思います。他の(特に外国の)方々の演奏も聴いてみたいと思える曲でした。

この CD で最も驚いたのは Bach の Partita でした。まるで Bach が Euphonium のために作曲したかのように、自然に音楽が流れてくる感じがしました。Beethoven や Mendelssohn も、「チェロのための曲を頑張ってユーフォでやってみました!」という感じが全く無く、余計なことを一切考えずに曲の良さを味わえる感じです。

私はこのような古い時代の曲は Euphonium には向かない(似合わない)と勝手に思っていたのですが、いかに自分が浅はかだったか思い知らされ、反省しました。

Waespi のコンチェルトでは Bach の時とは対象的にアグレッシブな演奏が聴けます。長いカデンツァも含めて聴いている方もアドレナリン高めになる曲で、リサイタルで生の迫力を味わってみたいと感じました。最後は「え?」と思うような意外な終わり方で、演奏が終わった瞬間にドヤ顔になっている姿を想像しました。

最後に収録されている Sparke の Song for Ina は、無理だとは知りつつ自分もこういう風に吹きたいと心底から思える演奏でした。この曲はこれまでいろいろな方々の演奏を聴いてきましたが、それらの中で最も優しさが深い演奏だと感じました。清水初海さんのピアノがまた優しくて、アルバムの最後に気持ちいい余韻が残ります。

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軒下ランプ/佐藤采香・清水初海




緊急事態宣言後初の Euphonium 練習

新型コロナウイルスの影響で練習場所が使えなくなって以来、しばらく練習から遠ざかっておりましたが、楽団役員の皆様の尽力のおかげで、ようやく条件付きで練習できる場所が確保できたので、久しぶりに所属楽団の練習で Euphonium を吹くことができました。

最後の練習がいつだったのか記憶が曖昧ですが、おそらく 4 ヶ月ぶりくらいだと思います。

今住んでいる場所が室内練習不可(サイレントブラスをつけても NG)だったので、せめてマウスピースでのバズィングくらいやっておけば良かったのですが、仕事など諸々慌ただしかったり、モチベーションがイマイチだったり、もともと地道に基礎練習するのが苦手だったり、様々な理由が重なって、結局何もやらずじまいでした。

(要するにやる気にならなかったってことだな。)

せめてメカ的なトラブルだけは無いようにしたかったので、楽器の丸洗いだけはやりましたが、それ以外は本当にほぼ 4 ヶ月何もしないというブランクを経験したので、音も出ないんじゃないかと思いました。

 

練習会場に着いて、従来どおり発声練習 –> バズィング –> Eb のロングトーンという入り口のルーティンをやってみたところ、意外といつもの感じで楽器が鳴ったように思います。そこから少しずつ音域を広げたり、ゆっくりリップスラーを入れたり、という感じで探りながら吹いて見ましたが、楽器の鳴り方は覚悟してたほどひどくはなかったなという印象でした。

ただ、やはり頬の筋肉が落ちているのか、音が持続しない感じで不安定でした。高音域も一発なら当たりますが、ロングトーンにすると音色や音程がぶれていきます。これはしばらく時間をかけてリハビリするつもりで取り組む必要がありそうです。

 

余談ですが、あまりに久しぶりに楽器を吹いたので、クッションをどこにつけていたか全く思い出せなくなりました。これは本来 U 字管の下に付けて腿と楽器の隙間を埋めるものですが、私は楽器と腹(または胸)との間に入れて、顔と楽器との角度を調節しやすくしています(トリガーを引いたときにチューニング管が腹にあたらないようにするためでもあります)。

以前はちょうどいい角度になるポジションを見つけてあったのですが、今日はそれがどうしても思い出せず、しかも顔の角度もよく分からなくなっていたので、あれこれ探っているうちに練習時間が終わってしまいました。

まあ、これから改めて探っていきたいと思います。




Adam Frey 先生の Master Class と Focus Class 受講

昨晩は International Euphonium Tuba Festival 2020 の最終日でしたが、昼間に行われた外囿祥一郎先生のスペシャルクラスには所用のため参加できず、日本時間で深夜 0:00 から行われた Adam Frey 先生の Master Class を聴講しました。

Adam 先生のレッスンで面白かったのは、Audacity を使って自分自身や受講者の演奏を録音し、その波形を説明に使っていたことでした。

上の画像は Adam 先生自身が演奏した音の波形ですが、このときはこの画像を使って音が減衰する様子を説明していました。受講者の演奏では音の終わり方がブツっと切れるような感じになっていたのですが、そのような違いが目で見て分かるように示すというのが新鮮でした。

このような方法を使うことには賛否両論あるかもしれませんが、アコースティックな楽器のレッスンにおける IT の使い方として面白いと思いました。

続いて深夜 2:00 からは Focus Class で、2 つのセッションがありましたが、私は Adam Frey、James Gourlay、Aaron Tindall という 3 人の講師による「Instrument Doubling」というセッションを選んで受講しました。これは複数の楽器を掛け持ちすることに関する議論で、3 人とも Euphonium と Tuba との両方を、また Adam 先生に関しては Bass Trumpet や Tenor Horn なども含めて演奏してきた経験をもとに、様々な議論がありました。

受講者にはプロを目指している方も多かったと思われるので、複数の楽器ができたほうが将来のキャリアに有利かどうかという観点もあり、自分には関係ないものの興味深い話題でした。

私から Trombone と Euphonium との間でスムースに切り替えるコツはあるかと質問させていただいたところ、できればマウスピースのリムを同じものに揃えることと、リムが同じだとしても音のコンセプトが全く違うことをしっかり意識すること、という回答がありました。いずれも私自身が既に実践している事ではありましたが、プロの方々から同じ見解をいただけたことで自分の実践が裏付けられ、確信が深まって良かったと思います。

今日でイベントの全日程を終了しました。深夜ということもあって、参加できたセッションも限定的でしたが、ここでしか得られなかったと思われるものも多く、私にとっては実りの多いイベントだったと思います。

なお、今回は特別に日本人向けに、日本で参加しやすい時間帯の、日本語字幕や通訳付きのプログラムも用意されたのですが、そちらの方は三浦徹先生のセッションしか参加できませんでした。逆に、米国時間で行われたセッションでは、私が参加したセッションにおいて日本人と思われる名前の参加者はほとんどいませんでした(たまに 1 〜 2 名見た程度)。今回は日本からも 30 人くらい参加されたというような話を聞きましたが、多くの方々は日本人向けプログラムに集中されたのかもしれません。もしくは、深夜のプログラムに関しては後で YouTube にアップロードされるのを見れば十分と思われたのかもしれません。個人的には、こういう場に積極的に参加する日本人がもっと増えると良いなぁと思うのですが、当分はまだ難しいですかね……。

Jason Casanova 先生のフレージング講座メモ

昨晩は International Euphonium Tuba Festival 2020 の中で Jason Casanova 先生による「Phrasing and Expressive Playing」講座を選んで受講してみました。

まず前半の 30 分は、事前に収録されたレクチャー動画を YouTube で視聴し、そのあとで Zoom での質疑応答に移りました。

レクチャー動画ではまず「Merriam-Webster(有名な英語辞書)で “phrase” がどう説明されているか」という、とても基本的なところから始まりました(phrase には名詞と動詞の両方の意味がありますが、ここでは動詞の方)。

次に、「Hey Mom, could I please borrow 20 Dolores to go to the mall?」と言うときに、どの単語を強調したらママのリアクションがどのように変わるか、というたとえ話を使って、フレージングの意味や重要性を説明してくださいました。ユニークでとても分かりやすい説明でした。

このような基礎の説明に続いて、Joannes Rochut の Melodious Etudes から No. 4 を題材にして、フレージングを 4 通りくらい変えて実演して下さいました。これに関しては「どれが正解という事はない」と強調されていましたが、フレージングを変えることでいかに印象が変わるのかが、とても分かりやすい実演でした。

Melodious Etudes は自分自身も取り組んでいた時期がありましたが、先日は三浦徹先生も米国留学中に Melodious Etudes に出会ったという話をされていましたし、やはり誰もが取り組む教則本なんだな、ということを再認識したので、近いうちにあらためて引っ張り出してやってみたいと思います。沢野先生の伴奏音源も持ってることだし。

三浦徹先生からあらためて刺激をいただいた

連日 International Euphonium Tuba Festival 2020 に参加して寝不足な日々が続いております。もちろん全てを聴講している訳ではないのですが、面白そうなセッションが深夜 2 時とか 3 時からというのが多いので、なかなか辛いものがあります。

しかしながら日本人向けに早めの時間帯のプログラムも一部用意されており、昨日は 18:00 からの安東京平先生のマスタークラスの後、21:00 から三浦徹先生を迎えての Legends Talk セッションがありました(内容も全て日本語)。

日本の Euphonium 奏者の道を開拓してこられたと言っても過言ではない三浦先生が、米国留学などを通じてどのように学んでこられたのか、ご本人からお伺いできたのは大変貴重な機会であったと思います。

セッションの最後の方では、Zoom 越しではありますが、短時間ながら直接お話させていただくこともでき、大変光栄でした(実は中学生の時に一度だけ会話させていただく機会があったので、これが二度目でした)。Euphonium を長く続ける秘訣について質問をさせていただき、貴重な示唆をいただくと同時に、大変刺激を受け、自分自身も決意を新たにしました。

管楽器のオンラインレッスンは意外とアリかもしれないと思った

今日は International Euphonium Tuba Festival 2020安東京平先生のマスタークラスを聴講しました。Zoom 越しで音色もずいぶん変わると思いますので、私自身はオンラインでのレッスンには懐疑的だったのですが、昨日の David Childs と、今日の安東京平先生のレッスンを聴講してみて、これはこれで意外とアリだなと思いました。

受講者は恐らくスマートフォンなどで参加されていると思いますので、音量の調節があまりうまくいってなかったり、音が割れたりすることも多いのですが、ちゃんと楽器が鳴ってる時と鳴ってないときの違いや、イントネーションの良し悪しなどは意外とはっきり分かりました。他の方の音に関してこういう言い方もナニなのですが、今回聴講してみて、自分の音がどのように先生に届くかが何となく想像できたので、マイク越し Zoom 越しでも、自分のまずいところはちゃんと指摘してもらえそうな感じがしました。

今のところレッスンなど受講する予定はありませんが、今後そのような必要性が生じたときには、有効な選択肢として考えたいと思います。

Euphonium Legends Talk

昨晩(というか早朝)3 時から、現在開催中の International Euphonium Tuba Festival 2020 のプログラムの一つとして開催された、Brian Bowman 博士、Robert Childs 博士、そして三浦徹先生という 3 人による Legends Talk を視聴しました。最高でした。

肖像権などいろいろあると思いますので、スクリーンショットの掲載は自粛しますが、私が中学生の時に Euphonium を初めたときには既に日本を代表する奏者として活躍しておられた 3 人が Zoom で一堂に会するという現場に、ネット経由とはいえ立ち会うことができました。本当に得難い経験をさせていただきました。

皆さんそれぞれご自分の経験や当時の音楽界の状況などを語ってくださいました。特に三浦先生が、日本の音楽大学に Euphonium の先生がいない時代に、三浦先生が Raymond G. Young のレコードを聴いて(よくそんなレコードが日本にあったなと思いましたが)感動し、秋山和慶先生に紹介状を書いてもらってアメリカに留学したという経緯を語ってくださったのが印象的でした。

こういう方々の活躍のおかげで現在の自分が音楽を楽しむ環境ができているという、先人のありがたさを再認識できた、貴重な時間でもありました。

音楽の現場におけるコロナウイルス感染に関するリスクアセスメント結果の要点(フライブルク音楽医療研究所の論文から)

以下に記述する内容は、フライブルク音楽医学研究所(注 1)の Claudia Spahn 教授らが発表した論文『RISK ASSESSMENT OF A CORONAVIRUS INFECTION IN THE FIELD OF MUSIC』(5 月 19 日改訂版)の英訳版(注 2)から、自分が関心のある場所をピックアップしたものです。

自分自身の作業時間や英語力との兼ね合いと、原著者の翻訳権の観点から、全訳は行わず、自分自身の活動と関連が深い部分のみ、スピード重視で要約と意訳を行っています。したがって正確さについては責任を持てませんのでご了承ください。

Introduction (まえがき)

この論文は、感染拡大防止に関する政府や保健当局などによる規則は全ての音楽家に適用されるという前提で、音楽の現場における判断のための、より具体的な情報やガイダンスを提供するために書かれている。(3 ページ)

この論文には、2020 年 5 月 5 日にバンベルク交響楽団によって行われた実験(注 3)を元にした研究の結果が含まれている。この実験における計測はTintschl BioEnergie- および Strömungstechnik AG といった企業に委託された。(4 ページ)

1. Transmission Pathways of SARS-CoV-2 (SARS-CoV-2 の感染経路)

これまでの研究から、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は飛沫(droplet)またはエアロゾル(aerosols)を通じて感染しうることが知られている。接触感染も起こりうる。ロベルト・コッホ研究所の研究では、コロナウイルスの RNA を含むエアロゾルが、感染者が吐いた息のサンプルか、感染者がいた部屋の空気から検出されている。また、唾液や気道内分泌液(respiratory secretions)も感染の媒体となる可能性がある。(8 ページ)

2. Specific Risk Aspects in the Field of Music (音楽の現場における具体的なリスクの観点)

2.1 Systemic Possibilities for Risk Reduction in the Field of Music (音楽の現場におけるリスク低減のための体系的な可能性)

b.) Parameters of Room & Space / Air & Ventilation / Duration (部屋・空間、空気・換気、時間のパラメーター)

これまでの疫学的知見から、部屋、空調、および人の集団にさらされている時間の長さが、感染リスクに対して決定的な(decisive)影響があると考えられている。(12 〜 13 ページ)

歌や演奏が閉じた空間で行われる場合、定期的かつ徹底的な(thorough)換気が、リスク低減の重要なファクターとなるようである。空調装置による換気は、エアロゾルからの感染リスクを減らすと推測される。(13 ページ)

エアロゾルは、たとえ窓が閉まっていても、おおよそ換気回数(注 4)0.5 〜 2/h 程度の自然換気によって除去される。例えばコンサートホールなどの空調装置(HVAC)については、換気回数はおおむね 4 〜 8/h である(注 5)。(13 〜 14 ページ)

リハーサルを短時間(例えば 15 分程度)(注 6)にし、換気のための休憩を入れることは、恐らくリスクを低減させる。(14 ページ)

2.2 Vocal and Instrument-specific Risk Assessment (歌唱および楽器に特化したリスクアセスメント)

2.2.1 Vocal (歌唱)

一般に、飛沫はサイズが大きいので最大でも 1m 以上飛ばずに落ちる。これが日常生活において最低 1.5m 離れろというルールの根拠になっている。声に関する生理学的知見から、発声によってこれを超える空気の動きは起こらないと考えられている。これは最近バンベルク交響楽団で実施された計測でも確認された。破裂音や摩擦音のような子音を伴う強いアーティキュレーションにおいて、わずかな乱気流は見られたが、歌手から 2m 離れた場所では空気の動きは検出されなかった。したがって強いアーティキュレーションであっても、2m 離れれば飛沫感染を防止できると考えられる(注 7)。(16 ページ)

今のところ、歌唱中のエアロゾルに関する科学的研究は行われていないが、基本的に、休んでいる時や話す時と同様に、歌唱によってウイルスを運ぶエアロゾルが生成されると想定すべきである。歌うときに息を深く吸うことによって感染リスクがどのくらい高まるかは、まだ科学的に調査されていない。(17 ページ)

いくつかの異なる合唱団で、リハーサルや宗教的行事の後に新型コロナウイルスの感染が何度か報告されている。これらの例でエアロゾル感染が疑われているが、他のファクターが影響している可能性もある。(19 〜 20 ページ)

とても広い部屋を使うか、こまめな換気を行うこと、適切な空調を用いることが、エアロゾル感染のリスクを低減するために重要である。リハーサルは 15 分以内に区切って、休憩時間に換気を行うことも、リスク低減につながる。飛沫感染をなくすために、ソーシャルディスタンスを保つルールを合唱においても守り、休憩時間にはフェイスマスクを付けるべきである。休憩時間においても、手の接触や、楽譜の配布などにおける接触を避けるよう注意すべきである。(20 ページ)

2.2.2 Wind Instrument Playing (管楽器の演奏)

フルートを除けば、唇やリードの振動で音を発生させるため、歌唱に比べると単位時間あたりに吐出される空気の量は少ない。バンベルク交響楽団における最新の計測もこれを裏付けている。(22 ページ)

金管楽器およびリードを使う木管楽器では、口と楽器との間から空気が漏れないため、演奏による直接的な飛沫感染は発生しない。(22 ページ)

フルートでは、空気が演奏者の口から環境へ直接吐き出されるため、飛沫が飛ぶ可能性があるが、バンベルク交響楽団における計測では、2m 離れた場所で空気の動きが検出されなかったので、これだけ離れていれば飛沫感染が発生する可能性はとても少ない。(23 ページ)

管楽器の内側では呼気が凝結して水になるため、呼気に含まれるエアロゾルはかなり減少する。感染者の楽器のウォーターキイから排出される水には、ウイルスが含まれている可能性がある。ただしこの水にどのくらいの量のウイルスが含まれるかは計測されていない。(23 ページ)

物理的な推測として、管楽器の内側にエアロゾルの粒子が付着することによって、環境に排出されるエアロゾルを減少させるフィルターの役割を果たす可能性があるが、その効果は計測されていない。(24 ページ)

明確な証拠がない限りは、透明な保護具や密に織られた絹布を金管楽器のベルの前に置くことを推奨する意見もある。木管楽器のベルを覆うような方法は、途中のキーホールから空気が漏れることから、効果的ではない。(24 ページ)

演奏者が息を深く吸うことによって感染リスクがどのくらい高まるかは、まだ科学的に調査されていない。(24ページ)

我々の知る限り、管楽器の演奏による呼気中のウイルス濃度を計測した例はない。また、管楽器の中を通ることによってウイルスがどのくらい減るかも分かっていない。(25 ページ)

最新の計測結果から、我々が 4 月 25 日に示した最初のリスクアセスメントで述べたような 3 〜 5m という距離をとることは不要であり、最小の距離としては 2m で十分であると考えられる。この距離が守られれば、飛沫感染が発生する可能性は非常に低い。(25 ページ)

管楽器の中に溜まった水を捨てるときは、床に落とさず、容器に集めるか紙に吸収させることを推奨する。楽器の中をクリアにするために息を吹き込むべきではない。(25 ページ)

管楽器の中に溜まった水に触れる場合や、ホルンなどで管楽器の内側に触れる場合は、手を清潔に保つよう、石鹸を使って 30 秒以上手を洗うなど、特に注意が必要である。(25 〜 26 ページ)

2.2.3 Other Instruments (その他の楽器)

鍵盤楽器を演奏する場合は、演奏前に必ず(石鹸を使って、必要に応じて消毒液を使って)手を少なくとも 30 秒洗わなければならない。加えて、鍵盤も演奏前後にクリーニングクロスを使って消毒すべきである。(28 ページ)

弦楽器や打楽器も含めて楽器の受け渡しや共有は避けるべきである。(29 ページ)

アンサンブルなどで管楽器を演奏しない音楽家は、エアロゾル感染のリスクを低減するために、フェイスマスクなどを装着すべきである。(29 ページ)

3. Risk Management (リスクマネジメント)

効果的なリスクマネジメントは通常、結果が生じる可能性に関する詳細なリスク分析と、リスク低減のための手法の効果に関する知識を必要とするが、新型コロナウイルスの感染に関しては不明な点が多いため、現時点ではリスクマネジメントは未知数の多い方程式となっている。これらの未知数によって、ゴールに対する期待の違い(感染者率 vs. 音楽文化の維持)や個人の態度の違い(リスクを犯すか、リスクを避けるか)が生まれる余地ができている。全ての個人が、自分がどの程度リスクを犯すかを自分自身で決める権利を持つべきである。我々は科学者として、これらの未知数をできるだけ既知の変数に変えていく手助けをしたい。(32 ページ)

現時点では科学的に確認された知見が不十分なため、我々はリスクを過小評価するのではなく、過大評価する方向に間違えなければならない。この方法で、リスク低減策を組み合わせることによって、総合的な感染リスクを可能な限り小さくできる。しかしながら、「ALARP」の原則(As Low as Reasonably Practicable :合理的かつ実行可能である限り低く)によって、定量化できない残余リスクが存在し得ることを明確に指摘しなければならない。

以上

【注釈】

  1. Freiburger Institut für Musikermedizin https://www.uniklinik-freiburg.de/musikermedizin.html
  2. Spahn, C. & Richter, B. (2020). RISK ASSESSMENT OF A CORONAVIRUS INFECTION IN THE FIELD OF MUSIC. (Swope, S. & Moss, K., Trans.). Retrieved June 13, 2020 from The Hochschule für Musik Freiburg website: https://www.mh-freiburg.de/fileadmin/Downloads/Allgemeines/engl._Risk_AssessmentCoronaMusicSpahnRichter19.5.2020.pdf
  3. Bamberger Symphoniker: Wissenschaftler messen Aerosolausstoß: https://www.br.de/nachrichten/bayern/bamberger-symphoniker-wissenschaftler-messen-aerosolausstoss,Ry6T6OU?UTM_Name=Web-Share&UTM_Source=Link&UTM_Medium=Link&fbclid=IwAR3lagiezP-3hkxx8Y27PCrkK6Qxtsv-gTUKR0z_E1ONIQ41ess8ZwjP2iY
  4. 「換気回数」とは、自然換気や空調などによる 1 時間あたりの空気の流入量(体積)を、その部屋の容積で割った値です。1 時間の間に換気を行う回数だと誤解されることがあるのでご注意下さい。
  5. この部分に関しては「vis」をどう訳していいか分からず、訳にイマイチ自信がありません。原文は次のようになっています。「Aerosols are removed by way of natural ventilation vis the exchange of air in the range of approx. 0.5–2/h even with closed windows; for HVAC, e.g., in concert halls or performance halls, the air exchange rate is approx. 4-8/h」
  6. 時間に関してはロベルト・コッホ研究所から 4 月 16 日に発表された論文に記述があるようですが、まだ読んでいません。…..っていうかドイツ語なので(以下略)。
  7. 4 月 25 日に公開された前版においては 3 〜 5m 程度離れることを推奨していましたが、現在はそこまでは必要ないとの結論に達しています。

 


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公的ガイドライン

 

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論文や報告書

 

実験など

 

解説記事

  • 日経ビジネス『緊急事態宣言解除「現状で確実に言えること」を専門家に聞く – 分子ウイルス学、免疫学研究者・峰宗太郎氏インタビュー(その1)』(山中 浩之)(2020/05/27)
    https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00164/052600001/
  • 日経ビジネス『専門家に根掘り葉掘り!新型コロナの薬・ワクチン・検査 – 分子ウイルス学、免疫学研究者・峰宗太郎氏インタビュー(その2)』(山中 浩之)(2020/05/28)
    https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00164/052700002/
  • 日経ビジネス『神風は吹かない、でも日本は負けないよ – 分子ウイルス学、免疫学研究者・峰宗太郎氏インタビュー(その3)』(山中 浩之)(2020/05/29)
    https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00164/052800003/