安東京平先生のレッスン受講(4 回目)

年明けから金管バンドに Baritone で参加しているので、今回のレッスンは Baritone でお願いした。今回の問題意識は二つあった。

  • そもそも金管バンドにおける Baritone にどういう音色が求められているのか知らないし、吹いている本人としてはどんな音が出ているのか分からないので、音色に関するフィードバックを欲しい。
  • 自分の周り 360° で「ブラスバンドには Denis Wick だ」という意見が支配的なので、まずは先人の教えに従って Denis Wick の SM6B を調達したが、正直吹きにくい。本当に Denis Wick がいいのか(そんなに音色が違うのか)確認したい。

自分自身が持ち込んだ細管用マウスピースは Bach 6-1/2AL (これの方が特に高音域で吹きやすい)、それに安東先生がお持ちの Tilz の 7C とヤマハの 48 を使っていろいろ試してみたところ、結論としては Denis Wick を使い続けるのが良さそう、ということになった。

自分自身が Denis Wick で吹きにくいと感じる最大の理由は、高音域で息が入りにくくなり、音が細くなってしまうこと。かつて Euphonium で Denis Wick (買った楽器に付属していた 4AL)を使っていた時も同じような問題があって、Denis Wick に相性の悪さというか苦手意識を持っていた(当時はマウスピースを他社のに替えてあっさり解決した)。今回もソレかなぁ、というのがレッスン前の認識だった。

先生といろいろ相談しながらいろいろ試してみて、また先生にも吹いてみていただいて分かったのは、高音域にいくときにアパーチュアが狭くなりすぎているのではないか、という事だった。そこで、アパーチュアを変えないように意識しながら、息の量を(感覚的には倍ぐらいに)増やして高音域を出してみると、音が細くならなくなった。音色や響きも悪くなさそう。

ちょうど当日の午前中に練習で使った Highland Cathedral の旋律を使って、前述の吹き方を試してみた。Bb –> F と上に跳躍するときに、とにかく頑なにアパーチュアを変えず、F に息を倍ぐらい突っ込むつもりで吹いてみたところ、F だけ音量が出過ぎてる(うるさくなってる)ように感じた。ところが、これは吹いている本人がベルの裏側から出ている音を聴いた時の感覚であって、離れている聴き手(今回は安東先生)にはそこまでうるさく聴こえておらず、むしろ旋律の流れの中で自然にウエイトが乗ってる程度だったようだ。ちなみに同じ吹き方を他のマウスピースで試すと、音が暴れる感じがした。恐らく Denis Wick のマウスピースがうまく吸収してくれているのだと思う。

高音域だけでなく他のフレーズもいろいろ試してみたが、他のマウスピースだと発音が汚くなりそうなところも、Denis Wick だと安定している。安東先生も実際に Denis Wick でいろいろ吹いてみた感想として、他のに比べて細かいパッセージを吹く時も安心感があるとおっしゃっていた。

おそらく、Denis Wick は他のマウスピースよりも懐が深くて、私ごときが少々息を多く入れすぎても音が暴れないのだろうと思う(プロがやったら別だが)。逆に高音域では、サボらずに息を供給し続けないと、音がすぐショボくなる。Denis Wick はそういうものだという前提で使わなければいけないらしい。

そういう訳で今回の結論は、「Denis Wick のマウスピースで高音域を吹くときはアパーチュアを狭くしないで息をガッツリ突っ込む」ということ。

今までは、高音域が出にくい –> アパーチュアを狭くする –> 息が入りにくくなる –> 音がショボくなる –> これじゃイカンと思って息を入れようとする –> さらにアパーチュアが狭くなる –> … という悪循環に、無意識のうちにハマっていたらしい(自分で意識してアパーチュアを狭くしていた訳ではない)。この悪循環から抜け出そうと思ったら、アパーチュアを変えないことをしっかり意識して、息を突っ込むことが必要なのだろうと思う。

この辺が分かって高音域が問題なくなれば、全体的に Denis Wick の方が、他のマウスピースよりも音色も発音も安定しているので、これを使った方が良さそうだということになった。これでマウスピースに関する迷いがひとつ消えた。

もし一人で試行錯誤していたら数ヶ月かかったかも知れないが、安東先生のおかげで一時間弱で方向性が見えた。このタイミングで相談できて本当に良かったと思う。

余談だが、きっと Euphonium で Denis Wick が苦手だったのも、これが分かっていたら克服できたのかも知れない。まあ今さらですが。

反省会(前職会社オケ 2017.2.12)

今回も課題や不安材料はいろいろあったが、本番にギリギリ間に合った感じで、どこまで夏休みの宿題体質なのかと思う。

  • カルメンで超目立つ凡ミス一発やらかした。大変申し訳ありませんでした。練習では一度も間違えなかった場所。今回も本番の魔物はいた。
  • マウスピース選びで迷いがあった。性格の違う二曲を練習している中で、なかなかしっくり来なくて、二種類のマウスピースを取っ替え引っ替え試していたが、前日練習でもともと使っていたマウスピース一本に絞ってみたら、両方の曲ともこれ一本で行けるようになってた。あの回り道は何だったのかと思うくらい。ずいぶん前に「もうマウスピースでは迷わない」って書いた気がするんだが、今度こそもう迷わない。
  • 「発音のときに眉毛を上げると上手くいく」という経験則をずいぶん前から知っていたのに、今回は全然使ってなかったということを不意に思い出し、音の出だしで緊張する場面では意識的に(大げさに)眉毛をあげたら、全体的にうまくいった。リハーサルが終わったらあちこちに眉毛上げマークを書き込みまくり、全体的にミストーンの不安を減らして本番に臨むことができた。

  • ブラームスの交響曲第三番の第四楽章で最初の出番(Eb のユニゾン)は、前日の合奏で指揮者から急に要求が増えて戸惑った。当日リハーサルではビビりすぎてショボい音しか出ず、もう一回やってほしいとお願いしたいくらいだった。しかし本番では前述の眉毛上げで無事クリア。吹いた感じは悪くなかったので、後日録音で確認したい。
  • アンコールの Farandole では後半部分だけマウスピースを小さめのに替えてもなお、高音域に手こずった。練習ではなかなか音が当たらず困ったが、A のポジションを少し高めに修正したらかなり打率が上がった。これに気付いたのが本番前日。当日午前中のリハーサルでは前述の眉毛上げと併用してうまくいくことを再確認した。完璧ではなかったが本番が一番うまくいったと思う。あとは客席にちゃんと聴こえてたかどうか、録音が届いたら確認したい。
  • 東京芸術劇場のホールは吹いてて気持ちよかった。リハーサルで観客席が空のとき、どの曲の時だったか忘れたが金管の残響がとてもきれいに響いて嬉しかった。本番で観客席が埋まった状態でも、自分の音が適度に返ってくる感じ。気持ちよくて鳴らしすぎたかもしれないので、これも録音で確認しなければ。

自分以外の事に関して言えば、今回は特にブラームスでヴィオラがとてもいい雰囲気を出してくださったと思う。主旋律のチョイ下のあたりで厚みを加えたり、さりげなく持ち上げたりする雰囲気づくりが、全体的にうまくいっていたように感じた。ヴィオラがうまくはまって音楽が立体的になると嬉しい。少ない出番の間はそんな事を感じながら聴いていたなぁ。

安東京平先生の Euphonium レッスン受講(3 回目)

既に一週間前の話だが、都内某所にある先生のご自宅にお邪魔してレッスンをお願いした。自宅が防音って羨ましい。

まず音階やリップスラーなどの基礎練習。ブレスについては前回のレッスンでいくつかヒントをいただいて以来ずっと試行錯誤中で、息を吸うたびにいろいろ考えてるので、リラックスできていない感じがする(ここまでは自覚している)。しかし力を抜こうとすると、「じゃあどこの力を抜けばいいのか」などと考えてしまうのでリラックスできないという悪循環に陥る。そこで今回はブレスに関して新たに「息を吸う時の音が大きいときは、どこかに余分な力が入っている」というヒントをいただいた。喉が広がってなかったり、舌の位置が邪魔してたりすると、音が大きい割には大して吸えてない。したがって、息をたくさん吸おうとするよりも、まずは大きな音を出さずに息を吸える状態を目指し、できるようになったらそのフォームを崩さずに、吸う量を増やしていったらいいのではないか、という方向が見えた。

またリップスラーでは、音の変わり目で息の流れが一瞬引ける癖があることを指摘された。リップスラーでの息の流れは、音の変わり目で切れたり力んだりせず、一定のままなのが理想。そのために音を移る時に息の圧力と唇のコントロールをバランス良く使う。

さらに、今回のレッスンでは次回演奏会で演奏予定のソロ(9 小節しかないけどな)の吹き方についてもアドバイスをいただくことができた。お手本を聴かせていただきながら、様々な観点からヒントをいただけたが、最も大事なポイントは、旋律そのものが持っているポテンシャルをいかにうまく使うか(もしくは、あえて使わないか)ということ。例えば三連符や、八分音符が 3 つ連なったフレーズには勢いがあるし、上行形や下行形の部分には、エネルギーを自然に動かしていく力がある。そういう流れに乗りたいのか、それともあえて抗うのか、ちゃんと決めることが大事。そう言われてみると、自分はそんなこと決めてなかった。このタイミングで気づいて良かった。

実は今回のソロについて最大の問題は、自分自身がどうしてもこの曲自体を好きになれないということ。プロってこういう時どうするんですか?と聞いたところ、先生の答えは明快で、「嫌いな曲こそ絶対何とかしてやろうと思う」。もうね、さすがプロは言うことがいちいちカッコ良くて、ズバーンと来ましたよ。これが答えだ!みたいな感じ。こういう覚悟がある人がプロになれるんでしょうね。

もう少し具体的に書くと、好きな曲だと「絶対こうしたい」という思い込みが勝ちすぎる(思い込みすぎてミスになることもある)のに対して、嫌いな曲だとそういう思い込みがなくニュートラルに取り組めて、むしろ色々な表現を試す気になれるので、ある意味有利だと考えられるということ。なるほどのポジティブ志向。

自分の場合、仕事に関してはポジティブ志向で取り組めるのに、音楽に関してはまだまだ。まずは姿勢を見習って考え方を真似するところから始めよう。