年明けから金管バンドに Baritone で参加しているので、今回のレッスンは Baritone でお願いした。今回の問題意識は二つあった。
- そもそも金管バンドにおける Baritone にどういう音色が求められているのか知らないし、吹いている本人としてはどんな音が出ているのか分からないので、音色に関するフィードバックを欲しい。
- 自分の周り 360° で「ブラスバンドには Denis Wick だ」という意見が支配的なので、まずは先人の教えに従って Denis Wick の SM6B を調達したが、正直吹きにくい。本当に Denis Wick がいいのか(そんなに音色が違うのか)確認したい。
自分自身が持ち込んだ細管用マウスピースは Bach 6-1/2AL (これの方が特に高音域で吹きやすい)、それに安東先生がお持ちの Tilz の 7C とヤマハの 48 を使っていろいろ試してみたところ、結論としては Denis Wick を使い続けるのが良さそう、ということになった。
自分自身が Denis Wick で吹きにくいと感じる最大の理由は、高音域で息が入りにくくなり、音が細くなってしまうこと。かつて Euphonium で Denis Wick (買った楽器に付属していた 4AL)を使っていた時も同じような問題があって、Denis Wick に相性の悪さというか苦手意識を持っていた(当時はマウスピースを他社のに替えてあっさり解決した)。今回もソレかなぁ、というのがレッスン前の認識だった。
先生といろいろ相談しながらいろいろ試してみて、また先生にも吹いてみていただいて分かったのは、高音域にいくときにアパーチュアが狭くなりすぎているのではないか、という事だった。そこで、アパーチュアを変えないように意識しながら、息の量を(感覚的には倍ぐらいに)増やして高音域を出してみると、音が細くならなくなった。音色や響きも悪くなさそう。
ちょうど当日の午前中に練習で使った Highland Cathedral の旋律を使って、前述の吹き方を試してみた。Bb –> F と上に跳躍するときに、とにかく頑なにアパーチュアを変えず、F に息を倍ぐらい突っ込むつもりで吹いてみたところ、F だけ音量が出過ぎてる(うるさくなってる)ように感じた。ところが、これは吹いている本人がベルの裏側から出ている音を聴いた時の感覚であって、離れている聴き手(今回は安東先生)にはそこまでうるさく聴こえておらず、むしろ旋律の流れの中で自然にウエイトが乗ってる程度だったようだ。ちなみに同じ吹き方を他のマウスピースで試すと、音が暴れる感じがした。恐らく Denis Wick のマウスピースがうまく吸収してくれているのだと思う。
高音域だけでなく他のフレーズもいろいろ試してみたが、他のマウスピースだと発音が汚くなりそうなところも、Denis Wick だと安定している。安東先生も実際に Denis Wick でいろいろ吹いてみた感想として、他のに比べて細かいパッセージを吹く時も安心感があるとおっしゃっていた。
おそらく、Denis Wick は他のマウスピースよりも懐が深くて、私ごときが少々息を多く入れすぎても音が暴れないのだろうと思う(プロがやったら別だが)。逆に高音域では、サボらずに息を供給し続けないと、音がすぐショボくなる。Denis Wick はそういうものだという前提で使わなければいけないらしい。
そういう訳で今回の結論は、「Denis Wick のマウスピースで高音域を吹くときはアパーチュアを狭くしないで息をガッツリ突っ込む」ということ。
今までは、高音域が出にくい –> アパーチュアを狭くする –> 息が入りにくくなる –> 音がショボくなる –> これじゃイカンと思って息を入れようとする –> さらにアパーチュアが狭くなる –> … という悪循環に、無意識のうちにハマっていたらしい(自分で意識してアパーチュアを狭くしていた訳ではない)。この悪循環から抜け出そうと思ったら、アパーチュアを変えないことをしっかり意識して、息を突っ込むことが必要なのだろうと思う。
この辺が分かって高音域が問題なくなれば、全体的に Denis Wick の方が、他のマウスピースよりも音色も発音も安定しているので、これを使った方が良さそうだということになった。これでマウスピースに関する迷いがひとつ消えた。
もし一人で試行錯誤していたら数ヶ月かかったかも知れないが、安東先生のおかげで一時間弱で方向性が見えた。このタイミングで相談できて本当に良かったと思う。
余談だが、きっと Euphonium で Denis Wick が苦手だったのも、これが分かっていたら克服できたのかも知れない。まあ今さらですが。