読書メモ『積読こそが完全な読書術である』(永田希)

全国の積読er に勇気を授ける、コペルニクス的転回とでも言うべき本です。

 

タイトルだけ見てすぐ購入しましたが、この本そのものをしばらく積読していました。
(kindle 版ですので物理的に積んではいませんでしたが。)

さらに、読み終わってからこの記事を書くまでしばらく間があいたので、ある意味、二重に積読したような気分です。

 

私自身も普段から積読が多く、買うときには「これは絶対読まなければ」と思って買うものの、その後忙しくなったり他の本に興味が移ったりしている間に、買った本を読むモチベーションが下がっていくという現象の繰り返しなので、何となく罪悪感を感じつつも、そのような習慣から抜け出せずにいました。

ところがこの本の著者は積読を完全に肯定しています。そもそも本はどのように生まれたのか、本の存在意義は何か、というところまで立ち戻って考察した上で、「積読は、書物の本質的な在り方のひとつ」とまで言い切っています。

実はこの本は積読に関して著者の考え方を語るだけではなく、様々な読書法や、断捨離、こんまりといった整理法、kindle などの電子書籍やインターネットの発達によって紙の本がなくなるのかどうか、などといった様々な観点から、多数の書籍や資料を引き合いに出しながら、本を読むという行為を(そこまで考える必要があるのか?と思うくらい)多面的に考察されています。

著者は、良い積読とは「情報の濁流のなかに、ビオトープを作る」ことだと主張しています。そして、積読は読書の時間を割けない怠惰な者や、前後の見境なく本を買ってしまう節操がない者によるネガティブな行為ではなく、「増殖を続け自ら崩壊していく情報の濁流」の中で自らのビオトープを作って運用する、主体的な行動だと説いています。

言われてみると自分の積読状況も、新しい本を買っては引っ越しのたびに不要な本を処分するという行為を繰り返して、確かにビオトープ的になっています。本書を読む前の私は、自分の積読について考えるときには、一度も読まずに古本屋などで処分した本の方ばかりに意識が向いており、これが罪悪感に繋がっていたのですが、これからは自分の周りに残った本に意識を向ければ良いということに気づきました。

これを読んだら実にスッキリして、これからも堂々と本を積もうと思いました \(^_^)/ 。

 

【書籍情報】

永田希(2020)『積読こそが完全な読書術である』イースト・プレス

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読書メモ『絵でわかる感染症 with もやしもん』(岩田健太郎)

感染症全般について、医療従事者でなくても知っておいたほうがいい知識が、おそらく網羅的に、医学的な知識がない人でも読めるように書かれている本です。

ただし、「絵でわかる」シリーズの本ではありますが、本書に関しては正直言って絵では分からないと思います。要所要所に「もやしもん」のイラストやマンガが挿入されていて雰囲気がなごむ感じはありますが、絵でわかることを期待して買うと後悔するかもしれません。基本的には文章を読んで理解する本です(でも本書のイラストやマンガは好きです)。

本書は次のように 5 章からなっており、特に第 1 章、第 2 章の序盤、第 5 章あたりは、医療従事者や専門家でなくても知っておくと有益な知識だと思いました。

  • 第 1 章 感染症の全体像
  • 第 2 章 抗菌薬を理解しよう
  • 第 3 章 症候からアプローチする感染症
  • 第 4 章 微生物からアプローチする感染症
  • 第 5 章 特別な問題

本書によると、医療従事者でも感染症やその治療方法にあまり詳しくない方々も多いようですが、本書を読むと、非常に多くの病気や症状にウイルスや細菌などが関わっていることが分かります。このような知識を持っておくことは自己防衛に役立つと思います。

例えば、お医者さんに診てもらったときに抗菌薬(抗生物質)を処方されたときに、それが適切な処方なのか、お医者さんが「とりあえず」処方しといたという感じなのか、疑問を持ったほうがいいかもしれませんし、場合によってはセカンド・オピニオンを求める必要があるかもしれません。本書を読むことで、そのような疑問を持つきっかけを得ることができます。

第 2 章の途中から、微生物や感染症、薬の名前が大量に出てきますので、こんなもの到底覚えられませんし、私もかなり読み飛ばしましたが、ざっと流し読みして何が厄介なのか、どういうことが起こるのかなどを何となく知っておくだけでも、多少は意味があるように思います。

なお、多くの図とともにレイアウトされた kindle 版の難点で、マーカーを引いたりテキストで検索したりできないのですが、本書には巻末に 5 ページにわたって索引があるので、恐らくほとんどの微生物や感染症の名称から解説を探すことができると思います。とりあえず全体にざっと目を通しておいて、後から必要に応じて知りたいところをピックアップして読むという使い方もできそうです。

私自身は過去の SARS や新型インフルエンザ、そして最近の新型コロナウイルスなど、感染症が流行(もしくはそのような懸念が発生)したときに、これらの感染症に関するニワカ勉強と情報収集をしてきましたが、本書のような基礎知識を先に持っておけば、理解のしかたも違ったと思います。今後も新型コロナウイルスに関する情報収集を続けていく上でのベースとして、本書が役に立つと思います。

 

【書籍情報】

岩田健太郎、石川雅之(2015)『絵でわかる感染症 with もやしもん』講談社 KS 絵でわかるシリーズ

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読書メモ『新型コロナウイルスの真実』(岩田健太郎)

著者の岩田先生が本書のタイトルにどのような意味を込められたのかは分かりませんが、本書に新型コロナウイルスの真実がバッチリ書いてある訳ではありません(書けるわけがありません)。ですから個人的には、ちょっとタイトルに胡散臭さを感じ、最初は買うつもりがありませんでした。

しかし twitter で本書の内容に言及された投稿があったので(具体的にどのような投稿だったかは忘れました)、あらためて買って読んでみたところ、新型コロナウイルスの真実を知るために必要な知識や考え方などが書かれていることが分かりました。

本書の構成は次のようになっています。

  • 第一章 「コロナウイルス」って何ですか?
  • 第二章 「あなたができる感染症対策のイロハ
  • 第三章 ダイヤモンド・プリンセス号で起こっていたこと
  • 第四章 新型コロナウイルスで日本社会は変わるか
  • 第五章 どんな感染症にも向き合える心構えとは

第一章と第二章は、新型コロナウイルスやその感染症対策、さらにはその前提として必要な感染症全般に関する基礎知識が、専門外の人にも分かるように解説されています。

最近は新型コロナウイルスの流行状況や対策方法に関する情報が Web やマスコミなどから大量に流れてきますし、対策方法や政府などの施策に関する議論や論争もあちこちで行われていますが、本書の内容を知っている人と知らない人とでは、情報の受け取り方も変わるでしょうし、議論も噛み合わないのではないかと思います。

例えば、日本でもっと PCR 検査を増やすべきだという主張が多く見られます。そのような主張をしておられる方々が、本書に書かれているような基礎知識を持ち合わせているかどうかは、かなり疑問です(ということも本書を読んで分かりました)。

少なくともマスコミで新型コロナウイルスに関する記事を書いたりテレビで話したりするような人は、少なくとも本書の第二章までは読むか、これらの範囲に相当する知識を身に着けていただきたいと思います。もし「岩田先生の話だけを鵜呑みにするのもいかがなものか?」と思われるのであれば、他の専門家が書いた本を並行して読まれればいいと思います。それで少なくとも話の前提が変わるはずです。

ただし、この本は 3 月中旬までに書かれた本なので、新型コロナウイルスに関しては、これ以降に分かったことが反映されていません。この点には注意して読む必要がありますし、4 月以降に判明したことは読者自身の責任で知識をアップデートすべきであろうと思います。

また第三章では、集団感染の現場となったダイヤモンド・プリンセス号で岩田先生自身が見た状況をもとに、感染管理のためにすべきこと、やってはいけないことが書かれています。なお、ここでは岩田先生が船に入って 2 時間くらいで追い出された経緯が書かれていますが、簡単にまとめると次のような状況だったそうです。

  1. 厚生労働省の官僚からは、DMAT の○○先生の下で働け、感染管理はやるな、と言われて船内に入った
  2. 船内に入ったら、その○○先生からは「そんな話は聞いてない」と言われて DMAT のトップの先生を紹介された
  3. DMAT のトップの先生に会ったら、感染管理をやってくれ、好きなことを全部やっていい、と言われた
  4. そこで本気で現状の問題点を指摘しだしたら、出て行けと言われた(誰からの指示なのかは不明)

以上はあくまでも岩田先生の側から見た経緯ですので、厚生労働省側に取材したら別の事情が分かるかもしれませんが(そんな取材ができるとも思えませんが)、いずれにしても、いかに情報共有ができていなかったか、指揮系統が混乱していたかが想像できます。緊急事態対応のケーススタディにも使えそうな事例のように思えました。

第四章、第五章は我々が今後どうすべきかを考えていくための内容と言えます。本書に答えが書かれているわけではなく、読者自身が自分で考えるための道標やヒントといった感じです。

世間には「答え」を手っ取り早く知りたがる方々が一定程度おられますが、本書はそういう「答え」を求める方々を突っぱねるような書き方になっていると思います。そもそも、誰も経験したことのない新興感染症のパンデミックを乗り越えるための答えが、本を読んだりセミナーを聞いたりするだけで手に入るわけがありません。ひとりひとりが知識や情報を集めながら考えていくしかないんです。そういう姿勢に共感したという意味でも、読んでよかったと思えた本でした。

【書籍情報】

岩田健太郎(2020)『新型コロナウイルスの真実』KK ベストセラーズ

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読書メモ『学校では教えない 「社会人のための現代史 」池上彰教授の東工大講義 国際篇』(池上彰)

私は中学、高校とも社会科では日本史を選択したので、世界史を網羅的に勉強した事がありません。また日本史にしても、縄文時代あたりから順にやって、確か太平洋戦争あたりで年度末を迎えて時間切れになったため、日本史に関しても現代史はほとんど勉強していません。

本当はそういう欠落した部分を自分で勉強すべきなのでしょうが、いいかげん大人になったというのに、そのような勉強を怠ってきました。

この本はそのように知識が欠落していた範囲の一部を、非常に効率よく埋めてくれました。また、説明の分かりやすさには定評のある池上彰の文章のおかげで、短時間で通読できました。

短時間で世界の現代史を概観できた結果、読後感として最も大きかったのは、「自分は今までこんなことも知らなかったのか」ということでした。例えばベトナム戦争の経緯は大雑把に知っていましたが、カンボジアとの関係は知りませんでした。天安門事件は知っていましたが、それが発生した背景や、その後の中国で何が起きたか、などは詳しく知りませんでした。こういう知識を持っているのといないのとでは、ニュースを読んだときの認識が大きく異なるはずで、なんで今までこんなことも学ばなかったのか、と後悔しましたが、今さらながらこの本のおかげで学べて良かったと思います。

また、この本を読んだ後に強く感じたのは、欧米諸国の身勝手さです。中東情勢が混乱している原因の一つは、イギリスとフランスがシリアあたりの国境を適当に引いたことですし、その後もアメリカ、ロシア(ソビエト)が自国にとって都合のいい勢力にテコ入れした結果、紛争が激化したり、政府が崩壊したり、テロが多発したりしています。こんな身勝手な話はないでしょう。もちろん、それを理由に IS の行為を正当化するつもりはありませんが、いま世界で起きていることを理解する際には、これらの経緯を知った上で、背景も含めて理解しなければならないということを再認識しました。

もちろん、この本に書いてあることだけが全てではないと思いますので、この本で知ったことを足がかりとして、さらに勉強していかなければならないと、あらためて思いました。

なおこの本には、様々な戦争が始まった原因、戦争の成り行き、戦後処理に関する説明が多数含まれていますが、戦後処理が欧米諸国の思惑通りにうまくいった事例が一つもありません。これらに比べると GHQ による日本の戦後処理は、100 点満点とは言えないにしても、奇跡的にうまくいったのではないかと思えます。もしかしたら、日本の戦後処理がうまくできたから、他の国に対してもうまくいくと楽観的になった結果が、これらの惨憺たる現状なのかも知れません。

(かなり前に読んで別のところにメモしてあったものを再録しました。)

 

【書籍情報】

池上彰(2015)『学校では教えない 「社会人のための現代史 」池上彰教授の東工大講義 国際篇』 文春文庫

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読書メモ『「超」説得法 ~ 一撃で仕留めよ』(野口悠紀雄)

野口悠紀雄氏の『「超」○○法』シリーズは何冊も読んでいますが、これらに共通するのは、シンプルな方法論の有効性が論理的に説明されていることだと思います。しかし本書からは、従来とは少し異なる印象を受けました。

私が本書を従来と違うなと感じた理由は恐らく、いくつかの事例(フィクションを含む)を紹介したうえで、これらの成功(もしくは失敗)要因を分析し、方法論の説明に利用していることではないかと思います。本書で紹介されている主な事例は次の通りです。

  • 早稲田大学ファイナンス研究科の入試面接における女子受験生
  • 田中角栄大蔵大臣(当時)の、日本銀行における会議
  • シェイクスピアの『マクベス』において、魔女がマクベスをそそのかす場面
  • 聖書(特にマタイ傅福音書、ルカ傅福音書、ヨハネ傅福音書)に登場する、いくつかのフレーズ
  • ナポレオンが兵に対して行った布告
  • シェイクスピアの『ヘンリーⅤ世』において、ヘンリーⅤ世が兵を鼓舞する演説
  • レーガン米大統領(当時)が大統領選を控えた公開討論会で、対立候補モンデイルに対して放った言葉
  • シェイクスピアの『リチャードⅢ世』において、リチャードがアンを口説く場面
  • シェイクスピアの『ジュリアス・シーザー』におけるアントニーの演説
  • 黒澤明の『七人の侍』における長老のセリフ
  • かつての日本の政治家の例が複数(ただし、いずれも失敗事例)

なお政治家の事例については、欧米の政治家の事例(サッチャー元首相を含む)がいずれも成功例であるのに対して、日本のそれらについてはほとんどが失敗例です。まあ現状からしてやむを得ないでしょう。

これらはいずれも説得の仕方に関する事例ですが、他にも話の締めくくり方の説明のために、小説や映画のラストシーンが多数引き合いに出されていますし、命名法の説明のために様々な製品やサービスなどの成功例、失敗例が示されています(商品や本、論文などの命名も、それを買ってもらう/読んでもらうための「説得」のひとつであるという位置付けになっています)。

これらの例が多用されていることもあって、全体的に読みやすく、かつ説得方法やネーミングに関して新しい視点をくれる本になっていると思います。

(かなり前に読んで別のところにメモしてあったものを再録しました。)

 

【書籍情報】

野口悠紀雄(2013)『「超」説得法 ~ 一撃で仕留めよ』 講談社

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読書メモ『戯曲 福島三部作』(谷賢一)

タイトルに「読書メモ」とは書いてありますが、実は「読書」というほど読んでませんし、何なら「読書」するために入手した本ではありません。

2019 年に突如として観劇に目覚め、訳も分からず最初に観た舞台が劇団「DULL-COLORED POP」の「あつまれ!『くろねこちゃんとべーじゅねこちゃん』まつり」で、その流れで同劇団の「福島三部作」に、すっかりハマってしまいました。全部で何回観たか分からなくなりました。

三作とも劇場で台本を購入し、出演者の方のサインまでいただいたりして、大事にとってありますが、これが書籍として出版されることを、劇場で配布されたチラシで知ったので、早速予約購入しましたので、私の手元には谷さんのサイン入りの本があります。

劇場で台本を購入したときには、大量に脚注が付けられていたことに驚きました。これは著者の谷氏がこの台本を膨大な取材に基づいて書き上げられたからであり、ストーリーの元になった事実やセリフの裏にある背景事情などが詳細に記述されています。台本としてだけでなく、資料としての価値があるのではないかと思えるほどです。これらの脚注も全て、この本にも収録されています。

この本を読むと、劇場で何度も舞台を観たときのことを思い出します。もちろん台本には書かれていない演出も含めて、舞台の情景が鮮明に蘇ってきますので、あちこちのセリフを読むたびに、舞台を思い出してニヤニヤしてしまいます。そういう演劇の楽しみ方を教えてくれた谷さんはじめ DULL-COLORED POP の皆様には本当に感謝しています。

また劇場に、演劇を観に行きたいと思います。

 

【書籍情報】

谷賢一(2019)『戯曲 福島三部作』 而立書房

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読書メモ『結局、ウナギは食べていいのか問題』(海部健三)読了

リアル本屋でタイトルだけ見て衝動買いした本です。

私は別にウナギに関して特に問題意識を持っていた訳ではありませんが、この本のタイトルを見た瞬間に「そういえばウナギが絶滅危惧種のリストに入ったって話は聞いたことがあるな」「その割にはスーパーとかで普通にウナギ売ってるし、店でも食えるよな」などと考えが巡って、そのまま買ってしまいました。タイトルの付け方って大事ですね。

本書の「はじめに」の最初のページにいきなり書いてありますが、『結局、ウナギは食べていいのか問題』というタイトルの本なのに、結局我々はウナギを食べていいのかどうかという結論については、本書には書いてありません。本書は、ウナギを食べるかどうかは個々人が自分で決める話だという前提で、食べるかどうかを判断するために必要な知識や情報について広範な視点から書かれています。

詳しくは本書をお読みいただきたいと思いますが、本書のポイントはざっくり言うと次のような感じになるかと思います。

  • ウナギが絶滅危惧種のリストに入っているのは事実。現在の状況が続くと絶滅する可能性がある。この点については諸説あるが、絶滅する可能性がある以上、いまから手を打っていかないと手遅れになる。
  • 養殖されたウナギは、野生から捕獲されたシラスウナギを養殖池で育てられたものだが、そのシラスウナギの半分以上が違法に捕獲されている。違法捕獲によって絶滅の可能性が高まるだけでなく、実態の把握が困難になっている。
  • 違法なシラスウナギと合法なシラスウナギは流通や養殖の過程で混ざるため、販売店や飲食店、消費者が違法行為によるウナギを区別することは不可能。高価なウナギの中にも違法ウナギは混ざっている。
  • 全国で、良かれと思って行われているウナギの放流は、野生のウナギや生態系に悪影響を与える可能性が高いので、現状では行うべきではない(ただし、より良い放流のしかたはある)。

したがって、我々のような一般消費者が消費行動によってウナギの持続可能な利用に貢献する、もしくは違法ウナギの廃絶に貢献するような方法は、今のところなさそうです。しかしながら、このような知識や問題意識を持っておくことはそれなりに大事ではないかと思います。

本書でも紹介されていますが、イオン株式会社は 2018 年に「イオン ウナギ取り扱い方針」を定め、2023 年までに 100% トレースできるウナギ(つまり違法行為が関わっていないことが確認されたウナギ)の販売を目指すことを発表しています。

本件に関するイオン(株)のプレスリリースはこちら:https://www.aeon.info/news/2018_1/pdf/180618R_1.pdf

例えば、この取り組みに基づいて 2019 年からイオンで販売されている「静岡県浜名湖産うなぎ蒲焼き」は、浜名湖で合法的に捕獲されたシラスウナギを、他のシラスウナギと混ざらないように養殖したものだそうです。流通大手のイオンがこのような行動に取り組み始めたことで、他の流通各社や養殖業者がこの流れに追随する可能性があります。

このような商品が増えてきたときに、消費者がその意味を正しく理解して、それを選んで買うことが、持続可能なウナギの利用に貢献することになるでしょう。それまでに一般消費者の間でウナギ問題の普及啓発が進むことが大事ということです。

本を読むのは面倒という方でも、著者による「ウナギレポート」という Web サイトにアクセスしていただくと、本書の内容を大まかに知ることができます。

ウナギレポート
http://c-faculty.chuo-u.ac.jp/~kaifu/index.html

ちなみに著者の肩書きは「中央大学法学部准教授・中央大学研究開発機構ウナギ保全研究ユニット長」だそうです。中央大学に「ウナギ保全研究ユニット」という組織があることも驚きですが、持続可能なウナギの消費が法学部の範疇になっていることも意外でした。

 

【書籍情報】

海部健三(2019)『結局、ウナギは食べていいのか問題』岩波書店

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読書メモ『1秒もムダに生きない~時間の上手な使い方~』(岩田健太郎)読了

仕事の関係で岩田先生の書籍を密林で買った時に、自動的にオススメされて衝動買いした本です。

著者の岩田健太郎先生は、新型コロナウイルスの感染者を乗せたクルーズ船に乗り込んでその内情を報告したことで、広く一般に知られるようになった先生です(少なくとも私はこの時まで岩田先生のことは存じ上げませんでした)。

タイトルにもあるように、本書は時間の使い方に関する本ですが、ビジネス本によくある「時間管理術」のような How to 本ではありません。

「第 1 章 時間を削り取る、時間を作る」では岩田先生が時間を有効に使うためにどのような工夫をしているか、どのような行動を実践しているか、また続く「第 2 章 時間を慈しむ」では、生み出した時間をどのように有意義に使っているのか、などが紹介されています。そして「第 3 章 私の時間は何ものか」では、そもそも時間とは何なのか、時間を有効に使うのは何のためなのか、というような観点で岩田先生の考えが述べられています。

岩田先生が実践されているような方法が他の人に合うかどうかは、かなり個人差があると思います。特に、仕事の内容や予定をあまり自分の裁量で変えられない人にとっては、実行するのが難しいものもあります。そのへんは自分に合いそうなものだけ使えばいいと思います。

第 3 章では、第 1 章に書かれているような工夫をして時間を捻出することに、そもそも意味があるのか?という、本書の大前提にかかわるような問いかけをされています。これは、もしかしたら医師として人の命に向き合う仕事だからこそたどり着いた境地かもしれません。また、執筆中に東日本大震災が発生して多くの方々が突如として命を奪われた、ということも恐らく影響しているでしょう。

私のような者がこの本を読んだだけで、このような考え方が 100% 腑に落ちたとは到底言えませんが、限りある人生における時間の意味や価値を、あらためて考えさせられました。そんな、普段あまり気にしていないことをあらためて考える機会をくれた、貴重な本でした。

 

【書籍情報】

岩田健太郎(2011)『1秒もムダに生きない~時間の上手な使い方~』光文社新書

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読書メモ『MMT〈現代貨幣理論〉とは何か 日本を救う反緊縮理論』(島倉原)読了

うろ覚えですが、私が初めて MMT(現代貨幣理論)という理論の存在を知った記事(どこで読んだのかも覚えていません)には、多少不正確かもしれませんが次のようなことが書いてありました。

「銀行が顧客に 1 万円を融資する時に、1 万円の現金を用意する必要はなく、ただ顧客の預金通帳の残高を 1 万円増やせばよい。」

私にとってはとても衝撃的でしたが、でも確かに言われてみればその通りだ、とも思いました。この記事を目にして以来、いつかは MMT についてちゃんと勉強しなければと思っていましたが、ようやく経済の苦手な自分にも理解できそうな本を見つけました。

本書は次のような三部構成になっていて、MMT とは何かを理解するためには、とりあえず第一部だけ読めば十分だと思います。分量にして全体の 4 割くらいです。

  • 第一部 MMT の貨幣論
  • 第二部 MMT の政策論
  • 第三部 MMT から見た日本経済

私の場合は第一部を読み終わった時点で、「ああ MMT ってそういうものだったのか」という実感がありましたし、いろいろ誤解があったことも分かりました。

私にとって最大の誤解は「現代貨幣理論」という言葉の意味にありました。私はてっきり、昔と違ってお金の有り様が変わった(例えばクレジットカードとか電子マネー、QR コード決済、ビットコインなど)ので、そういう新しい取引形態に合った新しい理論が必要だ、という事かと思っていました。ところが MMT の根本は、(私の理解が間違っていなければ)紀元前から使われていた貨幣の目的や機能から考え直したことでした。

子供の頃に、「お金はなぜできたのか」というような本をどこかで読んだと思うのですが、こういう本で説明されていたのは、物々交換が不便だから、それに代わるものとして貨幣が誕生した、というような話だったと思います。全部うろ覚えです。

MMT はそこから否定します。古代メソポタミアでは「割り符」と呼ばれる債務証書が取引に使われており、これが貨幣としての役割を果たしていたことが分かっているそうです。そして、どうも物々交換よりも昔から割り符による商取引が行われていたらしいのです。

このような歴史的事実を踏まえて、MMT では貨幣の起源は「債務証書」だと考えています。これは私にとっては根本的な発想の大転換ですが、本書を読んでいくと納得できます。ここまで読んだ時点で既に目からウロコが落ちまくりです。

こんな調子で論理展開していくと、次のような考え方が導かれます。この記事では途中のプロセスを書かないので、これだけ読んでも理解不能だと思いますが、本書ではこれらを私でも納得できるように書いてあります。

  • 国民がその国の通貨を持ちたがるのは、その通貨で納税しなければならないからだ
  • 自国通貨を発行する政府は債務不履行にならないから、自国通貨建ての国債をいくら発行してもいい(ただしインフレになりすぎないようにするためには限度がある)
  • 全ての経済主体(家計、企業、政府など)が全て同時に黒字になるのは原理的に不可能だから、家計や企業が黒字を維持するためには政府の財政は赤字になるのが正常な状態

第二部以降は政策論であり、正直言って私にはついていけない部分が多いので、かなり読み飛ばしましたが、それでもいくつか納得できた話がいくつかありました。例えば税金について、MMT では税金の機能を次の 4 つだと考えています。

  • 通貨の購買力安定を促進する
  • 所得と富の分配を変える(累進所得税、相続税)
  • 悪い行動を防止する(酒税、タバコ税、環境税など)
  • 特定の公的プログラムのコストを受益者に割り当てる(ガソリン税、高速道路料金など)

そして、これらに当てはまらない消費税、法人税、社会保障税を全て「悪い税」と考えています。巷で MMT 論者の方々が消費税増税に反対されているのは、ここに理由があったのかと納得できます。

私自身は政策論には疎いので、本書に書かれているような MMT に基づく政策論が正しいのか(日本にとってプラスになるのか)は正直よく分かりません。しかしながら、現在日本経済でみられる現象が、MMT を使ったほうが合理的に説明できるという部分はかなり納得できました。

そういう訳で、第二部、第三部の内容は半分も理解できておりませんが、MMT に関してかなり理解した気分になることができたので、良い本だと思います。

 

【書籍情報】

島倉原(2019)『MMT〈現代貨幣理論〉とは何か 日本を救う反緊縮理論』 角川新書

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読書メモ『イージス・アショアを追う』(秋田魁新報取材班)読了

この本は、秋田市にある陸上自衛隊の新屋演習場がイージス・アショアの配備場所候補となったことに関する、秋田魁新報社における取材プロセスが克明に記録されたものです。この問題が広く知られるようになったきっかけは、2019 年 6 月 5 日付の『適地調査、データずさん』というスクープ記事で、この記事を含む一連の報道は 2019 年の新聞協会賞を受賞しています。

秋田魁新報『イージス配備、適地調査データずさん 防衛省、代替地検討で』
https://www.sakigake.jp/news/article/20190605AK0001/

ここで「ずさん」とされたデータとは、新屋演習場がイージス・アショアの配備に適していることを説明するために防衛省が作成した調査報告書の中で、候補地と近傍の山との位置関係を示す図に初歩的なミス(恣意的な改変の疑いがある)が含まれていたというものです。この「ミス」が明らかになったことをきっかけとして、地元の反発が急激に高まり、その後の参院選では自民党現職候補が落選、本件に対する態度がはっきりしなかった県知事でさえ「全部最初から、一から、そもそも論から」検討をやり直さなければならないという趣旨の発言をせざるを得なくなりました。

全部で 299 ページある本ですが、本文は 202 ページまでであり、残りは実際に掲載された記事の転載と関連年表となっているので、資料としての価値もあるように思います。

私自身もあのスクープ記事を読むまで、イージス・アショアの問題にはほとんど関心がなかったのですが、そんな私にとっても非常に分かりやすく書かれていると思いました。その理由は恐らく、取材班がどういう理由で何に着目し、何を疑っていたのか、などが丁寧に書かれていたからではないかと思います。

読み終わったところで特に印象に残ったのは、主に次の 2 つでした。

1. あのスクープが生まれるまでの地道な調査報道にこそ価値があった

私は、スクープというのは他の誰もが知らない情報を入手できたときに生まれるものだと思っていましたが、あのスクープの元になっている情報は既に公開されていたものです。したがって他紙などが先に気づく可能性もありました。しかし、秋田魁新報取材班はそれまで地道な調査報道を続けていたからこそ、この調査報告書が「宝の山」だと認識して丹念に読み込み、説明図の欠陥に気づくことができました。

スクープ記事の掲載に関する経緯が書かれているのは第 5 章(142 ページ目から)ですが、ここにたどり着くまでの間に、取材班がどのような問題意識を持っていたのか、地元でどのような動きがあったか、市民の方々がどのように感じていたか、などが丹念に綴られています。このような背景を知ることによって、あのスクープ記事のインパクトの大きさが改めて分かります。

2. 情報公開に関する日本とアメリカとの違い

政府は県や市に対して、イージス・アショアが日本を守るために必要だと説明していますが(そして今でもこの説明方針は変わっていないと思いますが)、取材班は新屋がイージス・アショアの配備候補地になっていることが判明して以来、早い時期からこの点に疑問を抱いていました。そして調査の結果、米国の政策に影響力をもつシンクタンクが、日本にイージス・アショアが導入されることが米国の安全保障に寄与するという趣旨のレポートを 2018 年 5 月に発表していることを見つけました。このレポートは当時から公開されており、下記リンク先で読めます。

CSIS: Shield of the Pacific: Japan as a Giant Aegis Destroyer
https://www.csis.org/analysis/shield-pacific-japan-giant-aegis-destroyer

導入する側の思惑と思われるものが既に公開されているにもかかわらず、それを認めない日本政府の姿勢と、このような政策提言がオープンに行われている米国との違いがとても対照的に描かれているように思えて、とても印象的でした。

 

これら以外にも、この報道が地元の新聞社だからこそできた部分や、地方紙であるがゆえに苦労した部分などが詳細に描かれており、面白くて思わず一気読みしてしまいました。

なお、この記事を書いている 2020 年 2 月の時点ではまだ配備計画に関する結論がでていないため、本件に関する取材活動もまだ続いています。本書の終わり方が物語のエピローグ的な終わり方になっておらず、まだまだ明日からも仕事が続くぞという感じで終わっているのは、そのような事情が関係しているのではないかと思います。しかしながら本書の最後に、かつて取材に応じてくれた地元の主婦との間のエピソードが置かれているのは、一連の取材活動が地元目線で展開されていることの証左であろうと思います。

本書を読んだ今、私の地元の新聞社も、このような調査報道を行う志やリソースがあるだろうか?と思わずにはいられません。

蛇足ですが、個人的には私の尊敬する柳田邦男先生へのインタビュー記事が載っていたのが、予想外の喜びでした。私が「調査報道」という言葉を初めて知ったのは 30 年以上前、高校生の時に柳田先生の著書を読んだときなので、「調査報道」という言葉を聞くと今でも柳田先生を連想します。そのような私にとっては別の意味でも価値のある本となりました。

 

【書籍情報】

秋田魁新報取材班(2019)『イージス・アショアを追う』 秋田魁新報社

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読書メモ『一流の人はなぜ風邪をひかないのか?』(裴英洙)読了

実用書なので「読書」というのは違和感がありますが、役に立つ内容だったのでメモしておきます。

今のところ風邪にはワクチンも治療法もないのは周知の事実ですが、それでも風邪をひきたくない、もしくはできるだけ悪化させたくない、早く治したい人に役立つ実践的ノウハウが多数説明されています。

これに書かれていることを全部実践するのは、個人的にはかなり難しいと感じますが、仕事上の重要なイベントや演奏会の本番などが迫っている、もしくは出産が近いなどの理由で特に風邪をひきたくない時期に、これに書かれていることを出来る範囲で実践すると、かなり効果があるのではないかと思います。

また、風邪に関する基本的な(しかも一般の方々があまり知らない、もしくは誤解されている)知識も詳しく書かれているので、このようなこと予め知っておくと、風邪の予防や早期対処に有効だと思います。

さほどボリュームがない本なので、とりあえず一通り流し読みしてザックリどんなことが書いてあるかを掴んでおくだけでも、いざという時に役立つかも知れません。

 

【書籍情報】

裴英洙(2018)『一流の人はなぜ風邪をひかないのか? – MBA 医師が教える本当に正しい予防と対策 33』 ダイヤモンド社

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