eLTAX でさんざん回り道させられた話(平井デジタル改革担当大臣何とかしてくれ)

昨年設立した会社の決算処理や確定申告などの作業の経緯を書きましたが、この作業で作成した電子申告用のデータを e-TAXeLTAX で送信する際に、自分がたまたま Mac ユーザーだったばっかりに、無用な回り道を何度もさせられたので、来年の確定申告の際に同じような回り道をしなくて済むように、経緯を書いておきたいと思います。

 

なお、以下の内容の半分以上は愚痴ですし、日常的に Windows を使っている方々には価値がほとんどない情報が続きます。

 

[うちの IT 環境]

日常業務には Mac を使っています。ごく稀に(特にこういう作業の時に)Windows が必要になるので、BootCamp で Windows 10 の環境も用意してあります。

電子署名は NTT ネオメイトの「e-Probatio PS2」の電子認証カードを使っています。カードリーダーは同社の動作確認済みリストに載っていた uTrust 2700 R です(中古品をネットで見つけて購入)。

 

[e-TAX]

法人税と消費税(つまり国税)に関する電子申告には e-TAX を使います。

これは私個人の確定申告を昨年実施した時や、上半期の源泉徴収所得税の処理をした時に既に使った経験があったので、さほど問題はありませんでした。

下の方に掲載した表にあるように、Mac でも使えることになっているのですが、上半期の源泉徴収所得税の処理をした時には、Mac だと電子署名の読み込みが出来なかったため、やむを得ず BootCamp で Windows 10 に切り替えて Chrome で処理しました。

(個人の確定申告を行ったときは、Mac + Safari で、マイナンバーカードによる電子署名付与も含めて処理できたような気がするのですが、いまいち記憶がはっきりしません。いずれにしても法人向けの処理に関しては Mac ではうまくいきませんでした。)

したがって今回は最初からおとなしく Windows 10 + Chrome で無難に処理しました。

 

[eLTAX]

問題は今回始めて使用する eLTAX でした。これは都に対する法人都民税の申告に使うものです。

e-TAX と eLTAX とで動作環境が微妙に異なります。2021 年 2 月時点での状況は次のようになります。ちなみに eLTAX には「Web 版」と「DL 版」(ダウンロード版/Windows 用のみ)とがありますが、DL 版の推奨環境は Web 版と同じです。

OS e-TAX eLTAX(Web 版)
Win OS:

  • Microsoft Windows 8.1(デスクトップモードのみ)
  • Microsoft Windows 10

ブラウザ:

  • Microsoft Internet Explorer 11
  • Microsoft Edge(Chromium)
  • Google Chrome
OS:

  • Microsoft Windows 7 Service Pack 1
  • Microsoft Windows 8.1
  • Microsoft Windows 10

ブラウザ:

  • Microsoft Internet Explorer 11.0(32bit版のみ)
  • Microsoft Edge(Microsoft Windows 10をご利用の場合のみ)
Mac OS:

  • mac OS 10.13
  • mac OS 10.14
  • mac OS 10.15
  • mac OS 11

ブラウザ:

  • Safari 13.1(OS 10.13 の場合)
  • Safari 14.0(OS 10.14 以降の場合)
OS:

  • Mac OS10.12
  • Mac OS10.13
  • Mac OS10.14

ブラウザ:

  • Safariの最新バージョン

私としてはやはり BootCamp で再起動するのは面倒なので、できるだけ Mac で済ませたいと思うわけです。しかし e-TAX が「一応」最新 OS までカバーされている一方で、eLTAX は Mac OS 10.14 で止まってるんですよね(うちのマシンは 10.15)。まあでも「推奨」環境なので、出来ないことはないかも知れないと思い、一応 Mac でやってみることにしました。

 

eLTAX で申告を行うためには、まず最初に「利用者 ID」を取得する必要があります。

まずはここから、と思って手続きを進めようと思ったときに、表示された画面がこちらです。

…….。

トップページに戻ってよく見たら、利用時間が平日の 8:30~24:00 と書かれていました。

そりゃ夜中までこんな作業をしている私も悪いと思いますけど、なんで利用時間を制限する必要があるんですかね。たまにメンテナンスのために止める程度なら分かりますけど。もしかして裏で誰かが手作業で処理してるの?

 

翌朝あらためて「利用者 ID」の取得をします。指定された項目を入力したら電子署名を読み込むんですが、ここまで来たところで「MacOS では公的個人認証サービス(要はマイナンバーカードですね)に基づく電子証明書のみ利用可能」であることが分かります。弊社の電子署名は NTT ネオメイトで発行してもらった「e-Probatio PS2」です。

 

「先に言えよ」と思いました。

 

気を取り直して BootCamp で Windows 10 に切り替え、Edge で作業を進めます。eLTAX の Web 版を使うためには、ブラウザにプラグインをインストールする必要があるという表示が出たので、指定されたリンクをクリックしてプラグインをインストールします。

ここで表示されたのが Chrome 用プラグインだったので、何か間違えたかと思いましたが、Edge が Chromium ベースだから Chrome 用プラグインが使えるということのようでした。普段 Windows を使わないため、そんなことに興味もなく、全く知らなかったので、これを確認するために Web でいろいろ調べる必要があり、再び時間を消費しました。

そんなこんなで「利用者 ID」取得の手続きを済ませ、これはすぐ発行されたので、eLTAX の Web 版でログインし、いよいよ申告データの送信です。しかし、いくら探しても申告データを送信するためのボタンが見当たりません。

eLTAX の Web サイトをあちこち探して、ようやく分かったことは、Web 版には申告のデータを送信する機能は無いということでした。

そういう訳で DL 版をインストールし、ログインして、申告データを送信しました…..。

 

今回の作業にどれだけ時間がかかったのか、測っていたわけでは無いので明確には分かりませんが、eLTAX に関する作業だけで恐らく 3 時間くらいはかかっています。

終わってからあらためて振り返ってみると、「電子申告データを送信するためには Windows で DL 版を使わなければならない」ということが最初から分かっていれば、30 分程度で済んだかも知れません。長くても 1 時間はかからなかったと思います。

こういう制約条件も含めて動作環境のページに全部書いておいてくれれば、あんな回り道をしなくて済んだんですよ。こういう分かりにくさは本当に何とかしてほしいと思います。

もちろんマニュアルはひととおり用意されています。PDF で Web 版用が 407 ページ、DL 版用が 462 ページに及ぶ大変立派なマニュアルです。これらををちゃんと読めば上記のことは全部書いてあります。しかし今回行った作業は全て、「DL 版を使わなければならない」という制約さえ知っていれば、マニュアルなど見なくてもできる簡単な作業でした。さらにマニュアルが置いてある場所が分かりにくく、特に DL 版のマニュアルを見つけたのは、全ての作業が終わった後でした

 

こういう分かりにくさや中途半端な制約条件も、デジタル庁ができたら改善されるんですかね……。




初めての会社決算処理と確定申告作業をようやく完了

昨年設立した会社の決算処理や確定申告などの作業を、一昨日ようやく終えました。

まあ一般的には文章にするほどの話題でもないのですが、会社の決算処理や確定申告などの作業が全く未経験だったこともあって、やり方が分かるまでに時間がかかったり、余計な回り道をしたりしたので、備忘を兼ねて書いておきたいと思います。

いま改めて振り返ってみても、手順が最初から分かっていれば、もっと短時間で済んだはずですので、次回はもっと楽になるはずだと信じて、今回の経緯をまとめます。

 

[日頃の会計処理]

日頃の会計処理には「会計 freee」を使っています(ベーシックプラン)。

freee にどんどん入力していくだけなので楽勝です。しかも銀行口座やクレジットカードを連携しておけば、かなりの入力が自動化できます。本当に楽。

システムが自動的に複式簿記で処理してくれるので、簿記会計の知識が皆無にもかかわらず最初から青色申告です。今のところ税理士さんのお世話になる必要もなさそうです。

しかしながら、決算や確定申告の時にどうなるかを知らないまま、あまり深く考えずに適当に入力していたデータが多かったので、決算処理の際にまとめて多数のデータを修正するハメになり、大変な思いをしました。やっぱり最初にある程度の勉強はしておくべきでしたね。

まあ今回理解して修正できたので、今期からは恐らく大丈夫だと思います。

 

[消費税申告書の作成]

本来は、設立したばかりの小さい会社ならば消費税の納税義務が免除されるのですが、弊社は諸事情により納税事業者です。しかも簡易課税に切り替える手続きを忘れたので、2021 年度までは「一般課税」で処理しなければなりません。何とも間抜けな話です。

まあ、そうは言っても freee だとこの辺は自動で処理してくれるので、簡易課税に切り替えても作業量はあまり変わらないかもしれません。

電子申告用のデータも freee が自動で吐き出してくれるので、あとは e-TAX で送信すれば OK。楽勝です。

 

[法人税申告書作成]

freee では法人税申告書を作成するための機能が「申告 freee」として別のアプリケーションになっています。会計 freee の[決算]メニューから「法人税申告」を選ぶと「申告 freee」に切り替わります。必要なデータは会計 freee から自動的に転記されるので、別アプリになっていることを意識せずに、申告書作成作業に入れます(一応、「ここからは申告 freee です」みたいな画面はありました)。

画面の説明にしたがって転記されたデータを確認しつつ様々なデータを入力し、いよいよ帳票が自動的に作成されるという段階になったところで、「ここから先の機能を使うなら金払え」という画面が登場します。

 

私が最も嫌いな展開です

「先に言えよ」と思いました。

 

ほぼほぼデータの入力を済ませ、会計データもうまく移行されて便利だよねーと思わせてから、おもむろに金額を表示してきます。年額 24,800 円(税別)です。「年額」ということになっていますが、実質的にはこの時期にしか使わないアプリケーションです。

もちろん同社の Web サイトをちゃんと見れば価格もちゃんと書いてあります。知らなかった私の落ち度と言われればそれまでですよ。しかしながら会計 freee の[決算]メニューからスルスル誘導された挙げ句に、金額を後出しされて寸止め食らった状況が非常に腹立たしく、一旦作業を止めました。

 

こんな汚いやりかたで買わせに来るソフトなんか使うもんかと思い、随分前に税務署から分厚い封筒で届いた確定申告用資料一式をあらためて見直したり、国税庁をはじめ多数の Web サイトをあたって、確定申告書の作り方を探したのですが、全く手がかりすら掴めませんでした。

最も困ったのは、税務署からの通知には「確定申告書」を 1 部提出するように書いてあるのですが、「確定申告書」という帳票が見当たらないことでした。どうも確定申告に必要な様々な書類をまとめて「確定申告書」と呼ぶようなのですが(これも未だに確証なし)、「確定申告書」がどういうものかを分からないのに確定申告書を作れる訳がありません。結局、「申告 freee」の軍門に下る決意をし、支払手続きを渋々済ませました。

 

「軍門に下る」とか大げさだなと思われるかもしれませんが、要はそれだけムカついたということです。単に楽になる程度のソフトだったら絶対使わなかったと思います。しかしながら本件に関しては、自分に知識もスキルも経験もない分野なので、使わざるを得ませんでした。

 

心を入れ替えて「申告 freee」での作業を再開すると、提出すべき多数の添付書類にデータが自動的に転記され、集計されています。しかし日々のデータ入力で取引先などの設定が適当だったなどの理由で、多くの欄に「その他」と記入されてしまいました。

さすがにこれだけ多くの項目が「その他」はまずいだろうと思って、該当するデータを探して修正するという作業を、かなりの時間を費やして行いました。

中には勘定科目を間違えていたものなどもあったので、入力済みのデータの勘定科目を変更するという作業も発生しました。その結果として財務諸表上の数字が変わったり消費税の計算が変わったりしたので、消費税申告書の作成をやり直したという回り道も経験しました。

このような作業を重ねて、添付書類の内容が整ったことを確認できたところで、電子申告用のデータを出力し、ようやく作業完了となりました。

 

この後、これらのデータを送信するところで再び壁にぶち当たるのですが、その辺は別途まとめます




PCR 検査について論じるために(たぶん)最低限知っておくべきこと

あらかじめお断りしておきますが、私は医療関係の専門家ではありませんので、この記事に書かれている内容が絶対に正しいという保証はできません。しかしながらこの記事の最後に記載した「参考文献」に基づいて書いているので、大事なところは外していないと思います。

したがって私自身はこの記事を読んだ結果に関して何ら責任を負いません。下記の「参考文献」およびその他の資料を使って、ご自分の責任で調査、確認されることをお勧めします。

 


一般に、検査には誤差や誤検出がつきもので、100% 正確な検査は恐らく無いと思います。新型コロナウイルスの PCR 検査ももちろん例外ではありません。

新型コロナウイルスの PCR 検査の場合、検査の正しさを表す指標として「感度」と「特異度」があります。感度は、感染している人が正しく「陽性」になる割合です。また特異度は、感染していない人が正しく「陰性」になる割合です。

参考文献 1. によると、新型コロナウイルスの PCR 検査の感度は 70% 程度、特異度は 95% 程度のようです。つまり、既に感染している人 100 人が PCR 検査を受けても 30 人くらいは陰性になることになります。これを「偽陰性」といいます。逆に、感染していないことが確実に分かっている人を 100 人集めて PCR 検査を行うと、5 人くらいは陽性になるということで、これは「偽陽性」といいます。

ここで、次のような例題を考えます。

特に新型コロナウイルスの感染が疑われるような症状がなく、他の感染者との濃厚接触もない A さんが、新型コロナウイルスの PCR 検査を受け、その結果が「陽性」だったとします。この場合、この A さんが本当に新型コロナウイルスに感染している可能性はどのくらいでしょうか?

この問いに対する答えは前提条件によってかなり変わりますが、いずれにしても驚くほど低い数字になります。以下、A さんが東京都民だと想定して説明を進めます。


前提条件

  • 2021 年 1 月 1 日時点での東京都の人口は 13,960,236 人(注 1)。
  • 2021 年 2 月 4 日時点での東京都での PCR 検査陽性者数(累計)は 102,200 人(注 2)。
  • 単純化のために、ここでは「PCR 検査陽性者数(累計)」=「現在の感染者数」とみなして考えます(注 3)。

 

考え方と計算方法

まず、感染が疑われるような症状がなく、他の感染者との濃厚接触もないのに、実は A さんが既に感染している可能性は、次のようになります。

(現在の感染者数)÷(東京都の人口)≒ 0.00732  (0.732%) --- [α]

次に、A さんの検査結果については、次の表のとおり 4 通りが考えられます。

感染している 感染していない
陽性 (1) (2)
陰性 (3) (4)

ここで「感染している」の列については感度を、「感染していない」の列については特異度を適用して計算します。

まず (1) と (3) については、A さんが感染している可能性が 0.732%、検査の感度が 70% なので、次のようになります。

(1) = 0.00732 × 0.7 ≒ 0.00512
(3) = 0.00732 × (1 - 0.7) ≒ 0.00220

また (2) と (4) については、A さんが感染していない可能性が(100% – 0.732%)すなわち 99.268%、検査の特異度が 95% なので、次のようになります。

(2) = 0.99268 × (1 - 0.95) ≒ 0.04963
(4) = 0.99268 × 0.95 ≒ 0.94305

したがって、検査結果が陽性だった A さんが感染している可能性は次のようになります。

(1) ÷ {(1) + (2)}= 0.00512 ÷ ( 0.00512 + 0.04963 ) ≒ 0.09352  (9.352%)

 

考察と注意事項

症状や他の感染者との濃厚接触など、A さんが感染している可能性を示唆するような材料がない状態で検査を行った場合、結果が陽性だったとしても、それは 9 割以上の確率で偽陽性だということになります。つまり、症状のない人に対して闇雲に PCR 検査を実施すると、偽陽性で隔離される人がどんどん増えるということになります。

しかしながら、これは「PCR 検査は役に立たない」という趣旨ではありません。感染が疑われる症状がある人や、他の感染者との濃厚接触がある方の場合は、上の例題の A さんよりも既に感染している可能性(上の [α])が大きくなるので、計算結果が大幅に異なります。

例えば、医師が診断した結果「感染している可能性は五分五分だ」と考えた場合、上の [α] を 0.5 として同様に計算すると、検査で陽性になった人が本当に感染している確率は約 93% になります。もっと控えめに、[α] を 0.2 にしても、約 78% になります。したがって、医師の診断などの方法で、感染している可能性を事前に見積もることと併用すれば、PCR 検査は信頼できる、ということになると思われます。

もちろん、感染しても無症状で、なおかつ他の人に感染を広げるという方が一定割合存在することが分かっているので、「偽陽性のリスクがあるとしても徹底的に検査を行うべきだ」という考え方もあるかも知れません。しかしその場合は、1 人の無症状感染者を見つけるために 9 人の偽陽性者を隔離するという犠牲を受け入れる必要があります。これを受け入れることが妥当なのかは私には分かりません。

 

注釈

  1. 東京都 Web サイト「「東京都の人口(推計)」の概要(令和3年1月1日現在)」 https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2021/01/28/01.html (2021/2/5 閲覧)
  2. 週刊東洋経済 ONLINE「新型コロナウイルス国内感染の状況」 https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/ (2021/2/5 閲覧)
  3. もちろん、これまで検査を受けて陽性になった方々の中にも、ある程度の偽陽性が含まれている可能性があります。また一度感染した後に回復された方も多数おられるはずですし、感染しているのに見つかっていない感染者も多数おられると思います。しかしながら、これらを見積もることは出来ないので、ここでは全て無視して考えます。

 

参考文献

  1. 岩田健太郎(2020)『丁寧に考える新型コロナ』光文社新書《Amazon リンク
  2. 結城浩(2020)『数学ガールの秘密ノート/確率の冒険』SBクリエイティブ《Amazon リンク