読書メモ『「超」説得法 ~ 一撃で仕留めよ』(野口悠紀雄)

野口悠紀雄氏の『「超」○○法』シリーズは何冊も読んでいますが、これらに共通するのは、シンプルな方法論の有効性が論理的に説明されていることだと思います。しかし本書からは、従来とは少し異なる印象を受けました。

私が本書を従来と違うなと感じた理由は恐らく、いくつかの事例(フィクションを含む)を紹介したうえで、これらの成功(もしくは失敗)要因を分析し、方法論の説明に利用していることではないかと思います。本書で紹介されている主な事例は次の通りです。

  • 早稲田大学ファイナンス研究科の入試面接における女子受験生
  • 田中角栄大蔵大臣(当時)の、日本銀行における会議
  • シェイクスピアの『マクベス』において、魔女がマクベスをそそのかす場面
  • 聖書(特にマタイ傅福音書、ルカ傅福音書、ヨハネ傅福音書)に登場する、いくつかのフレーズ
  • ナポレオンが兵に対して行った布告
  • シェイクスピアの『ヘンリーⅤ世』において、ヘンリーⅤ世が兵を鼓舞する演説
  • レーガン米大統領(当時)が大統領選を控えた公開討論会で、対立候補モンデイルに対して放った言葉
  • シェイクスピアの『リチャードⅢ世』において、リチャードがアンを口説く場面
  • シェイクスピアの『ジュリアス・シーザー』におけるアントニーの演説
  • 黒澤明の『七人の侍』における長老のセリフ
  • かつての日本の政治家の例が複数(ただし、いずれも失敗事例)

なお政治家の事例については、欧米の政治家の事例(サッチャー元首相を含む)がいずれも成功例であるのに対して、日本のそれらについてはほとんどが失敗例です。まあ現状からしてやむを得ないでしょう。

これらはいずれも説得の仕方に関する事例ですが、他にも話の締めくくり方の説明のために、小説や映画のラストシーンが多数引き合いに出されていますし、命名法の説明のために様々な製品やサービスなどの成功例、失敗例が示されています(商品や本、論文などの命名も、それを買ってもらう/読んでもらうための「説得」のひとつであるという位置付けになっています)。

これらの例が多用されていることもあって、全体的に読みやすく、かつ説得方法やネーミングに関して新しい視点をくれる本になっていると思います。

(かなり前に読んで別のところにメモしてあったものを再録しました。)

 

【書籍情報】

野口悠紀雄(2013)『「超」説得法 ~ 一撃で仕留めよ』 講談社

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