音楽家向けの鍼治療を受けてみた話

楽器の吹き方が一向にコロナ前のような状況に戻らず、楽器を吹くことがほとんど楽しくない(たまに楽しい)という状況が 2 年以上続いていますが、どうも自分なりに試行錯誤している間に変な癖がついてしまったようで、唇の周りや頬の筋肉が震えるようになってきました。

具体的にいつ頃からこのような症状が現れたのか分からないのですが、4 月から Trombone でプロの方のレッスン(というかリハビリ)を受けるようになった時点では既に自覚していたので、3 ヶ月以上前から症状はあったと思います。

それでも吹奏楽団の本番は何とかしのいだ(というか相当サボった)のですが、オーケストラの本番を 2 週間後に控えたところで急に悪化して、ロングトーンが持続できなかったり、大して高くもない音を出せないような状況になりました。こんな状況でオケの練習に行っても意味が無いと思って、とりあえず直近の練習は欠席し、今さらエキストラなんか頼めないよなぁ、などと考えながら Web で少々調べたところ、どうもフォーカルジストニアという症状があるらしく、これに関連して音楽家向けの鍼治療があることを知りました。

自分がちょっと調べた範囲でも、次の 2 ヶ所が見つかりました。

これらのサイトに症例の動画がいくつか掲載されていますが、自分の症状もまさにこれだなと。高音域の方が比較的安定しているところまでクリソツです。

鍼は全く経験がないので若干の不安はありましたが、そんなことも言っていられず、とりあえず自宅から通いやすい場所ということで品川の方に連絡したところ、翌日に予約がとれたので、楽器(Euphonium)を持参して診てもらいました。

まず状況を説明した後に楽器で音階など簡単なフレーズを少し吹いてみて、触診で顔や首、肩、背中などの筋肉の状況を確認してから、治療方針を決め、鍼を刺すという流れになります。1 回の施術がだいたい 1 時間強くらいなので、

演奏などで状況確認 –> 施術 –> 再び演奏して状況確認 –> 施術 –> 再び演奏して状況確認

という感じです。

最初に状況を確認していただいた時点で、既に自覚している顔面の震えだけでなく、呼吸などにも問題がありそうだということでした。もちろん 1 回の施術でいきなり全て解決するわけではないので、ある程度時間はかかるのですが、一方で 6 月 11 日に本番を控えていることを伝え、本番までにできるだけ改善することを目指すという方針で進めていただくことにしました。

そして最初の施術ですが、鍼を刺したのは右の肩甲骨のあたりに 1 本、背骨の右側面に 1 本でした。「え?そこなの?」と思いましたが、鍼を抜いた後で少し吹いてみたら、予想以上に体の状態が変わっていてびっくりしました。施術前と同じように吹いたつもりなのに、楽器の鳴り方が明らかに変わっていました。アンブシュアの震えはむしろ以前より増えた感じがありました。

次に右肘の後ろに 1 本、右手の甲の親指と人差し指の間に 1 本打って、5 分ほどおき、鍼を抜いてから再び吹いてみたところ、息の立ち上がり(レスポンス)が明らかに良くなっていました。同じように吹いたつもりでしたが、先生からは音量が増えたと言われました。先生によると、肋骨が動きやすくなるように筋肉を緩めたとのことでした。ここまでで初回の診療は終了。

既にこれまで 3 回通っていて、それらの間に練習(カラオケボックスでの個人練習を含む)が数回ありましたが、施術のたびに異なる場所に鍼を刺して、いろいろな部分の状況を少しずつ変えているという感じです。ちなみにこれまで鍼を刺した場所は、腰、左右ふくらはぎ、左右の肩、右腕などです。事前の予想に反して、顔面には一本も打っていません。

これらの施術の間に行った練習では、部分的に症状が改善されたり、また戻ったりという状況が続きました。例えば高音域で倍音を低音側に外しやすくなったり、タンギング直後の音の立ち上がりが良くなったり悪くなったり、先週できなかったフレーズが難なく出来るようになったり、そういう状況のなかで、従来よりも慎重に体の状況を探りながら、姿勢やアンブシュアが乱れないように気をつけながら吹いているという感じです。

そんな状況でオーケストラの本番を迎えました。結果としては、「惑星」の Tenor Tuba ではソロでミス多発、ブラームス交響曲第 1 番の 1st Trombone は何とか無難に(大きなミスなく)吹ききりました。いろいろ不本意ではありますが、曲の流れを止めたり大穴を掘るような事故は回避できたので、まあ当面の目標をギリギリ達成できたというところでしょうか。「惑星」に関しては当日午前中のリハーサルで好感触だったので、本番でなぜあんなに崩れたのかが良く分かりません。治療中の不安定さが露呈したのかもしれません。

とりあえず目先の本番は乗り切ったので、これからしばらく時間をかける覚悟で、鍼治療とレッスン(リハビリ)の同時並行で取り組んでいきます。金かかるなぁ…..。

(追記:2023/06/22)

(追記:2023/06/22)

  • 昨日また施術に行ってきました。今回は両足の膝の内側と脛の内側に各 1 本(計 4 本)打って 10 分程度放置、右肩甲骨のまわりに 2 本打ちました。先生によると、今回は顔面の震えに直接影響するような施術はしておらず、どちらかというと首まわりの筋肉のバランスを調整する方向の施術だったようです。これでしばらく様子を見ます。

(追記:2023/07/24)

  • 先週施術していただいた際に先生と話したところで、施術によってこれ以上の改善を望むのは難しいだろうという結論となりました。理由は、現在の奏法に起因する問題(具体的にどのような問題なのかは不明)を口でカバーしようとしているような状態のため、施術によって一時的に口唇まわりの震えを抑えても、すぐ再発する可能性が高いと考えられるためです。このような理由から、施術を中止して奏法の修正に専念することにしました。

(追記:2023/7/31)

  • その後どのような練習をしているかを別の記事にしました。

 




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