読書メモ『スター・ウォーズ論』(河原一久)

(この本は 2015 年 11 月、つまり『フォースの覚醒』公開前の時点で発行された本なので、この記事やこの本を読んでも『最後のジェダイ』に関するネタバレの心配はありません。)

「はじめに」で筆者が述べているように、この本は「スター・ウォーズはなぜ面白いのか?」を 30 年近く自問自答してきた筆者が、様々な観点からスター・ウォーズについて考察した本です。

私自身、スター・ウォーズに関しては(一般人の中では)かなり詳しい方だと思っていますが、そんな私でも知らない情報が山ほど詰め込まれています(例えばエピソード IV のデス・スター攻撃シーンの元ネタになった映画があったことなど)。しかも、ただ薀蓄が詰まっているだけでなく、筆者の論考を支える根拠として整然と並べられています。
例えば、巷では「スター・ウォーズが日本の文化の影響を多く受けている」と言われているようですが、その多くが誤解であることも具体的に指摘されています(黒澤明の映画の影響を受けたのは本当)。また、ペルーのケチュア語、南アフリカのズールー語、タンザニアのハヤ族が使うハヤ語、カルムイク共和国(ってどこ?)のカルムイク語、フィリピンのタガログ語などが、スター・ウォーズに登場する様々なエイリアンが話す言語のモデルとして列挙されています。こんなのどこで調べたんだよ、と思います。
もうこれは立派な論文です。

また、この本が書かれたタイミングも良かったのだろうと思います。ルーカスフィルムがディズニーに買収された後で、かつ『フォースの覚醒』公開前というのは、スター・ウォーズに関する話題や情報が多く、かつ出版社に本の企画を売り込みやすい時期だったのかも知れません。

これはスター・ウォーズのファン(もしくはマニア)なら必ず読んでおくべき本だと思います。むしろ私自身がこの本の存在を先日まで知らなかったことが不覚でした。

 

【書籍情報】

河原一久(2015)『スター・ウォーズ論』ミネルヴァ書房

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