読書メモ『数学ガールの秘密ノート/確率の冒険』(結城浩)

私は学生時代から数学が苦手です。高校の途中まではそのような苦手意識はなく、むしろ得意な方だと思っていましたが、高校の数学で微分方程式やラプラス変換がサッパリ分からずに挫折して、そこから立ち直ることができませんでした。

ところが数学が苦手であるにもかかわらず物理は得意でしたが、先生からは「普通はそういうのはあり得ない」と言われました。数学は物理現象を表現する言語なので、数学がわからないのに物理が得意な訳がない、ということだったのでしょう。実は高校の物理の教科書で、本来は微分・積分を使って説明すべきものが、(学習の順序が逆であるため)あえて微分・積分を使わない方法で説明されていることを知ったのは、大学に入った後でした。

大学は理工学部機械工学科に進学しましたが、当然ながら数学で苦労することになります。高度な微分・積分や微分方程式、フーリエ級数などが必要となる科目(流体力学、振動工学、伝熱工学など)については単位を取れませんでした。
(それ以外の科目のおかげで無事に卒業はできました。)

前置きが長くなりましたが、そのくらい数学に根強い苦手意識を持っている私にとっても、本書は読みやすく分かりやすいと思いました。特に、確率を考える上で間違えやすいポイント(例えば、どこからどこまでを「全体」と考えるのか、など)の説明が、これ以上丁寧に説明できないと思えるくらい丁寧です。

確率に関する数式(「∩」や「∪」を含むやつ)が使われていますが、このような数式が苦手であれば、数式の部分を読み飛ばしても、大事な部分は理解できると思います。

また、時節柄ということもあるでしょうが、病気の検査に関する説明にもかなりの分量が割かれています。本書中では「新型コロナウイルス」とか「PCR 検査」という言葉は使われていませんが、ある検査で陽性だった人が実際にその病気にかかっている確率を、その検査の感度と特異度を考慮して求める、という例題に基づいた説明があります。こういう問題を理解した人が増えると、闇雲に PCR 検査対象を広げることの害悪がもう少し世間でも認識されるのではないかと思います(もちろん、感染の疑いがある方や濃厚接触者の方などに対する検査体制は充実すべきだと思います)。

 

ちなみに PCR 検査の感度や特異度に関しては、下記のページに詳しい説明があります。

東京大学 保健・健康推進本部 保健センター Web サイト:
http://www.hc.u-tokyo.ac.jp/covid-19/tests/

 

著者の「数学ガール」シリーズは既に多数出版されていますが、自分が高校生くらいのときに、こういう本があったら良かったと思える本です。まだ本シリーズには微分方程式とかラプラス変換などを扱う本は無いようですが、もしそのような本が発行されたら、私の数学コンプレックスも少しは軽くなるかもしれません。今さらですが。

 

【書籍情報】

結城浩(2020)『数学ガールの秘密ノート/確率の冒険』SBクリエイティブ

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