全国の積読er に勇気を授ける、コペルニクス的転回とでも言うべき本です。
タイトルだけ見てすぐ購入しましたが、この本そのものをしばらく積読していました。
(kindle 版ですので物理的に積んではいませんでしたが。)
さらに、読み終わってからこの記事を書くまでしばらく間があいたので、ある意味、二重に積読したような気分です。
私自身も普段から積読が多く、買うときには「これは絶対読まなければ」と思って買うものの、その後忙しくなったり他の本に興味が移ったりしている間に、買った本を読むモチベーションが下がっていくという現象の繰り返しなので、何となく罪悪感を感じつつも、そのような習慣から抜け出せずにいました。
ところがこの本の著者は積読を完全に肯定しています。そもそも本はどのように生まれたのか、本の存在意義は何か、というところまで立ち戻って考察した上で、「積読は、書物の本質的な在り方のひとつ」とまで言い切っています。
実はこの本は積読に関して著者の考え方を語るだけではなく、様々な読書法や、断捨離、こんまりといった整理法、kindle などの電子書籍やインターネットの発達によって紙の本がなくなるのかどうか、などといった様々な観点から、多数の書籍や資料を引き合いに出しながら、本を読むという行為を(そこまで考える必要があるのか?と思うくらい)多面的に考察されています。
著者は、良い積読とは「情報の濁流のなかに、ビオトープを作る」ことだと主張しています。そして、積読は読書の時間を割けない怠惰な者や、前後の見境なく本を買ってしまう節操がない者によるネガティブな行為ではなく、「増殖を続け自ら崩壊していく情報の濁流」の中で自らのビオトープを作って運用する、主体的な行動だと説いています。
言われてみると自分の積読状況も、新しい本を買っては引っ越しのたびに不要な本を処分するという行為を繰り返して、確かにビオトープ的になっています。本書を読む前の私は、自分の積読について考えるときには、一度も読まずに古本屋などで処分した本の方ばかりに意識が向いており、これが罪悪感に繋がっていたのですが、これからは自分の周りに残った本に意識を向ければ良いということに気づきました。
これを読んだら実にスッキリして、これからも堂々と本を積もうと思いました \(^_^)/ 。
【書籍情報】
永田希(2020)『積読こそが完全な読書術である』イースト・プレス